オリジナルブランドのその先に。

上田さんが〈Ruy〉を立ち上げたのは、もちろん、「自分好みのウェアで走りたい」というだけの理由にあらず。そこには、賞金で稼ぐのではないトレイルランという競技の実情も絡んでいます。
「アスリートとしての活動のメインとなるのはスポンサーフィーです。それで一応家族も養えてはいますが、コロナ禍の時代にいつまでもスポンサーフィーだけに頼るのは不安定だなと。他にも収入の柱を作れれば、今後また別のパンデミックや環境要因の変化があったときに、自由に動きやすいですよね。
それから今のアウトドア業界に対して思うところもあって。というのも、若いトレイルランナーへのスポンサードやサポートがベテラン勢に比べて少ないような気がするんですよね。それって先のことを考えたときに、少しアンバランスじゃないですか。
そこを何とか、〈Ruy〉の枠組みの中で若手アスリートの活躍の場を増やせたら、という想いも、少し先の展望としては描いています。でもまぁ、単純に僕が一緒に走れる仲間が欲しいなという気持ちが大きいんですけど(笑)」

「あとは売り上げを出すことで、山の世界にも何かしらの貢献を返せたらなと考えています。僕らは山を使わせてもらってる身なので。長野県大町市の山に伊藤新道という登山道があるんですけど、いや、あったんですけど、昭和の終わりに廃道になってしまっていて。この道もう一度開通させようという取り組みが動いているので、その復興に売り上げの一部を充てられたらいいですね。
祖父がその近隣にある野口五郎岳の小屋で働いていたこともあって、ゆかりのあるフィールドなんです。〈Ruy〉を買うことで伊藤新道の復興に繋がるという筋道ができたら素敵じゃないですか。個人的にも復旧作業のボランティアには関わって行きたいです。トレイルランナーは、とにかく機動力はありますから(笑)」