見るほどに違和感が生まれるジェフのアート。
ー 今回、ジェフさんのアートワークが施されたアイテムが〈ダイワ ピア39〉から発売されますが、テーマを教えていただけますか?

ジェフ:「魚と人間の共存」というのをテーマにしているよ。そこは、釣りをはじめたときからずっと考えていることなんだ。ちなみに、ぼくはベジタリアンではないから、魚も食べるし、肉も食べます。
ー そのなかでの共存というのは、どういう意味なんでしょうか?
ジェフ:釣りっていうのは、竿の扱いがいくらうまくても、ギアの知識がたくさんあっても、魚のことを知らないと釣れないんだ。鯉は汚れたLAの川でも生きているけど、トラウトは水がきれいじゃないと生きていけないでしょ。そうした魚の生態であったり、住処のことも学んで、魚の価値観を学んでいくことが共存につながっていくと思っています。
それと、例えばストリートでスケボーをやる人は、どこでトリックを決められるかを常に考えているから街の見え方が違う。それは釣りも同じで、川や湖でトラウトを釣るとなったときは、クルマのなかから「この場所の水はキレイなのか」と思考を巡らす。そう考えられるようになることが、とても価値があることだし、生態系に関心を寄せることが大事なんだと思う。
ー たしかに、その視点は釣り人ならではのものですね。
ジェフ:聞いた話なんだけど、50年のキャリアがある釣り人がいて、彼は釣り竿をもって出かけるんだけど釣りをしないんだよ。もちろん、魚を釣るために何をすべきか完全にわかっているし、訪れていたスポットはトラウトを釣るためには最適の場所。だけど、あるとき「なぜ、自分は魚の邪魔をするんだ?」と思ったらしい。
たしかに、魚にとって「釣られる」というのは辛いことで、釣られたいと思っている魚なんていない。そのような深い理解をもつことが、共存にも繋がっていくんだと思う。
ー 共存というのは、魚と人間の関係を築いていくということですね。
ジェフ:魚には理解できないと思うけどね(笑)。ただ、自分の世界を広げたり、見方を変えたりするためにはブレイクスルーをしないといけないんだよ。本を読んだりYouTubeを見るだけじゃなくて、実体験が必要でね。


ジェフ:それと、すべてにおいてそうなんだけど、本や映画を読むだけではその本質はわからないでしょ? 実際に魚を釣るという体験をして、そこでなにかを感じることで実体がつかめてくるし、共存することにつながる。難しくて、ごめんね(笑)。



ー モチーフに使われているのはトラウトですよね。
ジェフ:Yes。ちょっと奇妙だと思わない? 人間とトラウトの大きさが一緒なんだ。
ー たしかに。遠目で見ると、どちらも人のように見えなくもないですね。
ジェフ:パッと見たときに何を描いているかボンヤリとわかるんだけど、しっかり見ていくと違和感を持ってもらえるのが、ぼくのアート。今回のアートワークも、パッと見たら人間の友達同士が肩を組んでいるように見えるけど、しっかり見ると「いや、魚じゃん」って。そこから「魚と友達になるんだったら海の中じゃなきゃいけない?」とか「海と陸、どちらにせよ、一方は苦しいよね」とか、いろんな想像ができる。ポップなイメージだけど、そこの奥のストーリーをみんなが考えてくれたらうれしいなと思っているよ。シンプルなことなんだけど、深くて複雑でもあって、それが面白いと思うんだ。
ー ジェフさんならではの特殊な視点が、落とし込まれているわけですね。
ジェフ:ぼくの視点は常にオープンで、ちょっと違った見方をしていると思う。それがアートにも影響していることは間違いない。だから、自分のアートが人々のものの見方に影響を及ぼすことに興味があるし、そうなったらうれしいと思っています。とても混乱させるような話で、ごめんね(笑)。

ー ありがとうございます。そういえば、今日は全身〈ダイワ ピア39〉なんですね。
ジェフ:とても着やすいし、クオリティも素晴らしい。まだアメリカでは販売されていないから、ロサンゼルスで着ていると、みんなに「それ、どこの服?」って珍しがられるんだよね。ちなみに〈フィルソン〉の帽子は、「eBay」で数ドルで落札したんだ。似合ってるでしょ?
