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サステナブルよりも美しさとかっこよさ。クオンとザ・イノウエブラザーズ、魂の邂逅。
Powerful, it is powerful clothes.

サステナブルよりも美しさとかっこよさ。
クオンとザ・イノウエブラザーズ、魂の邂逅。

〈クオン(KUON)〉と〈ザ・イノウエブラザーズ(The Inoue Brothers...)〉。前者は日本の伝統技術を現代的にアレンジしたものづくりに定評があり、後者は南米のアルパカから採取したニットブランドとして世界で広く認知されています。サステナビリティに軸を置く両者が相まみえ、今回コラボレーションを果たしました。今回の両者へのインタビューは、10月25日(水)から開催される伊勢丹でのポップアップで披露されるアイテムについてはもちろん、いまのサステナビリティ事情や日本の賃金の安さにまで話が及びました。途中からは、両者を繋げた「ウィズム(WISM)」の堀家さんも参戦。熱き鼎談となりました。

  • Photo_Masayuki Nakaya
  • Text_Shinri Kobayashi
  • Edit_Ryo Komuta、Shinri Kobayashi

この服を着て誰と会うか、なにを思うか。

カーディガン ¥495,000

ー今回完成したのが、パッチワーク調のカーディガンとマフラー。お飾り的なサステナビリティをぶっ壊すぐらいのかっこよさがものとしてあるということですよね。パッチワークにするというのは、どのように決まったんですか?

石橋:〈ザ・イノウエブラザーズ〉の生地をバーっと全部広げてみると、でこぼこのニットもあれば、ラベンダーのような鮮やかなものもあって、それをしばらく眺めていたんですよ。それでこういう方向で作ろうと聡さんに伝えたら、「👍」って絵文字が返ってきて(笑)。〈クオン〉にはカーディガンがなかったので、今回のための完全オリジナルです。スペシャルなものなので、全てフリーサイズで作っています。フリーサイズの面白いところは、人によってシルエットが変わったりとか、表情が変わるのがいいなと。服を体に合わせて着るというか、着方によっても変わります。しかもリバーシブルになっていて、ホワイトとカーキの裏側は刺し子織になってます。ネイビーの裏側は藍染です。

マフラー ¥59,400、¥69,300

ーマフラーは発色が良かったりと、ポップなのがいいですよね。

石橋:マフラーは〈クオン〉でもともと作っているものをベースに、〈ザ・イノウエブラザーズ〉の生地を使ってます。こういうちょっと手軽なものも作りたくて。僕らはニットはあまりやってきてないんですが、これは本当にすごくいい素材でしたね。

ーそれぞれの価格はおいくらですか?

石橋:カーディガンのネイビーの藍染が48万円、カーキとホワイトが45万円(すべて外税)。一着作るのに、セーター8着分くらい使っていて重さも2.5~3.5kgあるので(笑)、そんなに安いものにはならないんですよ。マフラーは、セーター一着分くらい使っていて、価格はものによって5.4万円と6.3万円(どちらも外税)です。

ーそもそもの発端となった〈クオン〉と「ウィズム」の対談でもおっしゃっていたと思うんですが、服が機能面や肌触りとか含めて、どんどんひとに優しく寄り添ってくれるようになったと。結果、がんばらなくても快適に過ごせる服が増えているなかで、逆にフリーサイズや重さもそうだと思うんですが、着こなしを考えたり、この服をどうやって着こなしてやろうかと挑ませてくれる服は、なかなかないと思うんです。そういう点では、この服は袖を通した時に、緊張感があるというか、すごく価値のある服だと感じました。

聡:最初から額装しようって言ってるよね(笑)。着ちゃあかん、飾れって(笑)。

石橋:もちろん着ていただけたらもちろんうれしいんですけど…(笑)。

堀家:「金、ロレックス、クオン、イノブラ」と考えてもらうのがいいですね(笑)。今後、価値が上がるから。でも、本当にいまお話に上がったように、この服は結構ストロングスタイルなんだと思います。でも、やっぱり粋なものだと思うんですよ。

ーそうですね、まさに粋ですね。

堀家:だって聡のアルパカだって、SDGsの話でいえば、捕まえてバッと毛を刈っちゃうと拒絶反応が出てウールが変になっちゃうと。だから、大人3〜5人で、優しく抱えて刈るんですよ。さっき聡が、ほかが軽く見えちゃうというのも、この生地に対して重いことをやっているからこそですよね。一方、〈クオン〉は震災の復興支援という切り口をずっと大事にしているから、中途半端なところでは触れないとなるわけです。

この服は、ただ単にこだわってますというエゴだけで値段を取るんじゃなくて、ちゃんと背筋が伸びるような服になっていると思います。誰でも着れるような優しい服というよりも、これを着て何を思うとか、これを着て誰と会うとか、そういうところにちゃんと着地できるコラボレーションになったんじゃないかなと。