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これは不完全な記録です。森田剛と『DEATH DAYS』。

これは不完全な記録です。森田剛と『DEATH DAYS』。

森田剛という存在を、文章と写真に置き換えてしまうのは適切でない。この声の湿度のまま、この体の動作のままに届けたい。ウェブマガジンという手法の限界、不完全性を思い知らされるような実感がそこにありました。

彼の魅力を知る人は多くいます。そして、彼の発する言葉は、私たちの「知っている」を裏切らず、それでいて常に超えていきます。

どこまでも自然で、くつろぐ動物のようで、生まれたての子どものようで、おじいちゃんのようで、森田剛である。全てを透過する水晶のようでもある。このインタビューを読み終えたあなたの心に、彼の魅力がまた新しく刻まれることを願って、文章と写真の力を信じて、記録します。映画『デスデイズ』の劇場公開を記念した、森田剛単独インタビューです。

  • Photo_Tetsuo Kashiwada
  • Hair &make_TAKAI
  • Edit&Text_Taiyo Nagashima

怖いなって思いました(笑)。本能的に考えたくないことじゃないですか

ー 『DEATH DAYS』は、秀逸な設定によって駆動している物語だと思います。脚本はどのように決まっていったのでしょう?

森田:“自分が死んでしまう日「デスデイ」を、生まれたときから皆知っている世界”という設定のもとになったのは、長久さんと僕との会話でした。なんていうか、僕は死に対してリアリティがなくて。だからこそ、生きることとか死ぬことに興味があるって話したんですよね。大切な犬を亡くして一生分泣いた経験もあるし、同じくらい大切な人の死に全く涙が出なかったこともあった。死は誰にでも絶対に訪れる、ある意味で平等なものだけど、それがどういうことなのかがどうしても実感できなくて、自分の中で収まる場所がないというか。そういう会話がきっかけになって、長久さんが『DEATH DAYS』っていう物語を考えてくれたんです。

ー 死というものの正体って、生きている限り決してわからないですよね。『DEATH DAYS』はシンプルな設定で、大きなテーマにアプローチしていますが、最初に脚本を読んだときはどう感じましたか?

森田:怖いなって思いました(笑)。本能的に考えたくないことじゃないですか。面白いけど、同時に恐ろしい。でも、だからこそ挑戦したいという気持ちになりましたね。すごくハードルが高いけど、そこに飛び込んでみたいなと。何が来ても行くつもりではいたんですけど、「お〜DEATH DAYSかあ〜〜〜」とは思いました(笑)。演じるにあたって、覚悟が必要でしたね。

ー 現場を迎えるまでには、どういう準備をしましたか?

森田:それはいつもと変わらず、台本に書かれていることを一番に大事にしました。自分の台詞もそうだし、相手の台詞もそうだし、自分の中に台本を入れるっていうところをまずやって、その状態で現場に入って、相手がどうしゃべるか、どう動くか、そこで自分の感情がどう動かされるのか。そういうことを体感していくのが楽しいんです。それを長久さんが刺激的に撮ってくれて、映画が出来上がっていく。ただ、撮影はすごく……苦しかったなあ(笑)。

ー どういう苦しさだったのでしょう?

森田:長久さんの演出は独特で、言葉に感情を乗せすぎないっていうことを求められるんです。それが結果的に、すごく面白い、自分の観たことのないものに仕上がっていくんですけど。ある種ドライな演出に応えながら、役としてちゃんと生の感情を持ってそこに存在しなきゃいけないっていうギャップがあって。でも、だからこそ刺激になりましたね。出てるキャストの人もみんな面白かったです。

ー 石橋さんのお芝居も印象的でした。

森田:石橋さんはすごく堂々としていて、でもニュートラルで、淡々と自分の仕事をするっていう感じにも見えるし、一方で相手を感じて芝居することを大事にしているんだろうなとも思いました。すごく楽しかったですね。

ー 石橋さんと森田さんの掛け合い、独特なリズムと心に残るフレーズの連発でした。

森田:すごい言葉のやりとりですよね。自分の喋っている感じは、いや、違うなあ……って今でも思っています。石橋さんはやっぱり上手いし、緋美くんはすごくナチュラルにやってたし、もものお二人なんて何も考えていない感じでそこにただいられるし(笑)。みんなすごいですよね。

ー キャスティングも見事でした。中でも、森田さんは、そこに本当に存在している感じがありました。森田さんと緋美さんは実年齢には差があるのに、ちゃんと友達感が出ていたことも面白かったです。

森田:いやあ、違和感しかなかったですよ(笑)。でも、友達に見えようが見えまいがどうでもいいというか、そこを超えたら面白いと思っていたんですよね。年齢を超えるようなものって、お芝居とか映画の中にはあるはずで。

長久さんに丸投げで「こういうことやりたい」って相談して、「ああいいね面白そうだね」って応えてくれて。真剣に俺のこれからの見え方とか方向性まで考えてくれて。それがめちゃくちゃありがたいと思ったんです。俺が返せるのはこの作品の「俺」っていう役を本気でやって、観た人が面白がってくれたり、長久さんすげえなって感じてくれたり、そこに出てくる役者の人たちみんなをいいなって思ってくれることだから、そこは本気でいけたというか。そういう信頼関係を築けたことは、すごく大きかったですね。

ー みんながそれぞれの持ち場で一生懸命に考えていたからこそできたことですよね。

森田:そうですね。でも、俺のこれからのことなんて、普通考えてくれます? すごいありがたいですよ。

ー それは森田さんだから、森田さんが周りの人の心を真っ直ぐに動かしているからなのかなと思います。

森田:そう言ってもらえると……嬉しいですね。職種とか関係なしに意見を言ってくれる仲間が周りにいて、きっとこれからもっと出会えたりするだろうし、そういうことが何にも代え難い喜びですよね。

ー 周囲の人は、森田さんに安心しながら背筋を伸ばしているんじゃないかなと思います。それが森田さんの魅力なのかなって。長久監督はもちろん、先日出演していただいた『ラジオ風とロック』 の箭内道彦さんも、森田さんを好きになっていました。

森田:(笑)そうっすかねえ(照れたように頷く)。

INFORMATION

DEATH DAYS

deathdays.moritago.com

3月12日より渋谷シネクイントを皮切りに『DEATH DAYS』劇場版が全国で順次公開。同映画の制作過程に密着したドキュメンタリー映像『生まれゆく日々』が同時上映される。
劇場上映を記念して企画・製作された写真集「A BOOK ABOUT DEATH DAYS」も発売開始。

www.moritago.com

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