余白があるからつくれる。
風通しのよさは、この会社の個性のひとつ。取材当日も、社内スタッフでさえ見たことがないひとがデスクでパソコンを開いて仕事をしていました。声をかけると、どうやらギャラリーで次回開催されるアーティストとのこと。知らないひとが何食わぬ顔で働いている社内風景…。どうやら風通しはよすぎるくらい。
それもこれも、この会社が一番大切にしているのは、一にも二にも、働くひとだから。
たとえば、若い子がスタッフとして加入しても、年齢や経歴、バックグラウンドはまったく関係がなく、アイデアがあるなら聞かせてくれというスタンスを全員が持っているそう。意見が言いやすい雰囲気は、この会社に確実に流れています。
そもそも意見交換や議論はいたるところで起きています。ただ、フリーデスクなので、デスク周りに自分の内面を表現するような物や本を置くことはできません。となれば、そのひとがどんな趣味嗜好や思考を持っているかは、話さないとわからない。だからこそ、いろいろなひとと交流することがシステムとして組み込まれているのです。
働き方も実に自由。社員のことを信頼しているので、口うるさく言うことはほとんどありません。聞けば、プロジェクトごとに何時間働いたかのタイムシートを記入するそうですが、それは働きすぎていないかをチェックするためのもの。もし働きすぎていたら、休みを取るように通告するのだとか。それもこれも、プライベートから刺激を得ることで、いい発想が生まれると考えているから。そんな余白を大切にする姿勢が、この会社の一捻りあるクリエイティブを生み出しているのかもしれません。いやいや、この会社は桃源郷ですか。
オフィスにはバースペースがあり、世界中のスタッフから持ち寄られたお土産が並びます。コーヒーなどのドリンクはフリーで、昼時になれば食べ物を、夜にはビールを持ち寄る、なんてことも。そのまま、クラブやバーに遊びに行くこともあって、DJとして活動しているひともいるんだとか。
ここまで聞くと、バカ明るくて、コミュニケーション上手なひとしか働いていないんじゃないかと思ってしまうひともいるでしょうが、そうではありません。内気なスタッフもいれば、自分からバンバン話しかけるおしゃべり好きな人もいて、それを両者が受け入れているのです。あくまで会社としては、お互いの文化や個性を尊重し、認め合えて、あとは閉じずにいてくれさえすれば、いいのだとか。なんだかこれって、あらゆるところで起きている“分断”の防止策に聞こえてきませんか。