CLOSE
FEATURE
【TBSJ】ヒトレシピ。Recipe 2 清永浩文 大分名物・とり天とサッカーの話。

【TBSJ】ヒトレシピ。Recipe 2 清永浩文
大分名物・とり天とサッカーの話。

「sio」の鳥羽さんをホストに迎えた鳥羽周作ジャーナル、略してTBSJの第2回には、〈ソフ(SOPH.)〉代表を退任し、Jリーグのクリエイティブディレクターに就任した清永浩文さんが登場します。あまり取材を受けていない、Jリーグの話が聞けるぞというミーハー根性丸出しで取材に臨んでみたものの、サッカーと経営という共通点をもつ清永さんとの対談は、予想をはるかに超える、深く学びの多いものになりました。

  • Movie Direction_Hiroaki Takatori(BONITO/Rhino inc.)
  • Movie_Ryota Kuroki、Koya Matsuba(BONITO/Rhino inc.)
  • Photo_Kousuke Matsuki
  • Text_Shinri Kobayashi
  • Produce_Ryo Komuta
  • Edit_Shuhei Wakiyama

ロゴデザインよりもっと本質的なこと。

ー「大分トリニータ」のサポートを始めたきっかけはなんだったんですか?

清永:これは綺麗事になっちゃうんだけど、〈F.C.リアル ブリストル〉で少しお金ができて、サッカーで儲けたものは、サッカー界に還元しなきゃなと。いわば、ぼく的なふるさと納税だよね(笑)。こういうことをやると、自分の指針になるし、精神的な強さにもつながってくる。「大分トリニータ」のスポンサーをしているだけで心が浄化されるというかね。

鳥羽:目的と手段の話だと思いますね。お金を稼ぐとかブランドをつくることが目的じゃなくて、こうやって育てた結果、実はやりたいこととひとのためになることが繋がっていたり、手段としてお金を稼いでその先のビジョンがあると。

ー「大分トリニータ」では、デザインのアドバイスをしたりも?

清永:ユニフォームのデザインをしていたわけではないんです。でも、チームのクリエイティブも同じだけど、都市の規模ごとにマーケティングがある。100万人以上の都市もあれば、大分のように40万人の都市もある。大分であれば、都会的でかっこよすぎて、おじいちゃん、おばあちゃんがついていけないデザインにしちゃダメだと思う。たとえば、プロレスっぽいポスターを貼ってるくらいの方がいい(笑)。

清永:ファッションをやっているとユニフォームデザインの相談がくるんですけど、よく話すのは、デザインどうこうじゃなくて、チームが強いからそのユニフォームがかっこよく見えるんだと。世界を見ても、「レアルマドリード」はシンプルな真っ白、「マンチェスターユナイテッド」はシンプルな赤だからね。チーム全体をデザインすることの方が大事。

鳥羽:超わかるなあ。デザインというものは、視覚的にアウトプットされたものと捉えられがちだけど、本当の意味でのブランドのデザインの話をしないと。チームがどうあるべきかを考えるのと、ユニフォームにつけるマークの大きさ云々とは全然違う話で、どっちかといえば前者が大切。

ーその都市にマッチするデザインを、というのは目から鱗でした。

清永:結局、地元のひとと仲良くならないと応援されないんです。部外者がぱっと来てやってもダメ。ぼくらも福岡に行って仲良くなって、醤油も貸してくれるようになって初めて「KIYONAGA&CO.」をオススメしてくれて、成り立っていくようになった。そもそも、ぼくの場合は店を出すのが目的ではなく、福岡との二拠点生活が先でしたから。福岡で1年経ち、みんなと仲良くしていくなかで、この街でこのひと達と…アートでいえばKYNEくんとか、彼らと面白いことをやりたくて、きっかけとなる箱があったらいいなと流れで店をはじめたわけ。すごい綺麗事に聞こえるかもしれないけど(笑)。

鳥羽:持ち上げるわけじゃないけど、キヨさんのそういう文脈はあまり知られてなかったんじゃないかな。そういうところがこの対談でちょっとでも伝わったらうれしい。あと、キヨさんは本当に細やかに気を使う方だから、それもブランドを長く続けられた理由のひとつだと思う。大雑把な人は、周りとのコミュニケーションをないがしろにしちゃうから。

ー先ほどのお店とその場所との関係性の話でいえば、食材、ひいては食も地方との関係が深いですよね。

鳥羽:今年「Hotel’s」の「Tabi」という企画で、旅先で料理してみたんです。地方になにを提供できるか考えたとき、中に入るというのもひとつなんですけど、一定の距離感を持ってその地域の価値をちゃんと伝えていくというやり方もあるなあと。佐賀県とも取り組みをしていますが、鳥羽周作の店ですというよりは、佐賀のひとたちがやる店をサポートしていくような。キヨさんみたいな、クリエイティブディレクター的な関わり方ですよね。地方で象徴的だったこともあって、人生が変わるくらいおいしいレンコンをつくっているひとたち自身が、そのレンコンの価値をわかっていないんですよね。あまりにもったいない、その状況を変えたいなあと。

清永:対海外の日本もそうだし、対国内の九州もそうだけど、持ってくるばかりで、持っていくひとが誰もいないんだよね。都会を田舎に売るんじゃなくて、田舎を都会に売れと思う。

鳥羽:本当にその通り。そのはしりとしてディスティネーションレストランというものはあるんですけど、都会のひと目当てにやっているコンテンツだから、地方から外に出ていって自立することを助けてはくれない。ぼくらは、地方のひとたちが自立することのお手伝いを一緒にやりたいんですよね。食の世界でそういうことを短期的じゃなくて、中長期で実現したいと考えています。

清永:見るひとが見たら、地方は宝の山だからね。

ーいい話ですね。

鳥羽:目の前のことに追われてるひとはその先の話が絶対出てこないけど、キヨさんみたいに余裕があるひとは視野が広くて。それを見習いぼくも“ブラインドタッチ”を始めて、目の前のことよりも5年先を見るようにしました。毎日の売り上げよりも5年後にこうありたいからどうするか…、社長がビジョンを語るってそういう話だと思う。ここをがんばれば、あとひとつ取れたでしょ、という話じゃない。服もそうで、ファッションの“点”として見てしまうと流行り廃りの話になっちゃうけど、カルチャーとして見ると文脈になる。これは料理も一緒で、アラカルトは点だけど、コースという線になったときに初めて文脈が現れて、体験価値も高くなるんです。

このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事#TBSJ

もっと見る