「アパレルに落とし込んでも、必ずしも写真の魅力が伝わるわけじゃない」
ー一方で、〈Mēdeia2.0〉というZINEもリリースしていますよね。
Mēdeia1.0:インターネットによって情報が飽和状態になっています。それを上手に扱えれば問題はないのかもしれないけど、毎日洪水のように情報が流れてくる中で、それをするのは簡単なことではないですよね。
ーすごくインスタントになっている感覚はありますね。
Mēdeia1.0:たくさんの情報が流れてくる世の中なのに、解決してない課題っていうのがたくさんあります。もう21世紀なのに、まだそんなことしているの?
というような問題もあったりして。そうしたときに、紙として残すこともやっていきたかったんですよ。
紙には当然、触った感触とか、香りみたいなものがあって、ページをめくることによって生じる感覚があるじゃないですか。そうした感覚っていうのが、記憶をしていく上ですごく重要で。人の記憶に一番残るのは香りらしくて、その現象って学術的に証明されているんです。
そういうこともあって紙媒体としての機能があったほうがいいなと思ったんです。それによって我々が伝えたいことがより伝えやすくなるし、記憶にも残ると思うので。
ーそれが〈Mēdeia2.0〉ということですね。紙媒体である以外に〈Mēdeia1.0〉との違いはありますか? たとえば、扱っている写真家やテーマが変わるなど。
Mēdeia1.0:連動しているときと、していないときがありますね。それは単純にアパレルに落とし込んだときに、いいものになるときと、そうじゃないときがあるからです。写真がいいからといってアパレルに落とし込んでも、必ずしも写真の魅力が伝わるわけじゃないと思うんです。
ー〈Mēdeia2.0〉のISSUE N˚02では、盲目のひとびとを追ったステファノ・デ・ルイジの作品など、重たさの伝わる作品も扱っていますよね。
Mēdeia1.0: そうですね。すごくダイレクトな表現でした。彼は美術サイドから評価をされていて、そこで展示をされるような素晴らしい作家でもあるんです。ただ、それをアパレルに落とし込んでもいいものなのか、疑問に思ったんですよ。Tシャツとして着る、ファッションとしてそれを提案するのは、やっぱりちがうなと。ある意味それは当事者たちを傷つけてしまうことにもなりかねないですから。
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〈Mēdeia2.0〉が出版する最新刊は、1990年代から活躍し続け日本が世界に誇る写真家の金村修の写真ですべて構成され、貴重なサイン入りを販売。。フェアの会場では過去に金村修が出版した写真集も展示&販売され、こういうところにもフィジカルならではの面白さが投影されています。
ーたしかに、そのリテラシーはとても大事だと思います。
Mēdeia1.0:とはいえ、完全に割り切っているわけではないんです。たとえば今年の夏に、金村修さんという写真家のZINEを〈Mēdeia2.0〉で出版したんですよ。金村さんの作品は今度アパレルでも展開する予定です。これから小松浩子さんという木村伊兵衛賞を受賞した写真家さんのZINEもリリースするんですが、そちらでもアパレルに落とし込む予定なので。
〈Mēdeia2.0〉では、あくまでZINEという媒体を通して表現すべきことに軸足を置いています。そこから派生してアパレルにできるものはしている、という感覚ですね。
ー〈Mēdeia2.0〉のZINEを手に取ってみると、装丁もすごくこだわっていることがわかります。
Mēdeia1.0:そこはすごくこだわっていますね。ファッションのデザインに近い感覚があります。たとえばミリタリーウェアにはたくさんの機能が備わっていますが、それは必要だから与えられているもので無駄がない。一方で、ファッションというのは無駄を楽しむ文化でもあると思うんです。日常を過ごす上で必要のない装飾も、やっぱりあるとないとでは気分に差が生まれますよね。
〈Mēdeia2.0〉も、そういった意味ですごく凝ったつくりにしているんです。ただ単に写真を印刷して、それをZINEとして出版するのではなくて、わざわざ白紙のページの上から写真を貼り付けたりして、しっかりとデザインしているんです。
ーデザインは毎号変えているんですか?
Mēdeia1.0:タイトルごとに全部変えていますね。デザインはすべて二手舎さんという古書屋さんに担当してもらっています。それを国内で印刷して、製本屋さんに多くを手作業でZINEという形にしてもらっています。
ただ、サイズと表紙のレイアウトだけはすべて統一しています。これは個人的な願望なんですが、誰かの家の本棚が壁一面〈Mēdeia2.0〉で埋め尽くされたらいいなぁと思っているので。
ー手作業でやっているというのは、どこかファッションらしさがありますよね。
Mēdeia1.0:そういうところから伝わってくるものってありますよね。同じ大きさで写真をただ並べても、抑揚がないじゃないですか。隣同士のページでも一方は光沢紙で、もう一方はマット紙を使用することで緩急が生まれる。そうやってリズムをつけることで、読み手に訴えかけるなにかがあるんじゃないかと思ってます。
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