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サステナブルよりも美しさとかっこよさ。クオンとザ・イノウエブラザーズ、魂の邂逅。
Powerful, it is powerful clothes.

サステナブルよりも美しさとかっこよさ。
クオンとザ・イノウエブラザーズ、魂の邂逅。

〈クオン(KUON)〉と〈ザ・イノウエブラザーズ(The Inoue Brothers...)〉。前者は日本の伝統技術を現代的にアレンジしたものづくりに定評があり、後者は南米のアルパカから採取したニットブランドとして世界で広く認知されています。サステナビリティに軸を置く両者が相まみえ、今回コラボレーションを果たしました。今回の両者へのインタビューは、10月25日(水)から開催される伊勢丹でのポップアップで披露されるアイテムについてはもちろん、いまのサステナビリティ事情や日本の賃金の安さにまで話が及びました。途中からは、両者を繋げた「ウィズム(WISM)」の堀家さんも参戦。熱き鼎談となりました。

  • Photo_Masayuki Nakaya
  • Text_Shinri Kobayashi
  • Edit_Ryo Komuta、Shinri Kobayashi

日本の安さはどこから来ている?

ー今回のアイテムを作るにあたって、どれくらいの手間がかかっているんでしょう?

石橋:まずは生地をこれくらい(10センチ四方くらい)に一枚ずつカットして、並べていくんですけど、やるのは基本的にうちの〈クオン〉のメンバーたち。しかもお店の営業中にやっていて、店内でこう並べているから、お客さんがどうしたんですか? って(笑)。

あとは、並べた状態でピンで仮留めするんですが、このまま刺繍屋さんに送っても刺繍してくれない。だから水で溶ける糸という糸でミシンで縫っていきます。で、刺繍屋さんに送って刺繍してもらうんですけど、クロスでは刺繍してもらえないから、水で溶けるシートを一度上にかまします。刺繍をやる時も、レザーがあるから、針が折れちゃうからやりたくないって言われながら、刺繍をしてもらうと。シートの状態でこちらに戻ってくるので、子供用のプールを広げて、シートを溶かして乾いた状態にしていくという流れです。それからパターンと一緒に、縫製工場に送ってやってもらうんですけど、生地が厚いからめちゃくちゃ大変で、それこそ針何本折ったかわからないくらい。

ー手間暇がえげつないことがわかりました(笑)。

聡:今回のアイテムの値段を今日初めて聞いたんですけど、海外からの視点で見ると正直安いなと感じます。それはうちのアルパカニットを使っているから安いとかではなく、職人さん含めてこれを作るための手間を聞くと。海外からの意見かもしれないけど、いまの日本人や日本の社会状況で、職人さんたちが苦しんでいる一つの理由は、値段設定が低すぎることにあると思います。それはビジネスが下手とかではなく、みな謙虚すぎるんですよ。自分たちが頑張った分以外は、お金は受け取れません、みたいな。

なぜ海外の人たちが日本酒を始め、日本のものに興味を持っているかというと、もちろんクオリティもあるけど、人の手間。日本酒を一本作るためにどれだけの時間と努力をかけて、自分や家族との時間を犠牲にして作っているか。米を麹で発酵させて日本酒にするという、手間暇をかけた文化ですよね。ワインはもともと糖分が入ってるから、もっと簡単に作れちゃう。ナチュラルワインでも、できるだけ放っておかなきゃいけないというプロセスだけど、日本はいろいろな手間をかけないとあのクオリティに到達しない。でも、日本人はすごく謙虚だから、人間が頑張った分はお金は取らずに、材料代だけ取らせてもらいます、みたいなね。

聡:だから、いま日本で給料を上げるためには、社会的に色々な問題があるんですけど、僕が思うのは、その教育が必要かなということ。もっと誇りを持って、自分が頑張った分はちゃんとお金を取るんだぞという自信を持たないといけないと思います。でないと長続きしない。サステナビリティとは持続可能という意味なんだから、長続きしないとだめ。自分を苦しめながらものを作るには、やっぱり限界があるのは当たり前です。これだけ頑張っているのに、この値段で出せるというのに僕はびっくりしたし、別の意味でさすが日本、というリスペクトにも繋がっています。

僕が日本の職人さんたちとやり取りをしていて「申し訳ないですけど、これぐらいの金額を取らないといけないです」と謝りながら金額を出しているのを見て、素晴らしいなと思うと同時に、ちょっと哀しい気持ちになるんです。なぜ哀しくなるかというと、そういう文化によって苦しんでいる状況を知っているから。このコラボレーションアイテムはサステナブルを超えて、日本の文化や技術を発信しているわけなので、海外のひとたちにこれを気に入ってもらうというより、日本人がこれを見て、俺たちってすげえじゃんとちょっとでも自信を持てるきっかけになったらいいなって。今回僕たちは材料の提供だけなんですけど、アルパカさんたちを刈ってきてよかったなと。

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