スケートビデオはスケーターのアイデンティティ。
ー 『Nice To See You』の撮影は、いつから始まりましたか？
亀井：去年の3月くらい。当初は、ジャパンチームだけのビデオを撮ろうと〈ヴァンズ〉と動き出したんですよ。でも、コロナ禍になって、世界中のスケーターが出演するグローバルのビデオの制作も始まって、そこにジャパンチームの映像を使用することになりました。
梶谷：グローバル用の撮影にシフトしたのが、6月くらい。当初は（星野）大喜を軸に撮っていたけど、それ以外に座間翔吾と守重琳央、ほかにもたくさんのスケーターを撮影し始めました。
ー 座間翔吾さんは、〈ヴァンズ〉から〈マゼンタ スケートボーズ（Magenta Skateboards）〉とコラボレーションしたシューズを2型もリリースしましたね。
梶谷：モデル名に“Shogo”と入っていて、本当に快挙！ みんなと一緒に北海道行ったり沖縄行ったり、いろんな場所に行って、撮影は大変だったんじゃない？
亀井：大変でした。特に東京は、ストリートの撮影が難しいですからね。だから夜の映像が多くなっていたりして。
梶谷：そういったスポットを観るのも、スケートビデオの見どころだと思います。普段カメキョー（亀井）は、どんなところに注目してスケートビデオを観てる？
亀井：スポットと音楽と、スケーターの格好とか。もちろんやっている内容も見ます。
梶谷：スケートビデオって、スケーターのアイデンティティみたいな部分があって、すごく大事。技や服装、音楽を含めて、こういうスケーターなんだよ、って伝えるものなんです。音楽はどうやって決めた？
亀井：自分たちの好きな曲選んでくれって言われたんですけど、悩みましたね。日本らしさ、とかいろいろ考えたんですけど、なかなかアイデアがまとまりませんでした。そしたら、ピエット（ヴァンズのスタッフ）がポロっと「YMO（イエロー・マジック・オーケストラ）」がいいんじゃないって言ってくれて。
梶谷：スケートビデオで使う曲って、ジャンルレスになったと思う。80年代はパンク、90年代はHIPHOPが多く使われていたけど、いまは関係なくなりましたね。
亀井：2000年代に入ってから、四つ打ちとかも使われるようになって、何でもアリになりましたね。でも、トレンドはあると思うんですよ。音楽っていうより、映画っぽいシンプルな音を選んでいるひともいるし、シティポップっぽい曲を使うひともいる。日本のビデオが海外に影響を与えて、さらに変化したって部分もあると思います。
梶谷：グローバルのビデオである『Nice To See You』に日本人スケーターが参加して、本当に感慨深いです。昔だったら考えられませんからね。
亀井：確かに。参加できてすごく光栄です。16mmフィルムの映像を使っていたりもするので、作品としての見応えもあると思います。
梶谷：海外のロケーションを観られて、いい音楽も聴けて。これをきっかけにスケートボードに興味を持つひとが増えたら嬉しいです。
華麗に技を決めるスケーターたちの姿を収めたスケートビデオには、並々ならぬ時間と労力が費やされていて、『Nice To See You』も例外ではありません。世界中のストリートで繰り広げられる、スケーターたちの創造的想像力は必見です。ここで紹介した、梶谷さんと亀井さんが『Nice To See You』の一部を解説する企画の全貌は、McGuffinにて公開中。出演しているスケーターの魅力や技の説明など、スケートボード未経験者にも分かりやすい内容になっています。それを観れば、『Nice To See You』のクリエイティブを十二分に堪能できることでしょう。
