コーヒーブレイクがリラックスタイムじゃなくてもいい。

さて平野さん、普段はどうやってコーヒーを楽しんでいるんですか?
「コンビニでも買いますし、コーヒー専門店のコーヒーを飲むことも。ここ何年かで日常的に飲むようになりました。まだ家で淹れるまではしてなくて…。スノーボードの遠征先で自分のコーヒーセットを持ち込んでいる選手もいて、なんだかいいなと。いずれやりたいと思っているんですが、(店主に向かって)どんなものから始めたらいいですかね?」
「僕の場合は、自宅で簡単にラテを淹れる器具をはじめは使っていたんですが、いちいち挽いて淹れるのが少し面倒で、スーパーですでに挽いてある豆を買ってきて家でドリップするようになりました。それが一番楽だったし、それでもすごく美味しかった。特に最初はムリする必要はないと思いますよ。でも、そのうち自分の店で使っているコーヒー豆など、ちゃんとしたもので飲んでみると、全然違うなとわかってきましたね」

一番人気の「CHEESE TART」は、カスタードクリームとクリームチーズの2種類のクリームが波打つ造形が目を惹く。「CARROT CAKE」は人参がふんだんに使われたスポンジにクリームチーズがたっぷり。

アメリカーノ ¥550
店名の「アーチ(ARC)」になぞらえて、カーブ状の持ち手にデザインされた、当店オリジナルのマグカップ。店主のパートナーである陶芸家によるもの。軽くするために薄い形状なので、焼くと歪んだり簡単に割れたりとつくるのは至難の業。

「ムリする必要はない」という店主の言葉から、入り口のハードルの低さに少し安心した様子の平野さん。
「それくらいならできそうな気がします。あとは(コーヒーミルを回す動作をしながら)これがやってみたいんです。ひとに聞くと、コーヒーを砕いて挽いているあの時間がゆったりできるとか、コーヒーの香りがすごくいいとも聞きます。ああいう時間を、自分のルーティンの中に入れて…例えばストレッチ、音楽、コーヒーみたいな練習前後にできたら、ちょっとゆったりできそうだなと」
コーヒータイムは多くのひとにとってリラックスタイムにもなっています。ゆったりできる時間をどうつくるのか。これは選手・平野歩夢としてもすごく気になるトピックのようです。
「例えば、自宅でコーヒーを淹れている時間が落ち着くとか、好きな時間は何をしているときですか?」と店主流のリラックス方法を尋ねます。


「コーヒーは朝に淹れるのがルーティンで、確かに落ち着く時間ではあるんですけど、一番好きな時間は、アンプをいじっている時間ですね。このお店にあるヴィンテージのスピーカーとアンプも自分で直したものです。アンプを作るのは、どの部品をどこに置くかとかデザインしながら組み立てていく細かい作業なんですが、その熱中している時間が一番楽しいです」
ゆったりした時間よりも、時間そのものを忘れてしまうくらい没頭できるほうが、気持ちの上ではリフレッシュできる…そういうことなのでしょう。聞けば、平野さんは家と練習場以外のサードプレイスの空間づくりに夢中になっているとか。
「自分が休んだり、ひとが集まれるような場所をつくろうとしています。そこに置く家具を探しにいったり、模様替えをしていると、あっという間に時間が経っちゃいます。正解がなくて、いろいろと試行錯誤しながらやっているその時間が楽しいし、好きで面白いですね」

ヴィンテージスピーカー好きには知らないひとはいない〈アルテック〉の大型スピーカー2台。間に並ぶのは、〈JBL〉のモノラルスピーカー。ヴィンテージスピーカーらしい、ハイファイの音が優しい。ヴィンテージの音響機器をいじるのが好きだという店主が手直ししたもの。

〈フィリップス〉の真空管アンプを使ったパワーアンプは、店主による自作。真空管独自の造形やほのかに灯る光が見るものを魅了する。〈ダイヤトーン〉のプリアンプまで含めた、こだわりの音響システムがお客さんを迎えてくれる。