今まで一番怖い、“ネクストレベル”の新作。
ー 三太さんが作品作りで大切にしていることはなんでしょう。
三太: 何が一番大事かと言うと、自分のグルーヴが乗ってくることなんです。広告であればまず最初に何をやって欲しいかを聞いて、「この商品がよく見えるような絵を描いてください」と言われたら、そのためにヴァイブスを満タンにして僕ができるベストのアートをドロップするんで、あとは完成までお楽しみに、というふうにできればしたいの。それは金額の大小に関わらず。悪く言えばアーティスト色が濃すぎるというか、わがままってことになるんだけど。
ー 作家として、その一線は超えたくないと。

『TOKYO GRAFFITI』より(『井上三太画集 SARU』)。
三太:
もちろん商業作家なのにそんなこと言っていいの? という気持ちもあって、悩んでいます。『TOKYO GRAFFITI』を集英社の『ヤングジャンプ』で連載した時は、グラフィティというイリーガルなものがテーマだったので、いろいろな問題が出てきて、結局続けることができなくなってしまったんだよね。ヒップホップの1エレメントであり、当時まだ光が当たっていなかったグラフィティに夢中になっている若者がストリートにいて、その内実や気持ちをメジャーな雑誌できちんと伝えられたら、最高だったんだけどね。
いずれにせよ大事なのは、自分のヴァイヴスをいかに高められるか、いかに自分がイヤなことをしないかなんだよね。
ー 現時点で、この先発表予定の作品は何かありますか。

最新漫画作品『惨家』より(『井上三太画集 SARU』)
三太: 2021年に『別冊ヤングチャンピオン』に、『惨家(ざんげ)』という漫画が載る予定です。これは昔描いた『隣人13号』のキャラクターを再度描いた作品で、今まで僕が描いた漫画の中でも最大の恐怖作になると思います。そういう意味では自分なりの「ネクストレベル」であり、これまでとは違う絵柄のものにしようとめちゃめちゃ燃えています。これなら自分がやりたいことと、世間が興味をもってくれてることの2つの円が重なるものにできるのかなと。