シンプルなデザインの中にあるユーザー目線の便利機能。
ー実際におすすめのアイテムをご紹介いただきながら、デザイン、機能、素材について教えてください。
生本:一番オーセンティックなものだと「シティ」のデイパックですね。デザインは本当にシンプルで使いやすいものにしているんですが、随所に便利な機能を盛り込んでいるんです。
例えば、電車に乗るときなど、バッグを下ろして体の前に持ってくるじゃないですか。そうしたときに電車が混んでいると、バッグの外側や内側に付いている小さなポケットが意外と使いづらいなと思っていたんです。

だから、メインの収納口のトップに小さなポケットを設けて小物を出し入れしやすいようにしました。そのポケットの中に、さらにセキュリティの高いメッシュポケットをつくってキーなどを入れられるようにしています。
あとは近年ノートPCを持ち歩くことが当たり前になったので、専用の収納スペースもつくりました。ここにはパソコンはもちろん、アダプタなどの周辺機器も入れられるポケットがあります。
ー先ほど話していた、時代に合わせた機能がそこにあると。

生本:それだけじゃないんです。ハーネスというベルトの部分は、背負いやすいように体のラインに合わせてカーブさせたり、背中に当たるところは蒸れないようにメッシュ素材を採用したり、構造的な部分にもこだわっています。
ー生地はどういったものを使っているんですか?

生本:これは「ベンタイル」と呼ばれるもので、かつてイギリス軍の服にも採用されていた生地なんです。極限まで生地を打ち込んで織密度を上げることで、コットンなのに高い耐水性を持たせているんですよ。
ー天然繊維でつくられた機能素材ということですね。
生本:やっぱりコットンは使っていくうちに味わい深くなっていきます。ユーザーの方々にも、そうした変化を楽しんでもらえるものにしたかったんです。
ー「クロスバイク」というカテゴリーがあるのがユニークだなと思いました。
生本:こちらは「スペクトラ」という、最高強度を持つ繊維で織られたリップストップ生地を採用しています。地球上で最も強いとされる素材で引き裂き強度があるんです。サンプルをつくる段階で工場から「裁断がしづらい」と言われたほどです(笑)。撥水性も高く、雨でも使えます。
ー自転車との親和性がありそうですね。

生本:そうですね。ショルダーベルトは通常、片側からしか長さを調整できないものが多いのですが、〈アントラック〉の場合は両サイドからアジャストできるので、パッドの位置を細かく設定できるようになっています。


そして、バックルやファスナーなどのパーツ類は、グローブをしたままでも開け閉めがしやすいようなものをセレクトし、ユーザー目線で開発したところがポイントです。
あと、メッセンジャーバッグはベルクロがよく使われますが、〈アントラック〉ではその部分にテープ状のカバーをつけています。これはユーザーの方々に使い方を選んでいただけるようにそうしたのですが、例えばニットを着ているとベルクロに引っかかってニットが毛羽立つことってあるじゃないですか。

ーそれを防止するためのカバーであると。
生本:そうですね。ベルクロがあると便利なので、シーンに応じて、使うか使わないかを判断していただければと思っています。