
第三講 栗原 道彦
奥深きヴィンテージマスクとフードの世界。コレクターズアイテムに最適?
栗原:まずは最近集めているもので、アウトドアメーカーとミリタリーのマスクとフードを持ってきました。
今野:なんでこれを選んだの(笑)?
栗原:数が少ないのに比較的安価で手に入りますし、気兼ねなく集められるという、探す楽しみがあるというのがいいと思いまして(笑)

今野:ネイビーのダウンマスクは初めて見た。これすごいね。
栗原:ベージュはお馴染みの〈エディーバウアー〉で20年くらい前に八王子の古着屋で見つけたものです。ネイビーは〈ブルーグース〉というメーカーのもので去年LAに住んでいる知人に譲ってもらってめちゃくちゃテンションが上がりました(笑)。このメーカーは恐らく当時色々なブランドのOEMをしていたんじゃないかと思います。どちらも見た目は似ているんですが、被ってみるととやはり全然違うんですよね。
栗原さんがおもむろにダウンマスクを被りはじめる…


一同:爆笑
今野:このネイビーのミリタリーマスクは自分も好きなアイテムだな。山岳部隊だと白で、オリーブで表面がPVC加工された質感のもあるよね。
栗原:そうなんですね。
今野:そのマスクを被っている山岳部隊の写真を見たんだけど、かなり強そうだったよ(笑) クリちゃんも似合いそう。
阿部:パイル生地のフードはパタゴニア?
栗原:そうです。ひとつは「オキドキ」で買って、他はアメリカで手に入れたものです。ネイビーは去年地方のジャンクフリマで見つけて。
阿部:いくらくらいだったの?
栗原:2~3ドルかと思ったんですが、意外にも10ドルもしました(笑)
阿部:数的にはやっぱり少ないの?
栗原:有名なのは皆さんも御存知のジャケットやベスト。ミトンもあるんですが、フードが一番少ない気がしますね。
阿部:フードだけレイヤードできるアイテムが最近流行っているよね。個人的には、こういったヴィンテージアイテムを取り入れるのって面白いよね。

栗原:次はチャンピオンのリバースウィーブです。第一回目の古着サミットでもクレイジーパターンの珍しいやつを紹介したのですが、引き続き注目していて。
阿部:そんなに旧くはないよね?
栗原:そうですね、まだヴィンテージとは呼べないですよね。現状、極端に数が少ないわけではないんですが、最近リバースウィーブがなくなっていくんじゃないかという危惧があって。僕自身ここ数年でリメイク用に何千枚も仕入れていますし、また最近は若い子にも流行っていたりXXLでも売れるようになっていて、特にアメリカ製は年々減っているように思います。今だと80年代のプリントタグでも旧く感じるようになりましたしね。
阿部:このハーフスナップのボタンタイプも珍しいよね。
栗原:そうですね、90年代だったら1万円代後半くらいで売られていましたよね。
阿部:これはどちらで?
栗原:確か「ベルベルジン」で7800円くらいだったと思います。
今野:ちゃんとボタンに〈チャンピオン〉のロゴが入ってるのもいいよね。
栗原:似たものだと、フルスナップのスタジャンタイプも大分出てこなくなりましたね。
藤原:リバースウィーブといえば形が変形しているのがよくあるじゃないですか。スチームを使って伸ばせばけっこういい形になるのでオススメですよ。

栗原:次はカスタムメイドのミリタリーですね。ジャケット2着とベストを持ってきました。まずはこのデッキジャケットなんですが、ベースは「N-1」で、裏面にフロッキープリントされた生地が貼り付けられています。一見すると分からないのですが、よく見ると柄のように凹凸が浮かび上がってプリントの跡が見えるんです。蜂モチーフなので、多分シービーズだと思うんですが。

今野:おそらくシービーズだろうね。
藤原:これはカスタムなの?
栗原:多分、個人でやったものだと思うけど、何枚かまとめて見つけたので軍でやっていた可能性もなくはないかも。かなり手が込んでいて、あえて裏側にプリントしているがおもしろくて。
今野:「ベルベルジン」だといくらくらい付ける?
藤原:高く値付けしても買ってくれるマニアのお客さまが多いので、通常の「N-1」よりは2~3万は高くすると思いますよ。
今野:これ、だいぶ昔に見せてもらったけど、その後も結局栗ちゃんのところでしか見たことないもんね。現存数もきっと10枚もなさそう。

栗原:それと最近見つけたのが、USエアフォースの「CWU-8P」の上にMA-1のパーツが張られているカスタムジャケットです。だからこの下にもしっかりとポケットがあるんです。最初はテストサンプルだったらいいなと思って買ったのですが、おそらく違うかなと。
今野:うわぁ~、これはすごいね。リブも替えてあるけど、フライトジャケットのものじゃないよね?
栗原:そうですね。これは違いますね。表はMA-1のポケットをそのまま使っているのもおもしろいです。ただ本体にダメージがあって、それを隠すためにやった可能性もありますけどね。

栗原:次はM-51モッズパーカのセットアップとなるトラウザーズのライナーを使ったリメイクのベストですね。
阿部:これはいくらくらいだったの?
栗原:LAのフリマで数十ドルでした。
今野:ポケットの形が山ポケになってて最高だね。ボタンがビッグヤンクだったら完璧だったのに(笑)。でも前回紹介した山ポケットモチーフのリメイクがあったり、当時は相当なインパクトだったんだろうね。
藤原:この山ポケットにちゃんと意味があるか謎ですが、いいですよね。
栗原:今回紹介しているカスタムメイドの軍モノって好きな人は好きですし、興味のない人は安く売ったりする。人によって極端に評価が分かれるのがおもしろいんですよね。

栗原:僕のラストは「ECWCS」、いわゆるゴアテックスパーカですね。インスタには上げたのですが、このあいだの出張の時にスリフトで出たんですよ。
阿部:見たことのないカラーリングだけど、これはどういうものなの?
栗原:訓練時に仮想敵国側の兵士が着るもので、グリーン単色のカラーリングが特徴なんです。ウッドランドやデザートカモ等、通常のものと比べるとシワになりやすくて質感も違います。70年代まで使われていたアグレッサーの現代版といった感じですね。存在は知っていてずっと探していたんですが、まさかスリフトで出るとは。
今野:本当にすごいよね。アグレッサーっていつからあるんだろう? 「M-51」のアグレッサーもたまに見かけるよね。
栗原:当初は、M-43などを染めて使っていたみたいですよ。実物を見たことがあります。50年代くらいからアグレッサー用に作り始めたんじゃないですかね?

今野:そういえば初期のウッドランドの「ECWCS」も値段が上がってるよね。サイズと状態がよかったら3万円台とかするもんね。
藤原:これはある程度使っている感じがするけど、もしデッドで出たらいくらくらいまで出す?
栗原:デッドで8万円なら買うかな。これはサイズがスモール/レギュラーで、本当はスモール/ショートがよかったけど、そんな贅沢は言えない(笑)
今野:アグレッサーやOPFORって極端に数が少ないから知名度が低いけど、ポツポツとおもしろいものが出てきて、ジャンルとして成立したら価格が上がりそうだよね。