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安さ、便利さ、速さだけじゃないものを選ぶ。メルヴィータと鎌田安里紗が考えるSDGsのこと。
CARE GLOBE THROUGH COSMETICS

安さ、便利さ、速さだけじゃないものを選ぶ。メルヴィータと鎌田安里紗が考えるSDGsのこと。

生産から流通まで一気通貫にサステナブルなものづくりを掲げる、フランスのコスメブランド〈メルヴィータ(Melvita)〉。過小評価されがちなSDGsのことについて、識者と一緒に考えようという今企画ですが、前回のコムアイさんに続いて今回は慶應大学院の博士課程に籍を置き、ものがつくられる過程を可視化することがSDGsの達成に近づくと説く、鎌田安里紗さんと共にSDGsをより深く知るための方法や生活について対話を重ねます。

PROFILE

鎌田安里紗

1992年、徳島県生まれ。高校進学と同時に上京し、在学中に雑誌『Ranzuki』でモデルデビュー。2011年、「慶應義塾大学総合政策学部」に入学し、現在は同大学のSFC政策・メディア研究科後期博士課程に在籍。エシカルファッションとその周辺に関する情報発信を行う一般社団法人「unisteps」共同代表、オンラインコミュニティ「Little Life Lab」を主宰。
Instagram:@arisa_kamada Twitter:@arisa_kamada

答えを知りたいけど、それは自分で考えなきゃいけない。

ー 鎌田さんがSDGsを意識したきっかけを教えてください。

鎌田: もともとものがどうできるのかに興味がありました。アパレルのショップ店員としてスタートして、途中から企画の仕事も担当させてもらったんですが、生産背景を知らずとも服をつくれてしまった。コレクションやストリートスナップの写真を見て、つくりたい雰囲気のアイテムを探して、生地サンプルから素材を選んで…というパズルのようなやり方でしたね。生地や糸がどこから来るか知らずとも、そして服づくりのことを学んでいない私でも、こんな風に服を生み出すことに関われてしまうことが不思議に思えました。

ー 綿を種から育てて、できたコットンを収穫して実際に衣類をつくるという、服づくりの過程を体験する「服のたね」というプロジェクトを手がけていますね。改めて詳しく教えて下さい。

鎌田: 5月頃に綿の種まきをすると、7、8月くらいに花が咲いて、実ができます。11月くらいの寒い時期になると枯れてきて、実が弾けて、コットンボールができます。参加者の方がそれぞれ自宅で収穫したコットンを集めて紡績工場さんに持って行き、糸にしてもらって、その後、生地工場さんで生地に、そしてみんなでデザインを考えて服をつくるんです。ファッション産業の環境負荷が高いとか、労働環境に問題があるとか、そういった話を聞いても自分ごとにするのは難しいと思うのですが、一度服づくりの過程を体験してみることで、身近に感じられるようになるのではと企画をスタートしました。何より種から服になるプロセスはとてもおもしろいです。あとは、服から派生して生活用品のつくり方を知ることや、海外の工場に視察に行く旅を企画したり、講座やオンラインコミュニティづくりをしています。

ー 鎌田さんの活動を拝見すると、大きなスケールとして捉えられがちなSDGsを身近にしたいという問題意識をお持ちなんじゃないかと。生活者として考えるときの大事な感覚を教えて下さい。

鎌田: “環境問題” と聞くと、自分の生活とは別のところに問題があって、興味を持つひとは持つし、持たないひとは持たないトピック、というイメージになってしまいますが、日々の生活の延長線上にある、誰にとっても関係のある話だと思っています。どんな社会問題でもそうですが、どこか遠くにある問題ではなく、自分もその一部です。例えば、何かを買うときも、その先が気になります。自分も常にストイックにものを選んでるわけじゃなくて、微妙な罪悪感と適度なこだわりと妥協を持ちながら、暮らしていますけどね(笑)。

ー 環境問題は生活者すべてが当事者である、ということですね。

鎌田: でも「想像して下さい」と言われても、限界があります。だからこそ、体感や体験をする意味があるんだと思います。例えば、最近では家庭農園とかはじめるひとも多いじゃないですか。それは、直感的に自分の生活がどんな風に成り立っているかを感じたいひとが増えているからかもしれませんね。

ー そういう鎌田さんの取り組みは、SDGsを考えるにあたって壁にぶつかったからですか?

鎌田: いや、それよりもずっと前ですね。SDGsは関係なく、私自身が、自分の目の前にある服がここに来るまでと、手放した後にどうなるかが気になっていました。基本的に誰かを搾取したいひとや環境を悪くしたいと心の底から望んでいるひとってほとんどいないはずですよね。でも、悪意がなくても構造上誰かにしわ寄せがいってしまうことがある。SDGsが制定されたことで、そうしたシステムの問題に多くのひとが目を向けるきっかけになるのかなと思います。SDGsというキーワードが遠く感じてしまうひとも、自分の生活が誰かの犠牲や環境破壊の上に成り立っていたら嫌だなというのは素朴な感覚としてあるのではないでしょうか。

ー あとはSDGsは複雑で、ひとつの正義でなく、相反する正義がいくつかあったりするから難しいですよね。

鎌田: そうですね。人間は多様でひとりひとり考え方が違うから、正しいと思うものが違ってくるのは当然だとは思います。だからこそ、自分は何が正しいと思うのか考えなきゃいけない。手っ取り早く答えが知れたらいいのかもしれませんが(笑)。学んで考えて、自分が変わる必要がある部分は変わって、自分で選択しなきゃいけないのは大変なことだとは感じます。それがおもしろいところでもあるんですが。何が正しいかという共通認識やデータなどもどんどん変化しますしね。そんななかでも、社会全体でアップデートする必要がある問題をみんなで共有して変えていこうとする姿勢は重要だと思っています。

ー SNSやウェブメディアなどの、小さなメディアは意識して使っていますか?

鎌田: 例えば、テレビや大きな講演会では双方向なやり取りは難しいですよね。ダイレクトにコミュニケーションできるSNSも複雑なことをみんなでじっくり考えるにはハードルがあると感じていました。それより、いつもトークイベントなどに登壇した後に声をかけて下さった方と雑談するのが、最も「伝わった」感があるし、同時に私も新しい視点をもらえてとても楽しいと感じていました。それでクローズドなオンラインコミュニティをやろうということではじめたのが、「Little Life Lab」。100名ほどのメンバーで、それぞれが生活や仕事のなかで興味を持ったこと、疑問に思ったことを持ち寄って、話し合ったり、実際に試してみたりしています。本当にそれぞれ異なることにアンテナを張っているので、みんなで視点を持ち寄ると世界の解像度が上がるというか、自分ひとりではスルーしていたことに対して立ち止まる機会ができるのでありがたいです。

ー クローズドにしているのはどうしてですか?

鎌田: 2つの考えがあります。ひとつは、文脈を共有した上で情報をやり取りできるからです。ツイッターでもインスタでも、相手によって受け取られ方が全然違ったりもします。もうひとつは、聞き手側にどう話す側に回ってもらえるかを考えています。イベントによく来てくれている方と話していたら、身近な職場のひとたちや親とはこういう話はしづらいし、友達が見ている自分のSNSでも書けないと。なぜなら、自分のコミュニティでこういう話を急にしちゃうと意識が高いと思われちゃうからって。クローズドな空間だからこそブログに自分の考えを書いてみたり、発信するきっかけになるといいなと思っています。それで次第に慣れてきて、外でも発信するようになっていくひともいます。SDGsに関することは、自分がいる環境から、これがベターかなという方向に働きかけていくことが必要ですが、正解を探してずっと情報の受け取り手でいると何も起きないので、自分なりにこうしてみようと小さくても主体的に働きかける側になるといいのかなと思います。本当に小さなことでも何かやってみると、自分なりの解釈を持てる領域が広がっていきますもんね。

INFORMATION

メルヴィータジャポン カスタマーサービス

電話:0120-5210-5723
オフィシャルサイト

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