演者とプラットフォーム。


ー おふたりは演じる側として、演出に制限がかかった際に「そこで止めるの? まだいけるでしょう」と感じるときはないですか?
山田:最初の脚本に惹かれて参加を決めた作品があって、いざキャストが集まったときに、制作陣が思っていたよりもスター揃いになってしまって。もうちょっと(観客の)間口を広げたいというスケベ心が制作側に生まれた結果、そこから表現の幅はどんどん狭まり、最終的にあまりパッとしない作品になってしまった。ということはありました。
ー より多くの観客を獲得しようとすれば、どうしても制作側で忖度する部分もある。森田さんはNetflix以外の場所で演じることにやりづさらを感じることはありますか?
森田:『全裸監督』でいえば、エンターテインメントの要素も強いけど、ちゃんと人間ドラマが成立している部分にお芝居のやりやすさを感じています。これがエンターテインメント性だけを求めた作品だったら、消費されているような感覚を覚えて、きっとやりづらさを感じてしまう部分もあると思うんです。でも、それは予算とか規制、プラットフォームの問題ではなくて、いっしょにつくるひとたちがどういうものがつくりたいかに関係してるのかなって。わたしは、そこを重要視しています。そもそも、テレビとNetflixで同じことをやる必要もないとおもいますし。

藤井:『全裸監督』はクオリティだったりその規模感はもちろんなんですけど、反響とか周囲のリアクションが一個上のステージにいっている感じがしますね。地上波以外のドラマでこれだけみんなが観ていて、話題になることってなかったなと。もちろんおもしろい作品はたくさんあるし、一部で話題になることはあるんですけど。「あれ? ほとんどみんな観てない?」って感じは出られていてもありましたよね?
山田:海外に行ったとき、声をかけられるんですよ。(森田さんも)いっしょですよね?
森田:はい、いっしょです(笑)
山田:ハワイやシンガポールに行ったときに「Are You Netflix?」って言われて。「あー、観てくれているんだな」って。


ー 武正晴総監督が「朝、山田さんが現場に来たら『今日はこういう感じの村西なんだな』と雰囲気でわかるんです。あとはそういう風に撮るだけで、ある意味ドキュメンタリーみたいでした」とインタビューで語られています。演じる役柄の倫理観に対して「自分だったらこうは考えない」と葛藤することはあるのでしょうか。
山田:それをやっていたらなにもできないので、まず肯定することですね。役者はその役をだれよりも愛さなきゃいけないし、いちばん信じてあげなきゃいけない。このときの村西とおるが黒木香と対峙したら、見抜かれているのをわかっていてもこういうことを言うだろう、と。「あー嘘ついて、全部バレてたな」とか(笑)。ぼくはどの作品においても、撮影期間中は役を引き寄せて、自分も歩み寄って中途半端な状態でいます。
藤井:ほかの作品と撮影の時期がかぶることはないんですか? というのも、その感じだと何役も同時に演じるのはやりづらいだろうなと。
山田:そうですね。なので、18歳のときから掛け持ちはやってないです。ただでさえ、精神状態が自分でも役柄でもなくなっているので。
森田:わたしは、シーズン2を撮影しているときに、コロナの影響もあっていくつか掛け持ちをしていました(笑)。違う現場から、村西さんとホテルで会うシーンの撮影に行って、そこでまた別の作品のアフレコを撮った記憶があります。
山田:若いから大丈夫(笑)
森田:切り替えるのが大変なんですけどね。あるとき、訳がわかんなくなって、ほかの現場で「(黒木香風に)わたくしは〜」と言っちゃったことはあります。
山田:そうなるよね。…でも、まさか規制について語るとは思わなかったな。あとは、Netflixのプロデューサーに聞いてください(笑)

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