ニートにも影響を及ぼしたチノパンツ、トンプソン。
―販売員とPRを合わせて7年間勤務した〈ブルックス ブラザーズ〉を退社後、自身のパンツ専業ブランド〈ニート〉を立ち上げるわけですが、そこに〈ブルックス ブラザーズ〉からの影響はありましたか?
大いにありましたね。おそらく〈ブルックス ブラザーズ〉ではなく、セレクトショップで働いていたとしたら、〈ニート〉は立ち上げてないかもしれないです。

―それはなぜですか?
〈ブルックス ブラザーズ〉時代、店頭に立つときはジャケットを着てタイドアップするし、ドレッシーでトラッドなスタイルでした。でも、退社した後、自分のライフスタイルに〈ブルックス ブラザーズ〉の服が合わなくなってきたんです。
ー〈ブルックス ブラザーズ〉のようなブランドで働いていない限り、普段からタイドアップすることはあまりないですよね。
そうなんですよ。退社してからカジュアルな服装をするとき、例えば、足元に〈ニューバランス〉や〈ビルケンシュトック〉のサンダルを履くと、どんなパンツを合わせていいかが分からなくなったし、穿きたいパンツも見当たらなくて。
そこで、パンツを自分でつくろうと思って立ち上げたのが〈ニート〉だったんです。セレクトショップにいたら、もっと色々なブランドを知っていただろうし、試せたから、そういう思考にはならなかったのかなと思います。

―そこから〈ニート〉はあれよあれよという間に人気ブランドに上り詰めていくわけですが、今回、〈ブルックス ブラザーズ〉とはどういった経緯でコラボをするようになったんですか?
実は〈ブルックス ブラザーズ〉から直接話が来たわけではなく、「ユナイテッドアローズ」からお話をいただいたんです。「〈ニート〉とどこかのコラボで何か面白いことができませんか?」と。いくつか組み先の候補はあったんですけど、みんな“〈ブルックス ブラザーズ〉とやりたい!”となり、「ユナイテッドアローズ」に手助けしてもらって、なんとかコラボが決まりました。もちろん個人では絶対実現することのない話だったので、ありがたかったです。
―コラボを進めていくうえで、苦労した部分はありましたか?
実はこの企画は1年以上前から動いていたんですけど、コラボが決まるまでに結構時間がかかりましたね。
―今回つくられたチノパンは、「トンプソン」というモデルがべースになったとか。
〈ブルックス ブラザーズ〉とコラボするなら、自分にしかできないことをやりたかった。だから、昔ぼくが愛用していた「トンプソン」の復刻をやりたいと伝えました。いまは販売していないモデルだから、あまり知られていないモデルだと思うんですけど、だからこそ今回のコラボで採用する意味があるのかなと。多分「トンプソン」を選ぶのは、ぼくぐらいだと思います(笑)。

2000年代に販売されていた〈ブルックス ブラザーズ〉の「トンプソン」。深めの2タックや太めのシルエットなど、〈ニート〉のパンツに影響を与えたことが窺える。

―そんな「トンプソン」はどういったモデルだったんですか?
当時、〈ブルックス ブラザーズ〉では、ノータックのモデルは「クラーク」っていう風にそれぞれのパンツに人の名前がついていました。その中でも、2タック入りのストレートシルエットのパンツが「トンプソン」だったんです。たしか、自分が〈ブルックス ブラザーズ〉に入社した年かその2,3年後までは展開していたモデルですね。
―お話を聞く限り、「トンプソン」が〈ニート〉のパンツに及ぼした影響は大きそうですね。
そうなんです。販売員時代の“Mr.ブルックスブラザーズ”と呼ばれた店長さんが教えてくれたのがまさに、プリーツの入ったシルエットの太いパンツでした。そこからずっと自分のルーツにあるし、もちろん〈ニート〉のパンツも影響を受けていますね。