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トラウマへ光を射して窪塚洋介は前へ進む。 映画『Sin Clock』主演・窪塚洋介と牧監督インタビュー。
Synchronicity and Inevitability

トラウマへ光を射して窪塚洋介は前へ進む。
映画『Sin Clock』主演・窪塚洋介と牧監督インタビュー。

2月10日公開の映画『Sin Clock』は、この時代には珍しい、完全オリジナル脚本のもと、商業映画として作られました。うだつの上がらない若いタクシードライバー3人が、数奇な運命に導かれ結託し、一発逆転の壮大な計画を練ります。果たして最後に待つどんでん返しは、喜劇か悲劇か…。この作品の主演を務めたのは、ここ数年俳優活動が活発な窪塚洋介さん。“空気が淀んだ”と称する今回のキャラクターを演じるにあたり、振り返ったのはあの転落事故。それはトラウマとの対峙でもあります。そこから導き出した役者の特性とは? そしてそこまでして挑んだ作品を生み出した、牧賢治監督とはどんな人物なのでしょう?

  • Photo_Masashi Ura
  • Texit_Shinri Kobayashi
  • Edit_Yosuke Ishii
『Sin Clock』

高木は鬱憤を溜め込んでいた。理不尽な理由で会社をクビ。妻子から突きつけられた三下り半。ようやくありついたタクシードライバーの仕事では、客から蔑ろにされる最低の日々。 そんなある日、高木のもとにどん底の人生を変えるチャンスが舞い込んだ。“偶然”客として乗せた政治家・大谷が漏らした、数十億円もの価値を持つ“幻の絵画”につながる手がかり。 高木はサヴァン症候群により驚異的な記憶力を持つ番場、裏社会に通じる賭博狂の坂口ら、【3】という数字に奇妙な共通点を持つ同僚ドライバーと手を組み、欲に群がるヤクザ、アウトロー、闇ブローカー、ホステスらを巻き込んだ絵画強奪計画を画策。 たった一夜での人生逆転を賭けた“完璧なプラン”だったが、【3】という数字がもたらす想定外の“偶然の連鎖”に翻弄され、高木の思惑をはるかに超えた結末へと走り出していく。

役者・窪塚洋介の帰還。

PROFILE

窪塚洋介

1979年生まれ。神奈川県横須賀市出身。2000年『池袋ウエストゲートパーク』の怪演で注目され、2001年公開の映画『GO』で第25回日本アカデミー賞新人賞と史上最年少での最優秀主演男優賞を受賞し、以降は数々の映画に出演。トップランナーとして活躍中の2004年に、住んでいたマンション9Fから転落し、大きな怪我を負い、本人曰くキャリアのどん底を味わう。2017年映画『Silence-沈黙-』(マーティン・スコセッシ監督)でハリウッドデビューを果たし、物語の鍵となるキチジローを演じて強い印象を残した。ファッション業界での注目度も高く、デビュー以来数々のモデルとして起用される。現在は休止中だが、卍LINEとしてのアーティスト活動も世に知られるほか、YouTube配信やガラスやコスメのプロデュースなどその活動はさらに広がっている。
Instagram:@yosuke_kubozuka

ー今回の映画では、単独主演としては18年ぶりの作品とのことですが、手応えはどうでしたか?

窪塚:手応えはめちゃくちゃありました。ただ一番最初に言っておかなきゃいけないのは18年ぶりの単独主演映画だと思って撮影に臨んではいなかったということ。気づいてなかったんです。この間仕事はしていたし、ダブル主演のような作品もあったし、海外で撮影したりと割と役者業に戻していってる感じで。3年前に音楽活動を止めたくらいから、役者のほうが比重が大きいんです。

なので、宣伝活動が始まってから知って。18年ぶりの単独主演作品というのは、やっぱりパンチラインとしてキャッチーだから、使っているわけですけど、単独とはいえ、ズッコケ3人組の話なんで(笑)、単独というのはあんまり意識はしてないかな。

監督からもらった脚本を読んだときから読みごたえがあって、撮影はオール関西ロケで周りもほとんど関西人だったけど、そういう珍しい違和感みたいなものも楽しみつつ、妥協のない現場に手応えを日々感じてました。

ー今回演じたシンジは、監督が窪塚さんに当て書きされたそうですね。

窪塚:シンジの纏っている負の空気感や光が宿っていない目とか、そういうところまでアプローチできたような気がしています。何ていうか、根元から変わらないと空気感までは変わらないなと。そういうところまでいけたという、役者としての手応えも感じました。

ー窪塚さんに対するイメージとして、割と主人公らしいヒーローや強烈なキャラクターを演じられてきたことが多い印象です。だから、今回のような常識人でうだつの上がらない感じは逆に演じにくいのかな? と勝手に思ってました。

窪塚:シンジの空気がよどんでいてオーラがくすんで見える感じを、芝居として醸し出せるようにコントロールできれば、めっちゃ強いなと思ったんですよね。そういう体験を俺はめちゃくちゃしてるので。マンションから落っこちて怪我をして、本当に文字通り転落して、予想以上に困難なところから地味に時間をかけて復活してきたと思っているから。

あれは自殺じゃないし、本当にあの3日間くらい記憶がなくて起きたら病院だったんです。転落事故の後は、なかなか初めましての人とフラットに会えなかったし、あのことに触れないと変な空気になるし、言ったとてフラットにならないという、すごく惨めな苦しい時代があったので。その時の思いは土の中に埋めていたし、もう二度と見たくない、体験したくないものだったけど、このシンジ役をやるにあたって、これは絶対使うしかねーじゃんって、根っこにあるものを掘り起こしたんです、木の下には死体が埋まっているみたいな感覚で。

ーそれはハードですね。

窪塚:でも、よく言われる、どんな体験も芸の肥やしになるというのはもう本当にそうだなと。あの体験がこんなふうに時空を超えて役に立つ日が来るとは!? っていう感じでした。結果良かったなと。

ーそんなトラウマ的な思い出を、今回の役のために引っ張り出してきたというエピソードだけでもすごいお話です。

窪塚:そう思うと過去は変えられないと言うけど、変えられるぞと。過去にあった出来事そのものは変えられないけど、印象は変えられる。笑いのネタにしてきた“落ちました”という事実の他にまつわるリアルな感情とか、そういうものすらめっちゃ使えると。この仕事の中で活かすことで、新しい価値が生まれるから、それらが持つ意味が変わるんですよね。

INFORMATION

映画『Sin Clock』

劇場公開:2023年2月10日(金)
監督・脚本:牧賢治
エグゼクティブ・プロデューサー:藤田晋
キャスト:窪塚洋介、坂口涼太郎、葵 揚、橋本マナミ、田丸麻紀、Jin Dogg、長田庄平、般若、藤井誠士、風太郎、螢雪次朗
劇中曲:「GILA GILA feat. JP THE WAVY, YZERR」Awich(Universal Music LLC) 「Metchalo」Jinmenusagi
テーマソング:「赤曜日」「BODY ODD」GEZAN
配給:アスミック・エース ©2022 映画「Sin Clock」製作委員会
公式HP: SinClock.asmik-ace.co.jp
公式Twitter:@
SinClock_movie
公式Instagram:@sinclock_movie

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