ラーメンを1,500円で売る、限界集落に多くの人を集める。
ー 福生に人が遊びに来る、もしくは住むような街にしていくには、何が重要だと思いますか?
佐藤:ぼくの父の時代…、1970年代くらいはジョン・レノンとオノ・ヨーコみたいに髪を伸ばして、というヒッピー文化が華開いた時代でした。米軍基地があるから、アメリカから最先端のカルチャーを初めて取り入れる街として、当時は雑誌の編集とかデザインとか音楽とかクリエイティブな人たちの比重は多摩エリアにあったんですよね。それこそいま誰もが知っているセレクトショップの社長が、基地のフェンスの向こうに見える藍染のパンツと“ニケ”と書いてある靴を仕入れようとしたとか。
当時はそういう文化好きな人たちが、米軍ハウスに遊びに来て、「なんかいいよね」となって、次の週には不動産屋へ行って都内から越してきたなんていう話を聞きました。でもそれから50年が経ち、やはり建物も衰退していっていますし、いまではただのボロボロの平屋になってきています。
食後やおやつに人気なのが、揚げたてほやほやのドーナツを提供する「DO THE DONUTS‼︎」。カリフォルニア・サンタクルーズのスペシャリティコーヒーショップ「VERVE COFFEE ROASTERS」のコーヒー豆を使用したラテと、チョコレートドーナツのセット(1,000円)を注文。
中島:福生の地主、建物のオーナーに言いたいのは、ちょっとでいいから洒落たアパートメントにしてほしいんですよね。この街の建物の中には、年数も経ってもうすぐ潰れるものも多い。建て直しをする時に、次の世代のためにかわいいアパートメントへと変えてつくってほしい。別にアメリカンハウスじゃなくてもいいから、ちょっとエスプリが効いたものをつくって、相場よりも家賃を1万円高く貸すとか、そういうプロジェクトにしてもらってもいい。福生を住みたい街にしようという考えがほしいですね。
黒﨑:街の各所に大きな木を植えたりとかして緑のある街にしたりね。
佐藤:これまで通りのことをやっていると、普通の家賃相場でしか貸せないんですよね。武社長の会社が手がけていらっしゃる、あるラーメンは1,500円なんですが、飛ぶように売れている。それが価値だと思うんです。黒﨑さんも「TAKIGAHARA FARM」で、いわゆる過疎化が進む限界集落を開放して、文化的なことを仕掛けて、その場所に年間で2,000人ぐらいの国内外のクリエイターを呼び込んだりとかされている。そういうことをいろいろなレイヤーでされていますよね。たとえばそんな動きを、福生の中心地、市民の文化意識、土地所有者の意識、行政などそれぞれの役割でやらなきゃいけないなと。この場所が、そのようなきっかけづくりの場所になればいいなと思ってます。

ー 先輩のお二人から、佐藤さんに何かアドバイスはありますか?
中島:福生をただ普通の街にしたってこの街は栄えない。日本で一番エネルギーに溢れて、楽しい街にしていこう。いるだけで楽しくなるようなできあがった街は、もう栄えない。でも、一回寂れた町はもう一回復活する。福生は栄えたのも早かったから、いまは寂れているけど、たった一人の男がエネルギーをかければできるはず。国道16号沿いにかわいいお店をたくさんつくる、でもいい。夢をみなくちゃいけないんです。たとえ人に「福生に夢なんてどこにある?」と言われたって、あなたには見えないだけで、俺たちには見えるんだっていうような気持ちを持ってほしいね。
黒﨑:ポートランドがすべてではないので、コミュニティとか横文字に頼らずに、この場所にちゃんとふさわしい独特の日本文化をつくっていくという覚悟を決めてもらって、みんなで集まって知恵を出し合っていくのがいいんじゃないかなと。ポッドキャストで発信するとか、法人やファンドをつくったり、行政とも交流したり、武社長に相談したりとか。そうすると街が変わっていくと思う。
ー たしかに、街づくりにおいて行政との関係づくりは重要になりそうですね。
佐藤:実際に今度、福生市の市長に話し合いの場を設けていただくことで話が進んでいます。そこではこれまでの「FLAG」で積んできた経験を使って、福生の街づくりについて提言するつもりです。そういったマクロとミクロ両方の視点で、街づくりの音頭を取っていけたらと思います。