規格住宅のイノベーション。
今回、このような極めてエンターテインメント性の高い住宅をプロデュースした仕掛け人である、「BETSUDAI Inc.TOKYO」CEOの林 哲平さんに、今の住宅業界が抱える問題点、そして住宅が果たすべき役割などについてお話を伺いました。
PROFILE
広告、出版系の企業にて映画・ファッション業界をはじめ、さまざまな企業の広告・プロモーションに携わった後、新築規格住宅のフランチャイズ『LIFE LABEL』、住宅エンターテインメントメディア『Dolive』の2つのネットワークの主宰として、両ブランドの商品開発から広告・マーケティングまでを手掛ける。 2020年4月には「株式会社社外取締役」を設立。オンラインサロンの運営、様々な企業や商品のプロデュースを仕掛ける。
ー 今回のモデルハウス、ものすごくわかりやすくて、イメージが湧きやすいです。建売住宅と注文住宅の間というと少し乱暴ですけど、この立ち位置の住宅ってすごくニーズがあると思います。
林:ありがとうございます。この手の規格住宅って、昔からあるにはあるんです。代表的なところでいうと〈ベス(BESS)〉、あとは〈無印良品の家〉とか。住宅を規格化しているという意味で似ているんです。
ー たしかに。そんななか「BETSUDAI Inc.TOKYO」さんの手がける「ライフレーベル」や「ドライブ」の住宅は、ひときわポップというかしっかりキャラクターがあるように思います。
林:最近、多くの人がライフスタイルに関心が湧いてきていることを実感しています。このご時世で家の中で快適に過ごしたいというニーズが高まっているんだと思います。今回のような規格って、10年前だったら難しかったかもしれません。
ー ファッション、カルチャー好きな方って、最初に洋服に興味を持って、その次にインテリア、そして住宅、という順番が多いように思います。決して住宅を後回しにしているわけではないのでしょうが、どうしてもそうなりがちです。そしていざ購入する際になっても、一生のうちですごく大きい買い物であるにも関わらず、なんだかふわふわしたまま話が進んで行くケースが多いと聞きます。
林:それは住宅業界にディレクター的な立ち位置の人がいないからだと思います。例えばアトリエ系の設計事務所にいる方ってディレクターではなくデザイナーなんです。つまり、オンリーワンは作れるんですが、規格住宅を作るということをしていません。
ー なるほど。住宅に対しての規格をディレクションするということですね。確かに今回の〈ゴードンミラー〉のように世界観がはっきりしているところと組むということ自体が、ディレクションですよね。何よりビジュアルがわかりやすいです。
林:そうなんです。ディレクターがいると話がすごくスムーズに進むんです。その立ち位置の人がいないと、デザイナーとユーザーが直でやり取りをしてしまうんですよね。一方で、これまでの規格住宅を作る方々って、大体ビルダーとか建売系の会社にいるんですけど、そこにはディレクターもデザイナーもいないんです。コストパフォーマンスがすごく重要で、構造物に対してコストのバランスをみて、建売住宅を作っていく。つまり、アートディレクターもクリエイティブディレクターもいない状態で物事が進んでいくのですが、僕らはその部分を担って形にしているイメージです。
ー 家づくりって三回目でようやくうまくいく、みたいな言い回しありますよね。それくらい難しいということだと思うのですが、現実問題としてほとんどの方が一度きりの機会なはずで、なるべく失敗のないように安心しながら話を進めたいとはみんな思っているはずです。
林:まさに。僕らが作る住宅にはコンセプトがあるので、わかりやすいと思うんです。住宅デザインってコンセプトとかテーマがあった方が、暮らし方の方向性が整うんですよね。僕たちはハイリテラシーの方だけではなく、いろいろな方に向けてデザインを提供しているので、このやり方を選んでいます。
ー 専門的な話が多くなる家づくりのなかで、それらを噛み砕いて説明してくれるディレクターのような方がいてくれたら、格段に理解度が深まりますよね。
林:異質だと思うんですよね、何千万も払うのにディレクターがいなくてデザイナーだけで物事が進むって。そういう意味ではそこには一定のニーズがあるのかなと思います。