頑張るなっていうのは、あまり言っちゃダメ。
ー 怠けているように見せかけて、裏でめちゃくちゃ頑張っている、でもその姿は見せないという美学を、民生さんやユニコーンから学んできた人も多い気がします。
奥田: 一言で言うと、自分はキャラが違うってことかな(笑)。頑張ってる姿がかっこいい人もいる。かたや、僕がうーん…って真面目にやってても、誰がかっこいいと思うのか? と自分では思っている。だから、「楽勝ですよ」ってね。でも、そうやってわかってきたのも、段々ですからね。広島から出てきた頃は、何もわからなかった。世の中には色々な人がいて、かっこいい音楽といっても、いろいろな方向の“かっこいい”がある中で、じゃあ、自分たちは他と違う何をやろうかと。
ー じゃあ、そこはある種計算して?
奥田: そうやって考えてやってきたんです。これって、誰もやってないよねっていうことが大事。そんなことをやっている間に、世の中では頑張っていることが大事という風潮が次第に強くなってきて、頑張れ!ってわかりやすく応援する曲も出てきた。でも、その方向に行っても勝てないから、徐々に形ができてきて、いまはこんなことになっているんです(笑)。
ー 社会を斬る、ってわけじゃないですけど、いまの世の中は、それこそ頑張れとか、上へ上へ、というのが強まっているんじゃないかと思うことってありませんか?
奥田: 基本的には頑張らないといけないわけだから、頑張るなっていうのは、あまり言っちゃダメだと思うんですよ。挑戦している人を見て、感動したりとか、努力の賜物ということは大切だと思うし、ずっと休んでいようという極端なのは言いたくない。あれ、どっちだこれ? っていうくらいで、各自に考えてもらおうというね。まあ、実は照れ隠しというか、人見知りというか…、でも最近人見知りが治ってきましたね(笑)。人見知りしてても、しょうがないんでね。
ー 何歳でも人は変われるというのは勇気が出る話ですね(笑)。時間も差し迫ってきたので、最後に芸能生活60周年を迎える加山さんに何かメッセージはありますか?
奥田: 芸能生活60周年って本当にすごいことですよ。とてつもないことだし、それに参加できる喜びは大きい。ずっとやり続けてる加山さんのように、自分もそうありたいっていうのは、恐れ多くて言わないでおこうと思います(笑)。