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20周年を迎えたネクサスセブンのいまとこれから。
20th Anniversary of NEXUSVII.

20周年を迎えたネクサスセブンのいまとこれから。

〈ネクサスセブン(NEXUSVII.)〉が今シーズンでブランド創設20周年を迎えました。服に対して真摯かつ誠実に向き合ってきた20年の歩みに対し、「常に勉強という意識を持ちつつ、それを楽しみながらやってきた」とデザイナーの今野智弘さんは語ります。そんなアニバーサリーを記念すべく、さまざまなブランドやアーティストとのコラボレーションアイテムがリリースされます。節目の年を迎えた今野さんは、いまどんなことを考え、未来をどう見据えているのか。当記事の前半は〈ネクサスセブン〉のいまとこれからについて今野さんにインタビューを敢行。そして後半には、コラボレーションの目玉のひとつである〈デサントオルテライン(Decente Alterrain)〉のダウンジャケットを共に手がけたアーティスト・Haroshiさんとの対談をお届けします。

コラボレーションをするときは、対等なものづくりをしたい。

ー そして今回20周年ということで、こちらのダウンジャケットをつくられたんですよね。

NEXUSVII. × Decente Allterrain × Haroshi MOUNTAINEER ¥173,800 〈デサントオルテライン〉がつくる水沢ダウンを使用した最高ランクのダウンジャケット「マウンテニア」をベースに〈ネクサスセブン〉がデザインを加えた一着。身幅やアームホールのシルエットを見直し、オーバーサイズに仕立て、ポケットを改良。通常、ファスナーには止水ジップが用いられるが、止水仕様のビスロンファスナーを使用し耐久性を高めた。ネック部分のファスナーにはファイヤーマンの救護服に使われるワンタッチで開けるものを採用することで、着たままでもラクにフードを取り出せるようになっている。ボディの裏地には今年刊行されたばかりのHaroshi氏の作品集『HAROSHI(2003-2021)』に使用されたスケートボード柄の生地を用い、フードの裏地部分は作品制作ででた板の粉を染料にし、それで染めた生地を採用している。11月25日(木)21時から販売スタート。

今野:商品としてHaroshiくんと一緒にものづくりをするのはこれがはじめてですね。20周年になにか一緒にやりたいというのは漠然とあったんですよ。だけどHaroshiくんは服についても詳しいし、よろこんでもらえるものがいいなというハードルはあって。

〈ネクサスセブン〉の展示会でも、玄人好みの服をオーダーしてくれるんです。はじめから中途半端なものをつくるつもりはまったくなかったんですけど、気合を入れて臨まないとなとは思っていました。

ぼくの高校時代の同級の山田満くんが〈デサントオルテライン〉のクリエイティブディレクターを務めていて、水沢ダウンはダウンジャケットの最高峰のプロダクトだし、ぼく自身も好きなので、いろいろやらせて欲しいと掛け合ったんです。

ー 〈デサントオルテライン〉のアイテムの中でも最高ランクのプロダクトである「マウンテニア」がベースになっているんですよね。

今野:本来あまりいじれるものじゃないんですけど、ポケットに〈ネクサスセブン〉らしいデザインを移植したり、肘にはミリタリーウェアにも使われるダイヤ柄の肘当てをつけてもらいました。ジップもビスロンファスナーに変更させてもらいました。シルエットも大きくして、ワンサイズにしたんです。

ー Haroshiさんが関わってくるのは、裏地ですか?

今野:そうですね。ボディの裏地部分には今年出版された作品集の表紙の柄を使わせてもらって、フードの部分はHaroshiくんがスケートボードを削ったときにでる粉を染料として使わせてもらって、それで染めた生地をフード裏地に使っています。

Haroshi:作品制作のときにでた木っ端を捨てられなくて、捨てるぐらいなら粉にしちゃえということで、それをずっと取っておいたんです。スケボーってカラーで合板されていて、たとえば赤いところを削ったら赤い粉がでるし、青い層だと青い粉がでるんです。層が切り替わるたびに掃除して、また新しい層からでる粉を集めてっていう作業を延々と繰り返していたら、粉が溜まってきたんですよ(笑)。

今野:全部色分けして取ってあって。今回その粉をいただいて染色したので、つくれる量に限りがあったんですよ。全部で5色あるんですが、すべてアソートで色は選べないようにしています。

黄緑だけは、ぼくの身内限定にしようと思っていて。というのも、この色は〈HUF〉のグリーンを連想させるカラーでもあるし、そこには深いストーリーがあるので、それをきちんと理解してくれる人の手に渡って欲しいという気持ちなんです。20着だけつくっているんですが、Haroshiくんの直筆サインをネームに入れてもらう予定ですね。

Haroshi:この粉を取るためにアルバイトまで雇ってたんですけど、なんのためにこれをやっているのか自分でもわかってなかったんですよ。なにかに使いたいとは思っていたんですけど、なかなか活用方法を見出せなくて。ただ、捨てるのは忍びないなっていう。それで今野さんからお話をいただいたときに、ひょっとしたらこれを使って生地を染められるんじゃないかなと思って提案したんです。

今野:〈ネクサスセブン〉で、バラやリンドウ、屋久杉を使って天然染めをしているんですけど、そうした特殊な染色技術をもった背景をたまたま知っていたので、そこに相談してみたら「できますよ」という回答をいただいたんです。どうやら粉の粒子をペースト状にできる機械を持っていらっしゃるようで、特許もお持ちなんですよ。それでお願いをさせてもらって。

Haroshi:スケボーの板ってメイプルでできているんですよ。そこに顔料で色付けをしていて。だから〈ネクサスセブン〉でそうした天然染めをしているということは、これもできるんじゃないかなと勝手に思って。ちょっと混ざると色が変わっちゃうので、層が変わるのを慎重に見極めながらやってました。

ー こんなにはっきりと色がでるんですね。

今野:その工場さんが技術を持ってくれていて本当によかったです。これができなかったら、裏地の柄だけを借りることになったから。コラボレーションをするときは、なるべく対等なものづくりをしたいと思っていて、Haroshiくんの真髄をきちんと見せたくて。だからスケボーを削った粉で裏地を染色できたのは、ぼくにとっては最高のパフォーマンスなんですよ。

Haroshi:だけど、すでに粉末状になっているところからさらにペースト状にするって、どんな技術なのか想像つかないですよね。ものすごい技術ですよ。

今野:担当の方に説明してもらったんだけど、あまりにも高度な話なのと企業秘密もあってここではあまり触れないでおきます(笑)。ただ、そういった工程を経ているので身頃の内側には、きちんとユーズドのスケボーから特別なテクニックを使って生地を染色していますっていう説明が書かれたネームをつけました。

ー 今回この粉を使ってなにかものづくりをするのははじめてですか?

Haroshi:初ですね。10年間、まったく使うあてがみつからなくて。粘土をつくってみたりとか、試験管に入れて作品にしてもいいかなっていうアイデアも浮かんだんですけど、ぼくはそこまでコンセプチュアルなアーティストでもないんでやめました(笑)。

INFORMATION

V.E.L.

住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷3-52-5-1F
時間:12:00~20:00
電話:03-5771-4774
nexusⅶ.jp

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