3人の絶妙なバランス。

ー 鵜飼さんは、架空の設計図までデザインされていますよね。
鵜飼:あれはね、NIKEとか自分でデザインできるサービスとかあるでしょう(NIKE BY YOU (旧NIKE iD)のこと。パソコン上で既存モデルのカスタマイズが行える)。ああいうのをもじって、神山くんのスプレーがパーツになっていて、それを使って誰でも〈キーン〉のサンダルをカスタマイズできる。そのなかで、「今回はこれをチョイスしたんだよ」みたいなジョークで。
石川:デザインって、設計図が一番かっこいいときあるんですよ。一番盛り上がるし、一番かっこよくて。大好きなんですよね。あれは、鵜飼くんのサービスです。

鵜飼:あと、画像検索なんかで写真に透かしが入っていて、買わないと消えないやつあるじゃないですか。だから、わざと「ULTRA HEAVY ORDINARY STYLE」って文字が入ってる。つまり、誰かが金を払わないでイリーガルにコピペしてつくっちゃってるという体です。
石川:なるほど! そういうことか。
鵜飼:〈キーン〉にしても〈ジャーナルスタンダード〉にしても、付き合いが長いからこそこういうことがやれていて。信頼関係がないと、こういうポップアップも絶対つくれないですからね。
石川:おれ、店先でキレてるね。
鵜飼:もしくは、向こうが怒ってるか。
石川:「二度とやめてください!」っていうね。でもさ、みんなに「おれのせいにしろ」って言ってるんだよ。「だって、顕さんが言うからしょうがないじゃないすか」って。まあ、すべて越権行為です。でも、正直おれを言い訳にしてくれると楽だよね。
鵜飼:普通、ブランドとコラボ商品をつくるとなったら、何回か提案して、向こうからも「ここ、もうちょっとこうしてもらえませんか?」というやりとりがある。でも、そうすると、どんどん作品って薄まっていっちゃう。〈ウルトラヘビー〉では、そういうのを免れてる。っていうか、顕さんがすごくいい仕事の取り方をしてくれてるんでしょうね。
石川:会議の段階で「どう?」ってことではないからね。

ー 〈キーン〉と〈ウルトラヘビー〉のコラボは、来シーズンもやるんですか?
石川:もうデザインを提出済みです。これはやっておきたいんです、大変だけどね。いっときのレッド・ツェッペリンって、4人ともすごく忙しくてさ。『ブラック・ドッグ』って曲は、ひとりずつ違う場所で録音したものをジミー・ペイジがスタジオで編集してるだけなの。それに近いかな。
鵜飼:YMOもそうですね。3人がバラバラに録音してるので。
石川:〈ウルトラヘビー〉はずっとそんな感じですよ。
ー だいぶ前からテレワークであったと。
石川:そうだね。でも、おれがテレワーク化されてないわけですよ。アナログ派なんで。肝心のぼくがそういうことをスルーしてる。「直接言ってくれない?」って。おれに言ったところで、Illustratorのソフト持ってないから。そのままスルーパスなの。でも、それでうまくいってるのが、ぼくらの秘密ではあるかな。これ、もうちょっときっかりしてたりすると、絶対仲間割れです(笑)。
鵜飼:3人ともね、結構ユルいんで。ユルいっていうのも、外部に対してはそうじゃないけど、この3人のなかでは「もう、許しちゃう」みたいな。
石川:そう、正直ほかの仕事で3人の場合は、意外とぼく厳しいっすよ。〈ウルトラヘビー〉はクラブ活動みたいなもんだから。ほんと、鵜飼くんと江藤くんが一番大変です。最後のシュートは彼らなんで。おれ、ゴールキックだけだから。最初のゴールキックで「あとはよろしく」みたいな(笑)。で、神山が蹴りに行ったやつを鵜飼くんが最後、決めに行く。「ゴール決めて来いよ」みたいな。
でも、江藤くんにしても鵜飼くんにしても、神山にしても、おれから命令したことは一回もしたことないからね。そういうの人生でないな。「お時間あれば、やってください」ですよ。それはね、ぼくのポリシーじゃなくて、癖みたいなものだから。
INFORMATION
これまでに培ってきたワーク、ミリタリー、スポーツというフィルターを再提案する〈ジャーナルスタンダード 〉の新業態。ディレクターの松尾忠尚さん曰く「いままでの歴史を振り返りながら、いまのやり方でアウトドア・ライフスタイルショップをやろう。流行に乗ってアウトドアだけやったわけじゃないんです」とのこと。ハイスペックなギアから、ローカルで展開されてきたガレージブランドやアート作品、“ウチソトをつなぐ”アウトドアファニチャーなど、ライフスタイル全般をフォローする。
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