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「悲しみ」という記憶を追求して。映画『aftersun/アフターサン』シャーロット・ウェルズ監督インタビュー
on the edge of sorrow

「悲しみ」という記憶を追求して。映画『aftersun/アフターサン』シャーロット・ウェルズ監督インタビュー

決していい思い出にはまとめられない親子の記憶。他人以上の距離感は愛を生むこともあれば、苦しめることもある。喜びも悲しみも、まとめられない時間の連なりから原体験に潜むものを描く映画『aftersun/アフターサン』(以下『アフターサン』)。離れ離れに暮らす父娘の旅行、垣間見る父の苦悩に娘が思うこと。「脚本を書きながら、美しい記憶をたくさん思い出しましたが、今となってはどこかに旅立っていったのかもしれません」。はにかみながら語るシャーロット・ウェルズ監督に家族の話を。そして、自身と対峙しながら映画『少女邂逅』を完成させ、本作にコメントも寄せている枝優花監督の写真、インタビューも交えたスペシャル版をお届けします。

  • Photo_Yuka Eda
  • Text_Yoko Hasada
  • Edit_Yuri Sudo

脚本を書きながら、美しい記憶をたくさん思い出した。

─監督にとって、父親はどのような存在だったのでしょうか?

ウェルズ: カラムと似ているところもありました。あたたかくて、愛情にあふれていて、クリエイティブで、私にとってすごく大切な存在です。

─お父さまとの美しい記憶、永遠のように思える一瞬があれば教えていただきたいです。

ウェルズ: おもしろい質問ですね。そうですね……カラムが腕を骨折するシーンは、多くの記者から「ソフィア・コッポラ監督の映画『SOMEWHERE』のオマージュではないか」と考察されたのですが、そんな芸術的な意図ではありませんでした。

─父親の愛らしいダメっぷりを表現する意味で、酔って階段から落ちて骨折する姿は象徴的なシーンでしたよね。

ウェルズ: 実際、私の父も手首を骨折したことがあったんです。階段から落ちたのか、降りている途中で折ったのか、そこは考えれば考えるほどわからなくなっていきました。それが記憶というものですよね。あまりに信頼できないし、常に揺らいでいるものだと、今回の作品をつくっていて感じました。はっきりとした記憶もあるでしょうけれど、奥にある記憶というものはぼんやりしているものなんだと思います。脚本を書きながら、美しい記憶をたくさん思い出しましたが、今となってはどこかに旅立っていったのかもしれません。

INFORMATION

映画『aftersun/アフターサン』

監督・脚本:シャーロット・ウェルズ
出演:ポール・メスカル、フランキー・コリオ、セリア・ロールソン・ホール
プロデューサー:アデル・ロマンスキー、エイミー・ジャクソン、バリー・ジェンキンス、マーク・セリアク
キャスティング・ディレクター:ルーシー・パーディー
プロダクションデザイナー:ビラー・トゥラン
衣装デザイナー:フランク・ギャラチャー
音楽:オリヴァー・コーツ
サウンドデザイナー:ヨヴァン・アイデル
編集:ブレア・マックレンドン
撮影監督:グレゴリー・オーク
製作総指揮:エヴァ・イエーツ、リジー・フランク、キーラン・ハニガン、ティム・ヘディントン、リア・ブーマン
原題:aftersun/2022年/イギリス・アメリカ/カラー/ビスタ/5.1ch/101 分
字幕翻訳:松浦美奈
映倫:G
© Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022
後援:ブリティッシュ・カウンシル
配給:ハピネットファントム・スタジオ

公式サイト
公式ツイッター

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