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時代は健康なのか。6人のクリエイティブを支える健康白書。
What the Health?

時代は健康なのか。6人のクリエイティブを支える健康白書。

猛威を振るうコロナウイルスをまえに、自粛の日々がつづいています。それに伴い、さまざまなものに対する考え方を見直す機会も増え、とくに健康に対する意識はそのアップデートが必要不可欠となりました。幕を開けたばかりのニューノーマル時代ですが、その変化をいち早く察知し、順応しようと先鞭をつけるクリエイターたちがいます。彼ら彼女らは何を考え、どう行動したのか、そしてそれぞれのものづくりにどんな影響を及ぼしたのでしょうか。それを知るべく、今年1月、6人のクリエイターにインタビューを敢行しました。前半は、窪塚洋介さん、塩塚モエカさん、ハイロックさんの3人が登場です。(3月24日発売の雑誌『フイナム アンプラグド Vol.12』より抜粋)

  • Text_Taiyo Nagashima(窪塚洋介、塩塚モエカ)、Shogo Komatsu(ハイロック)
  • Illustration_Yoshimi Hatori

No.1 窪塚洋介

PROFILE

1979年生まれ。95年に俳優デビュー。映画を中心に、ドラマや舞台など、国内外問わず多くの作品で活躍。最近は音楽活動、モデル、執筆などでも才能を発揮。健康観に影響を与えた作品として、ネットフリックス『キスザグラウンド』と『ゲームチェンジャー』を挙げている。
Instagram:@yosuke_kubozuka

人間社会にも腸にも、必要なのは多様性。

「腸がひとの運命を司っているんです。腸が元気だったら、素敵な人生が待ってますよ。だから窪塚〝腸〞介にしたいくらい。それはまあ冗談ですけど、人類の腸がみんなよくなれば、世界は平和になるんじゃないかな」

のっけから強烈なパンチラインを繰り出すのは、窪塚〝洋〞介さん。腸活にハマっていると各所で語る彼だが、きっかけは新型コロナウイルスの流行だったのだとか。「(2020年春の)自粛期間中に菌や微生物について書かれた本に出会って、『マジすげー』って感動しちゃって。腸内の環境を保つためには、菌の多様性が必要ってこと。いい菌も悪い菌も多様性のなかで共存することで、結果的に腸の環境がよくなっていくんです。多様性が必要なのは人間の社会にも当てはまることだし、だれもがここ(腸を指差す)に宇宙の生態系を持っているんですよ」

人間の腸には常時100兆個もの細菌が存在していて、その細菌のバランスを保つことが心身にいい影響を与えるという。では、窪塚さんはそのために普段の生活でどんなことを心がけているのだろう?

「シンプルに食べすぎないことですね。毎日『笑っていいとも!』に出ていたタモリさんは一日一食をずっとつづけているそうなんです。俺はまだ一食だけだと寂しいから、朝は野菜ジュースと自分でつくった豆乳ヨーグルトで0.25食。夜は根菜類と発酵食品と海藻類で0.25食。昼は好きなものをしっかり食べるので、合わせて一日1.5食です。一生のうち、体が消化できる食べ物の量って決まっていて、毎日食べすぎていると、そのリミットを早く超えてしまう。すこしずつ食べれば長生きできるっていうシンプルな考え方です」

そう明朗に語りながらも、決して自分自身の意見をひとに押し付けることはしない、と窪塚さんは付け加えた。際立った輪郭の意見を持ち、そのうえで他者を尊重する。この絶妙なバランス感は、健康という枠を超えて「佳く生きる」ことの秘訣のように思える。つねに力まず、自然体のスタンスを貫く理由は何なのだろう。

「俺は酒も飲むし、タバコも吸います。なんならいまもちょっと二日酔いで(笑)。でも、いい感じに力が抜けているときがいちばん健康だし、とにかくこだわりすぎないようにしています。腸活とか何とか言っても、仲間と楽しく飯を食って酒を飲むこともあるし、この世のなかにファストフードだけしかなかったらおいしく食べます。俺にとっての健康は、流れる水のようにあることかな。楽しむことが元気のもとって気がするんです」

その考えは「生きる」ということの真理のように思える。よし、といますぐ取り入れてみたくなるが、街を歩けばさまざまな食の誘惑があるのに気づく。ラーメンやハンバーガーを食べることが習慣になっている現代人にとって、その快楽から自分を引き離すのは決して簡単なことではない。

「苦行じゃなくて、自分がうれしいことをやってるだけって考え方です。3日間、就寝前の3時間食事をとらないようにすれば、目覚めたときに体調と気分がいいのを感じられます。その気持ちよさだけで自分のやる気スイッチを押せると思う。ハードルの低い入り口を見つけて、そこからそれぞれが探究していけたらいいんじゃないかな」

すべての出来事はポジティブに変換できる。

自身が健康を意識したきっかけも周囲の友人、知人の影響だったと窪塚さんはつづける。さまざまなひととの出会いについて回想しながら、思い出すように話してくれたのは、ある「別れ」についてだ。

「19歳くらいの頃、ばあちゃんがガンで亡くなったんです。そのときに健康とか命についてたくさん考えました。当時はすさんでいたというか、インターネットの匿名掲示板で毎日批判されるみたいな状況で、けっこうギリギリだったんですよ。ヒップホップを聴いて、撮影現場から渋谷のクラブ『ハーレム』に直行して、朝になったら また撮影に行く、みたいな生活をしていて。ばあちゃんが具合悪いのは知ってたんだけど、頻繁にお見舞いに行くこともせずに…。ずっとおばあちゃん子で育ってきたからこそ、どうしていいか分からなかったのかもしれない。いまだったら、もっといろんな話ができるんですけどね」

出会いや別れ、山や谷を乗り越えるなかで、窪塚さんは自分の人生の柱となるような考え方と習慣を積み上げてきた。その強いメンタリティは、だれにとっても、不安定な時代を佳く生きるためのヒントになる。

「コロナというネガティブな出来事のなかにも、ポジティブな側面があると思うんです。ぼくが腸活で健康になれたのは、コロナがきっかけだったわけで。すべての出来事は自分の選択と意志次第で、ポジティブに変換できると信じています。人生の大事な部分を外側の出来事に委ねちゃうのは心もとない。数年前にマンションから落っこちたこともいま思えば必要だったんだなって。あれがあったから、いまの自分がいて、腸活して、健康に生きて、こうやって取材を受けて、話ができている。全部これでよかったんだなって思えるんですよ」

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