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FEATURE
hobo × TRUCK 異業種間で長年続くコラボレーションの真髄とは。

hobo × TRUCK
異業種間で長年続くコラボレーションの真髄とは。

互いのものづくりの理念に共鳴することで、スタートしたコラボレーションも5回目を迎えた〈hobo(ホーボー)〉と〈TRUCK(トラック)〉。異業種間で長年に渡って取り組みが続く秘訣はなんなのか。〈hobo〉のデザイナー朝倉秀樹さんと〈TRUCK〉代表の黄瀬徳彦さんによる対談から浮かび上がってきたのは、愚直なまでの信念、想い、そういったハートフルな部分の重要性でした。

PROFILE

朝倉秀樹

1976年生まれ。セレクトショップ「ネペンテス(NEPENTHES)」にて販売や企画を務める。同社を退社後、2005年に〈hobo〉のデザイナーに就任。バッグを筆頭にアクセサリーやフットウェアなど、毎シーズンさまざまなプロダクトをデザインしている。
https://thathobo.com/

PROFILE

黄瀬徳彦

1968年大阪府生まれ。高校卒業後、長野県松本技術専門校木工科で家具作りを学ぶ。その後、大阪で椅子を作る木工所で働き、1997年に唐津裕美とともに〈TRUCK〉を設立。2009年現在の大阪市旭区に移転。現在に至るまで、徹底的にディテールと品質にこだわった唯一無二の家具を生み出している。
https://www.truck-furniture.co.jp/

ーこうしてお二人でしっかりと対談されたことって、過去にあるんですか?

朝倉: 自社のもので少し発信したくらいで、メディアでとなると初めてかもしれないです。

ーコラボレーションのきっかけというか、お二人が繋がった経緯としては、元々黄瀬さんが〈hobo〉のアイテムを愛用されていたんですよね。

黄瀬: そうですね。最初にリュックを買わせてもらったんですけど、それをもうとにかく使い倒して。海外に行くときなんかも絶対使ってましたね。けど、その後一回廃盤になりましたよね?

朝倉: そうなんです。

黄瀬: それを復刻してもらって、うちのお店で売らせてもらったんです。

朝倉: ありがたい話ですよね。僕としては、全然ジャンルが違うというか、まさか家具屋さんと一緒になにか取り組みができるなんて思ってなかったので。

左が最初に黄瀬さんが購入した「アライテント(ARAI TENT)」社で生産していたモデル。そして右が〈TRUCK〉との別注用試作サンプル。いずれも、ものすごく使い込まれていて、ともに旅した距離や年月が深く刻まれている。

朝倉:それで、とにかく僕はテンションが上がっちゃって。

ー当時、朝倉さんは〈TRUCK〉のものをなにか持っていたんですか?

朝倉:子供用の小さいオットマンを人にいただいて、それを持ってました。あとはクッションとか。それで最初は仕入れをしてもらって、その次に別注をしていただけることになって。

黄瀬:あ、そうか。

朝倉:そのシリーズで、形違いで色を何色かで別注して、そこからそれが家具に入っていくという流れでした。

ーちなみに、黄瀬さんは〈hobo〉のバックパックはどこで買ったんですか?

朝倉:たぶん「vendor(ベンダー)」ですよね。

黄瀬:はい。最初に「vendor」に行き出したのは、(料理家の)ケンタロウがハマったからなんです。そのうちに展示会にも行くようになったりして。彼は一回ハマったらめっちゃいくから。

ーどの辺にぐっときたんですか?

黄瀬:なんでしょうね。とにかく使っててすごく調子がよくて。見た目がそんなにドカンとしてないんですけど、意外と量が入るんですよね。あとポケットですね。よくあるじゃないですか、鞄でも服でも色々ポケットついてるけどそこまで使わない、みたいな。逆に、ありすぎて嬉しいと思いながら、どこに何を入れたかがわからなくなったり。

ーありますよね。

黄瀬:けど、あのリュックは全部のポケットをまんべんなく使うんですよ。海外行くときも機内持ち込み用はいつもあれで。うん、調子いいんですよね。

ー機能とデザインの関係性って難しいですよね。おっしゃるように多機能であればいいというものでもないと思うので。

黄瀬:リュックも気になるものがあったら色々買ってきたんですけど、定着してずっと使ってるやつっていったら、もうこれだけですね。 ほかのものはそのうちに積み重なって置かれてしまう。秀逸ですよね、大好き。

朝倉:実は、また作ってます。

黄瀬:あ、本当?

朝倉:はい。でも、あそこの工場が使えなくなっちゃったので、別のところであの感じをやりたいなと。もちろんちょっとだけアップデートをして。

黄瀬:ちなみにどこをアップデートするの?

朝倉:外面は基本変えないで、ショルダーハーネス、背面パッド、中にちょっとだけポケットつける感じにしようかなと。

黄瀬:ひとつもしリクエストができるなら、上のファスナーの向きをちゃんと整えてあげないと、シュッと開けられないところかな。

朝倉:あー、そうですね、カブセがあるからやりづらいところではありますね。

黄瀬:けど本当、それくらい。 あとリュックの横のポケットは、そう思って作ってないだろうけど、僕はそこに500mlのペットボトルを入れるんです。そのときに先っちょの色が見えてたら嫌なんですけど、あれは見えなくてちょうどいい。

ーそういう細かいところ、大事ですよね。

黄瀬:うん、大事。

朝倉:僕はとにかく黄瀬さんのところで作ってるアイテムに興味があったんで、ローバーチェア、〈TRUCK〉でいうところの「TSP FOLDING LOW CHAIR」を、素材を変えてやりたいっていうお話をさせてもらって。

ー最初に切り出したときは、やっぱり緊張しましたか?

朝倉:いやもう、つねにそういう気持ちですよ(笑)。

ーですよね。だって〈TRUCK〉となにか作るって、おそらく並大抵のことではないと思うんです。

黄瀬:やっぱり自分が使うものじゃなかったら、そんなの別に持ちたくないって思ってしまうんですよね。それだったらやる意味ないというか、やれない。だからいつもごめんねって思いながら、断ったりすることもあるんですけど、果敢に何回も話を持ってきてもらったりすると、それだけ言うんだったらやっぱりそこに想いがあるのかな、って思うじゃないですか。

ーそれはそうですね。

黄瀬:で、実際に作ってみたら、自分でもめちゃくちゃよく使うし、結果よかったということもあるので。ただ、なんでもかんでもやって自分が興味ないようなアイテムを増やしたいわけではないので。だから多分うるさいやつだと思うんですよ、僕は。

朝倉:けど、それが黄瀬さんのベースじゃないですか。だからそこを簡単に崩せるとも僕は思ってなくて。ただ、やっぱり僕の思いもどんどんぶつけていかないと理解してもらえないので、毎回毎回いろいろな話をさせてもらってますね。

ー最初の「TSP FOLDING LOW CHAIR」のコラボモデルは、生地を〈hobo〉から提案したわけですよね。

朝倉:はい。当時、自分がインラインでよく使ってた、ウォータープルーフで毛足が長いレザーがあって。

黄瀬:それが最高なんです。その椅子、自分でいつも使ってます。

朝倉:実際、水もある程度は弾いてくれますし、使い勝手もいいんですけど、その毛足の長い感じとかを含めて、勝手に〈TRUCK〉の家具に合うなって思ってたんです。

ーわかります。雰囲気が調和しますよね。今回は初めてのキャンバス地となりました。

朝倉:これまでやってこなかったのは、〈TRUCK〉のインラインがキャンバスなので。ただ〈TRUCK〉の生地は少し加工を入れていて、ちょっと独特ですね。ありものを使っているわけではないので。

FOLDING CHAIR COTTON CANVAS COFFEE DYED ¥71,500 W55×D60×H64×SH21cm
ミリタリー由来のデザインと、低めの着座位置が目を引く「TSPローチェア」。

ー今回は、コーヒーの豆を再利用して染めたものになっています。

朝倉:最近〈hobo〉では染め物をやっているので、違いを出したいというところも含めて、そういう提案をさせてもらいました。なぜコーヒーかというのは、黄瀬さんは「Bird(バード)」をやられていますし、うちも別会社で「SIDEWALK COFFEE(サイドウォークコーヒー)」をやってるので、その出涸らしをうまく使えないかなと思ったんです。

ー〈TRUCK〉では過去に染め物で何かを作ったことはありますか?

黄瀬:なんかあったかな。。まぁまぁ簡単なものというか、お土産チックなトートバッグなんかを染めたことはあったと思いますけど、ちゃんと泥染めをやったりとか、そんなようなことはしてないと思います。お店で、柿渋染をした鞄を売ったことはありますけどね。その鞄がすごく好きだったので、そういう素材感でソファーを作ってみたいなと思ったことはありましたけど、結局家具に落とし込むということはしてません。

ー今回のコーヒー染め、ものすごく雰囲気いいですね。

黄瀬:最初に見たときより、なんかちょっとよくなった気がしますね。

朝倉:加工感ですか?

黄瀬:うんうん。

朝倉:ちょっと意識的に加工を強めにしてます。なので、これが安定して出せるかはちょっと不安なんですけど。

黄瀬:数を作ったら、本ちゃんがどうなるか、っていうことね。

朝倉:そうなんです。だから緊張感あります。

黄瀬:けど、そういうものですよね、染め物って。

ーこの「TSP FOLDING LOW CHAIR」の特徴としては、その名の通り、座面の低さですよね。

黄瀬:そうですね。最初は背の高いやつも作ってたんです。元々は、家の庭でイギリスの「ローバーチェア」の古いやつを、ずっと使ってて。ふと裏を見たら色々文字が書いてあって、紐解いていったらコベントリーというところで今でも作ってることがわかって、連絡をとったんです。けど、今新品で売ってるやつはなんか面白くなくて。なんていうかホームセンターで売ってるようなちゃちい感じだったので。

ーなるほど。

黄瀬:だから新品を仕入れて売りたいっていうより、パイプの色とかキャンバスを変えて作ってくれないかって頼んだら、いいよって。それで、2回イギリスに行って、1週間ぐらい工場に張り付いて、そのあと岡山でキャンバスを縫製して、後加工も入れてという感じで、めちゃくちゃ手間暇かけて、普通の背の高い方の椅子を作って売り出したんです。

朝倉:そうなんですね。

黄瀬:その次に焚き火用の椅子を作ろうということで、形を変えたやつを最初イギリスで作ってもらってたんです。

朝倉:背の低いやつですよね?

黄瀬:そう。結局、真似して作ることはできるけど、やっぱりそれは嫌だし、どうせだったら本物のところで作ってもらいたいということでやってもらってたんですけど、何回か作ってるうちに、ポンドと円の為替が変わって、どう考えても合わなくなってきたんです。

ー値段を上げざるをえないような感じになってしまったんですね。

黄瀬:だからもうイギリスで作るのはやめようと思って、日本で作れるように向こうの会社とも話をしていたんです。そしたら何を思ったか、別の会社からものすごく安い値段で、しかも元々グリーンしかなかったのに、茶系のものなんかも作られるようになっていて。どういう経緯でそういうことになったのかはわからないんですけど、それを見てもうやめようと思って、背の高い方は売るのをやめたんです。安いのと張り合うのもいやなので。

ーそういう経緯があったんですね。

黄瀬:背の低い、焚き火用のやつは自分が始めたことだからいいかということで、まだ作ってるんですけど。けど、今となっては低い方も色々出てますよね。

朝倉:ありますね。。

ー焚き火はこのプロジェクトを語るうえで重要なキーワードだと思うんですけど、黄瀬さんはいつから焚き火に親しまれているんですか?

黄瀬:もう小学校のときからですね。

ー年期が半端じゃないですね。

黄瀬:小さい頃住んでたところは、込み入った住宅街だったんですけど、家の近くに長年の計画で大型の道路を作るということで、工事のために軒並み立ち退きになったところがあったんです。そのめちゃくちゃ広い空き地が格好の遊び場で、小学校のときからそこで勝手にいろんなもので火を起こして遊んでたんです。

ーいまはなかなかそういう場所はないですもんね。

黄瀬:そこで火に親しんでました。その辺の石ころを焼いて布に包んで、通りを行くおばちゃんに「これカイロ」ってあげたりして(笑)。そのあと中一のときにキャンプ用のバーナーを買って。本当はガソリンのを買いたかったんですけど、店の人が「危ないから、こっちにしとき」ということで、灯油ので。

ーけど、中一でバーナーって早いですよね。

黄瀬:当時BMXにもハマってたので、近所の山を自転車担いで上がって下って。火を起こしてお湯沸かして、インスタントですけどコーヒーを飲んでクッキー食べて。そういう気分が好きだったんです。今みたいにアウトドアのブームではなかったですけどね。当時は『ビーパル』と、あと『アウトドア』っていうかっこいい大人の雑誌があって、それをいつも見てました。だから焚き火というか、火には昔から親しみがあったんです。

朝倉:なかなかそんなひといないですよね。

黄瀬:ここに引っ越してきてからはそこの庭で、当時はまだそんなに持っている人もいなかった〈スノーピーク(Snow Peak)〉の焚き火台を使って、工場から出る木端を燃やしてました。

ー家具屋だったら、木端はたくさん出ますもんね。

黄瀬:ちょうどその頃、なんでかスコッチにハマってて、焚き火のスモーキーな感じと、スコッチのスモーキーさがめっちゃ合うなということで「焚き火BAR」なんて言ってね。

ー朝倉さんは焚き火はいかがですか?

朝倉:僕も外遊びは好きなので、普通に友達とキャンプに行ったときは、だいたい焚き火やりますね。あと田舎が富山なので、そっちだとどこでも焚き火はできるような感じでした。小さい頃は、お手伝いでこれ燃やしておいて、みたいなこともよくやってましたね。

ーなるほど。

朝倉:東京に来てからはそういう環境ってなかなかないので、そんなに頻繁にはできてないですけど。

ー今は焚き火流行ってますよね。

黄瀬:そうですね。けど、みんなやったら、それは好きになるとは思うんです。

ー朝倉さんは、キャンプに行ったりすることで、こういうのがあったらいいなという感じで、商品の企画、開発までたどり着くことはあるんですか?

朝倉:キャンプに向けたということではないですが、そこにも繋がるものづくりはあると思います。

朝倉:黄瀬さんと作っている椅子は、そういうところに持っていけるギアのひとつという感覚でやらせてもらってますけど、それ以外でキャンプにまつわるものを作るという考え方はないですね。

ーそれは、あえてですか?

朝倉:あえてというか、餅は餅屋じゃないですけど、そこは僕の入るところじゃないかなって。やっぱり僕はもう少し街寄りというか、街にいる人が持つものを作ってるので。

ーなるほど。それでいうと黄瀬さんに聞きたいことがあって、それだけ焚き火に長年親しまれていると、自分で焚き火台を作りたいなと思ったことはありませんか?

黄瀬:一回、ちょっとざわついてやりかけたことはあったんですけど、そう言ってるうちにいろんなブランドからたくさん出てきたじゃないですか。

ーそうですね、いまはたくさん種類があります。

黄瀬:そうなると「それやったらもうええわ」ってすぐ思ってしまうんです。

ーいやぁ〈TRUCK〉の焚き火台、めちゃくちゃ欲しいですけどね。。

黄瀬:今はキャンプがすごく流行ってますけど、昔はキャンプというか、僕がやってたのは野宿だったわけですよ。オートバイにテントとシュラフをくくりつけてツーリングに行き、夕方になったら山に入って行って、適当な場所を見つけて野宿して。それがいいか悪いかはおいておいてね。だからキャンプ場に行くという発想がないんです。キャンプ場って駐車場がバーってなってるじゃないですか。あれがあんまり好きじゃなくて。

ーなるほど。

黄瀬:何かがどっかで盛り上がったら、そこにあんまり近づきたくないって思ってしまうんですよね。だからあんまりキャンプ場とかも行きたくないし、作りたいなって思うものも色々あったんですけど、「まぁいいや」って。今回、朝倉さんから話があって、いろいろ作りましたけど、基本後追いするようなものは作りたくないんです。

朝倉:ちなみに僕は毎回めちゃくちゃ提案するんです。こういうものをやりたい、ああいうものをやりたいって。けど、当然全部やれるわけもなく。それでも毎回いろいろな提案はしていて。

黄瀬:そう、だからよくへこたれずに言ってきてくれるなって(笑)。

TOTE BAG COTTON CANVAS COFFEE DYED ¥35,200 W42×D18×H42cm 41L
太番手のステッチを使い、程よいマチと強度を備えたトートバッグ。「SIDEWALK COFFEE」と「Bird」の抽出後の豆を再利用したコーヒー染め。

ー〈TRUCK〉と〈hobo〉のお付き合いも、もう随分長くなりましたよね。そもそも〈TRUCK〉が1つのブランドとこうして長くコラボレーションし続けることって、珍しくないですか?

黄瀬:本当に貴重だと思います。他のキャンプ道具系のところからも、いろいろ話はくるんですけど、そんなに安くは請けないし結構断ってるんです。よっぽど意味があったらやりますけど、そもそもこうして〈hobo〉とやってますしね。

ーなぜこれだけコラボレーションが続いてるんでしょうね。

黄瀬:今回朝倉さんからの希望で、初めて椅子にクッションをつけたんです。試作品を作って、改良点を見つけて、というやりとりを何回かやって、これでいいかと一度なりました。それで完成品がうちに届いたときに、座ってみたら頭をもたれたときの枕の感じ、当たり方がよくなかったんです。クッションの後ろ側を触ったら、ウレタンの角を感じたりして。ちょっとこれは違うなと。

ーはい。

黄瀬:すぐに朝倉さんとも話をしたんですけど、「それ、前に確認してもらったやつですよ」と。けど、自分で確認したものが本当に同じものだったとしたら、どれだけ目を瞑ってたのかな、っていうくらい違ったんです。そしたら数分後にうちのスタッフが「すみません、OKを出したやつは違うやつでした。勘違いしてました」って。そっちを触ってみたら、やっぱり違うんです。柔らかいし、丸みもあるし。けど朝倉さんからしたら、一回OKを出したのに、、って思ったと思うんです。けど僕としても家具屋としてダメだと思ってる状態では出したくないし。

ーあぁ。。

黄瀬:ただ、朝倉さんの方でもいついつ発売して、っていう計画があったと思うんです。

ー会社の事情みたいなものは、当然介在してきますよね。

黄瀬:そう。それで比較をするために、東京から改めてサンプルを送ってもらったんです。そしたら中に入ってるものは一緒だったんですけど、コーヒー染めをするにあたって、生地の締まり方が作る量によって違ったんです。で、結局どうなったかというと、作りかけてた生産を一回止めて、朝倉さんが中身を開けてカッターでひとつひとつ角をとってくれることになったんです。

朝倉:福井の工場に行ってきました(笑)。

黄瀬: もし〈TRUCK〉でそういうことが起きたら、もう一回巻き戻してやり直すんです。納得したものでしか売りたくないので。けどこういうのに他の人は慣れてないから、「時間もないし、今回はもうこれでお願いします」って言いそうなものなのに、それをちゃんと理解してくれて、自分でもう一回やり直しますって言ってくれる姿勢がすごく嬉しいなって思って。

ーなるほど。

黄瀬:そういうことをしてくれると信頼感が深まるというか。そこをゴリ押しでいかれたら「じゃぁもうやめましょう」って僕、すぐに言ってしまうと思うんです。

ー関係性が続く理由、よくわかりました。

朝倉:ものづくりではあるあるなんですけどね、こういうのは。けど、やっぱり納得した形で出したいとは僕も当然思ってるので。

ーで、今回めでたく朝倉さんの要望が通った、ということですね。

朝倉:そうですね。断られることも多いですけど、今回みたいに叶えさせてくれることもあるんです。このクッションの件は結構前からリクエストさせてもらってました。これまではお酒を飲んだりして眠くなって寝たいときに、頭にパイプがバーンって当たってたんです。あと、腰にクッションがあると全然違うじゃないですか。

黄瀬:まぁ、言ってる意味はわかるなと。あと、このサイズのテーブルに関しても、だいぶお願いされて。最初は作りたくないなって(笑)。元々はもっと小さくて、焚き火するときにスコッチを飲むために、グラスを脇に置きたいだけだったんですけど。それを高さを上げて、サイズを大きくしてくれって言われて。

ー口説いたわけですね。

朝倉:毎回口説いてるんです(笑)。

WOOD FOLDING LOW TABLE ¥63,800 W52×D59.5×H33cm
節や割れ、荒木の部分をあえてそのまま残したナラ無垢材天板を使用した、ゆったりとしたスペースのフォールディングローテーブル。

黄瀬:初めは「いやだ」って(笑)。キャンプ道具を作ってるというよりは、焚き火目的で作ってたから。世の中、キャンプ道具が溢れてるじゃないですか。

ーたしかに。

黄瀬:けど、「いやだ」って言いながら作ったら、結局自分もめちゃくちゃ使ってるっていう(笑)。

朝倉:

ー便利だったんですね(笑)。

黄瀬:こないだもキャンプに行ったときに、周りを見てたら、みんな火の周りにテーブル置いて、その高さで料理しながら食べてるんですよね。ああいうスタイルなんだなってわかって。

朝倉:そうなんです。この上にコンロを置いて調理したりとか、色々できてしまうと思うんです。

ー椅子のクッション、テーブルの高さ、大きさに秘められたストーリーというか、そういうものってやっぱり大事ですよね。

黄瀬:そうですね。大事なことだと思います。そういうことを感じたのは、アメリカにスティーブンっていう友達がいるんです。彼も家具とかバッグを作ってて、僕よりも15歳くらい若いんですけど、彼から学ぶことがすごくたくさんあって。その彼がやっぱりそういうストーリーを上手に語って、書いていて。

ースティーブン・ケン(Stephen Kenn)さん。ですね

黄瀬:彼が書いてるストーリーを、うちの若いスタッフがちゃんと読んでるんです。それっていいことですよね。そういう文章って誰も読まないんじゃないかって思ってたんだけど、意外とみんな読むんだなって。インスタも最初は写真だけのものだったのに、いつしかどんどん文章が長くなってきたと思うんです。

ーそうですね。文章メインで使ってる方もいますよね。

黄瀬:だからみんなストーリーとか意味を知りたいんだなと思うんです。わざと意味をつけるっていう話じゃなくて。思ってることを伝えてあげることで、みんなが喜んでくれるなら、やった方がいいなって。

朝倉:そうですね。

黄瀬:作ったときには色んな思いがあるわけで、自分もいっとき「BACKSTORIES」っていうのを書いてみたこともあって。で、書き出したら楽しくてね。

ーコーヒー染めにしても、ストーリーありきですもんね。

朝倉:まぁ、実際には染めるにあたっていろいろあるんですけどね。けど、意味はありますよね。

黄瀬:そうそう。捨ててたものが活かされるのって嬉しいしね。あと、焚き火してていつも思うんですけど、家具を作るときには木端が必ず出るわけですよ。だから毎日ゴミ屋さんが引取りに来て、捨ててるんです。

ーはい。

黄瀬:これはちょっと詩的というか、いい話すぎるんですけど、木が切られて製材されて板になってはるばる日本に来ますよね。で、木端として捨てられる部分のすぐ横は、テーブルになってお客さんのところに届いて、愛でられて長年生きていけるわけですけど、すぐ横にあった“彼”は捨てられてしまう。

朝倉:同じ木なのに。

黄瀬:そう。同じ木で一緒にここまで来たのに。けど、そこから拾われて焚き火で使われれば、暖かさとかそういう雰囲気を作れるわけで、それにはまた別の良さがあるじゃないですか。焚き火してると、なんかそんなことを思ってしまうんですよね。

ー毎日、木と向き合ってれば、そういうことを思いますよね。

黄瀬:木端でも、せめてそこで一花咲かせてもらえるなら、ある意味よかったねとか思いながらね。

ーその木端も楢(ナラ)とかですよね。高いですからね、そういう薪って(笑)。

朝倉:たしかに。めちゃめちゃいいやつですよね。

黄瀬:冬は「Bird」で薪のストーブを使ってるので、そこでも使ってます。 まぁ量は知れてるんですけど。あとは友達で薪ストーブ使ってるのも何人かいるので、彼らにもあげてます。

ーめちゃくちゃいいですね。羨ましいです(笑)。

黄瀬:あと「Bird」がオープンしたときから使ってる、油も人に上げてます。ドーナツを揚げる油が、一斗缶でたくさん出てくるんですけど、その廃油でクルマを走らせるんです。

朝倉:あぁ、いますよね。

ーバイオディーゼルですね。

黄瀬:どうせ捨てるやつをそうやって使ってもらって、クルマが走るってなんか嬉しいじゃないですか。

ーアパレルと飲食では、見える風景が違うと思うんですけど、やっぱりそういう取り組みには意義がありますよね。

朝倉:そうですね。〈hobo〉でもどうしても端材みたいなものは出るので、そういうのを掻き集めて、パッチワークのアイテムを作ったりしてます。そういうアイテムって温かみがあっていいなと思うんです。あとは、そういうものを作ることで、工場の職人さんにお仕事を振れたらいいなと思ってたんです。一時期やっぱりコロナで大変というのもあったんで。

ーなるほど。それは意義も意味もある取り組みですね。何よりプロダクトがかっこいい。

朝倉:ありがとうございます。今回の黄瀬さんとの取り組みでも、話をするなかでこういうストーリーみたいなものができてきた感じです。

ー両者の取り組みがなぜ長く続くのか、その理由がよくわかったような気がします。こういうバックストーリーを聞いた上で、プロダクトを見ると、また気持ちが変わってきますよね。今回はありがとうございました。

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