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マジックナンバーを形づくる、中村竜という男の話。
SEE YOU IN THE WATER.

マジックナンバーを形づくる、中村竜という男の話。

プロサーファーであり、アパレルブランド〈マジックナンバー〉のディレクターを務める中村竜さん。早いもので、ブランドを立ち上げて今年で15周年を迎えました。5年続けるのも難しいと言われるアパレルの世界で、竜さんはいかにして時代の波に乗り、ブランドを成長させ、いまに至るのか。彼の過去と現在に見る、〈マジックナンバー〉への思いと、その輪郭。

  • Photo_Sohei Kabe
  • Surf Shot_Nao Miyake
  • Text_Keisuke Kimura
  • Edit_Hideki Shibayama

PROFILE

中村竜
サーファー

1976年生まれ、鎌倉市出身。1994年に俳優デビューし数々のドラマや映画に携わる。一方で、2000年からプロサーファーとして活動し、2008年からは自身のブランド〈マジックナンバー〉のディレクターを務める。二児の父親。趣味はバイク、素潜り、スノーボード、車。

また海で会おう。

鎌倉生まれ、鎌倉育ち、鎌倉在住。生粋の鎌倉人である中村竜さん(以下、竜さん)。

この日、待ち合わせた湘南の海は、サーファーには物足りないベタ凪。「今日は撮影がなかったら来てないね」と竜さんは笑いながら話します。いつもは波を事前にチェックして、少しでも乗れそうであれば、時間が許す限り波に乗る。過去には俳優として一線で活躍し、いまもブランドのディレクターで社長でもあるけど「軸足はずっとサーフィン」だといいます。

そんな彼が立ち上げたブランドが〈マジックナンバー〉。そのブランド名には、いろんな思いが含まれているんです。

「まずは中学生の頃にDe La Soulの『The Magic Number』っていう曲が好きだったのと(笑)、サーフボードのディメンションでもマジックナンバーというものがあるんです。それと、自分が、結構数字にまつわる人生で、なにか大きな出来事があると、その数字が関係している場合が多くて。幸運を引き寄せる意味も込めて、〈マジックナンバー〉をブランド名にしたんです」

ちなみに何番? という問いには、「それはちょっとね」と煙に巻く。

サーフィンと同じように、もともと服も大好きだった竜さん。30年以上前、鎌倉のサーフショップで出合ったブランドが、彼を服の世界へと導くことに。

「いまみたく流行るもっと前に、その店で〈ステューシー〉が置かれてたんですよ。当時は中1でしたが、服もフォントも、ショーンの生き様も、めちゃくちゃ響いちゃって。しかも服はシャープなのにユルいでしょ? きっとそれが、服を好きになったきっかけです」

そこから月日を重ね、俳優兼プロサーファーとして活動していたころ、いくつかのブランドのディレクションをすることに。そのなかで不自由さを感じ、自身のブランド〈マジックナンバー〉を立ち上げたのです。

「やっぱり、そこも自分の会社じゃないから、いろんな制約があったんですよね。感覚的に『いま作らなきゃ』って思ったとしても、数年後になっちゃったりして。そういうことを自由にやるためには、やっぱり自分でリスクを背負ってやるしかないなって。で、〈マジックナンバー〉を立ち上げたんです」

それから15年。ブランドはシーズンを経るごとに円熟味を増し、いまでは多くの人が認知するブランドになりました。

この日、竜さんが着ていた〈マジックナンバー〉のTシャツにプリントされた「SEE YOU IN THE WATER XV」は、ブランド15周年を機に採用された新たなタグライン。意味は「海でまた会おう」。

「サーファーって、この言葉を結構使うんですよ。 アメリカだと、本当によく使われていて。コロナ禍でステイホームだった時期も、海だと関係なかったから、みんな『SEE YOU IN THE WATER』って言って別れてね。響きもいいでしょ?」

タグラインと共に、ブランドのロゴも同時に刷新されました。その話は記事の後半で。

「波もないから、寺にでも行ってみます?」と、竜さんが次に案内してくれたのは、切り開かれた山の上にある妙本寺。麓には、竜さんが通っていた幼稚園があり、幼少期から妙本寺は竜さんの遊び場でした。いまも週に1度は訪れ、自分の心をニュートラルにするそう。

「鎌倉駅からすごく近いけど、ここに入ると一気に空気が変わりません? いつもここへフラっと来て、ボーっとするんです。そして気持ちをニュートラルにする。〈マジックナンバー〉と関係あるかって言われたらわからないけど、ここで学んだことは完全に血と骨になっているし、間違いなくぼくのルーツです」

境内を歩いていると「モデルっぷりを見に来た」と、犬を散歩していた女性があらわれる。実は彼女、当時、中一だった竜さんを初めてサーフィンへと連れ出した張本人で、竜さんのサーフィンの先生でもあります。

「かずよ姉ちゃんって言うんですけど、うちの両親が可愛がってて、いつも家に来てたんですよ。そこから逆に俺のことを可愛がってくれて、中一のときに『海行くよ』って連れて行かれたらサーフボードが用意してあって、そこで初めてサーフィンに触れたんです」

鎌倉といえば一大観光地で、多くの人で賑わう場所でもあるけど、竜さんがいる鎌倉コミュニティは、人と人との繋がりが確かにあって、スローで、メローで、ピースな鎌倉。

先生との別れ際のあいさつは、もちろん「また、海で」。

INFORMATION

マジックナンバー

Instagram:@magicnumberjp
https://magicnumber-jp.com/

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