一周まわって辿り着いたポップミュージックへの道。




ーまずは本日のライブ、お疲れ様でした。本当に最高でした!
UA:ありがとうございます。
ー今回と同じバンドメンバーでいうと、昨年、渋谷公会堂(LINE CUBE SHIBUYA)で行われた25周年のライブを見たときよりも、さらにエモーショナルな印象を受けました。
UA:あのときは、このバンド編成での演奏が初で、すべてが実験だったし、ちょっと緊張してたっていうかね。25周年のアニバーサリーだと思って、気負ってる部分もありましたし。そこからいまは、本当にリラックスできるようになってきて。
ー円熟味も増してきたように感じます。
UA:いま、自分のなかで“ポップ”っていうのが改めてキーワードになっているんですよね。『Are U Romantic?』を作る前は、マニアックになる傾向を続けてしまっていたんだけど、そこは一旦卒業できちゃって。ただ、そういう自分のために音楽をやっていた期間があったおかげで、いい意味でラクになったというかね。
それと、日本から離れてカナダで暮らすようになってから、ポップミュージックに改めて向き合うようになったんです。もちろん、消費されるポップミュージックもあるわけなんだけど、本当のポップってなんだろうと思って。いちばん難しいじゃんって思って。でも、そのことに取り組むことにすごいワクワクした自分がいて。

ー『お茶』や『微熱』もそうですけど、またポップな曲を歌うようになって、どういう心境の変化があったのかなと気になっていたんです。
UA:『情熱』が多くの方から愛されて、たぶんこれまでいちばん多く歌っているんですけど、一時期、 エクスペリメンタルな方に向かっていたときに『情熱』を歌うことが苦痛に感じていたこともあったんです。だから歌わない時期も長くあって。ただ、『情熱』という決まったコードの中で、決まったことをやる時でさえも、インプルーブの感覚でやることができるんだなって、あるときに気が付いたんですね。ただリピートしてるんじゃなくて、いまはある種、毎回チャレンジするような感覚になれてるんですよね。
エクスペリメンタルなことだけが刺激的ってわけではないこともわかってきて。ただ、そういう時期が私には必要だったんです。最初がポップなところからはじまったので、一旦そこから外れないと、私はいまの感覚までこれてなかった。あのままやり続けていたら、音楽を続けられなかったと思うんです。


ーエクスペリメンタルやインプルーブを大事にしてるから、同じ『情熱』でも2つとして同じステージはないということですね。
UA:実際そうなんですよ。同じコードであっても、調子が違えば、気分も違うわけだから。だから心持ちひとつなんだなって、何事もね。例えばほら、茶道とか華道も型が決まってるじゃない。なんでそんな同じことを何回もやるんだっていう見方もできるけど、違うんだよね。今日のお茶の味と、昨日のお茶とは絶対に違うはずだから。反復してきたからこその個性が生まれてるというか。わざとらしい即席の個性じゃなくてね。それは私の『情熱』にもあると思うの。