yutori アートが目に入る環境で感性を磨く、等身大の20代。

いま勢いに乗っているアパレル企業のオフィスはどうなのか、と気になり「ユトリ」を訪問。この企業は、2018年に古着に特化したコミュニティ「古着女子」を運営する片石貴展さんが起業し、古着のEC販売をスタートしました。2020年からZ世代に向けたストリートブランドを展開し始めて、いまや取り扱っているブランド数は20に及ぶほど急成長。ZOZOの傘下に入ったり、〈フラグスタフ〉をグループの仲間に迎えたりと、業界の話題をさらう新星で、最近はなんと東証グロースに上場を発表しました。

片石さんは若干29歳で、「ユトリ」で働くひとの平均年齢は24歳。取り扱うブランドのユーザーと同じ年齢層のスタッフを中心に運営しています。そんな「ユトリ」がオフィスを構えるのは下北沢。同年代が集うトレンドの発信地であり、街特有のカルチャーが根付いているため、時代の空気を感知しやすい場所を拠点に選びました。

オフィスを訪れてみると、内装にはあまり手を掛けていない様子。「コンクリート打ちっぱなしの素材をそのまま活かしたラフさが、迫力や色気に繋がっていて、ぼくたちらしいかなと思いまして」と片石さん。社員が使っているデスクとチェアは、見た目より実用性を重視したオフィス家具を使用しているようです。「個人的にデザイナーズ ファニチャーは好きですが、いまのぼくたちの年齢には必要ないと思うんです。それよりも、みんなで一緒にひと旗上げるほうが大事」と地に足をつけて、会社を成長させることを優先していると片石さんは話します。

そんなオフィスのなかで際立っている、壁に飾られたアート作品。つねにアートが目に入る環境で働いて、感性を磨いてほしいという片石さんの想いが込められています。こちらはグラフィックデザイナーのGUCCI MAZEさんの作品。約3m幅の大型でインパクト抜群です。

彫刻家であり、ラッパーとしても活動するMeta Flowerさんの作品も。聖書の言葉をモチーフにした木工で、メッセージをデザインに落とし込むストリートブランドを多数有する「ユトリ」にぴったりです。コンクリートの無機質な壁に、木の質感がよく映えています。

左は江上越さんのプロジェクトで描いてもらった片石さん。右は鈴木秀尚さんの作品。世界で活躍する2人のアーティストですが、オフィスに飾る作品のネームバリューにはこだわっていないそうです。なにより大切にしているのは、琴線に触れて感動するかということ。

こちらは「ユトリ」のブランド〈ゲンザイ〉が〈ヒステリックグラマー〉とコラボレーションした際に製作した作品。〈ヒステリックグラマー〉のアーカイブデザインを〈ゲンザイ〉のアートディレクター永戸鉄也さんがコラージュして、中国にある絵画の贋作村で絵画にしてもらった作品です。その発想と取り組みがユニーク。

社員が使うデスクやチェアは使い勝手を重視していますが、社外のひとも訪れるミーティングスペースにはこだわっているそう。こちらのソファとテーブルはミッドセンチュリーのもの。レトロ感が壁の雰囲気とマッチして、味わい深さを感じます。

〈ハーマンミラー〉のイームズシェルチェアは、モデルやカラーリングを統一せず、多種多様にラインナップ。ポップなカラーリングがアート作品と馴染んでいます。

〈フラグスタフ〉デザイナー村山靖行さんのデスク横には、資料となる90年代から最近までの私物雑誌が大量に。ストリート誌からライフスタイル誌までがそろい、「ユトリ」の20代スタッフにとっても貴重な情報源ですね。無骨な棚は「パシフィック ファニチャー サービス」で購入したイタリア製の工業用シェルフで統一。コンクリート打ちっぱなしの内装とマッチしています。

こちらはミーティング禁止の休憩スペース。〈ゲンザイ〉×〈ヒステリックグラマー〉の作品と、山中雪乃さんの作品が飾られています。ここでスタッフたちは食事をしたり、昼寝をしたりしているそうです。ぬいぐるみやお菓子や漫画などが置かれていて、年齢層の若さを感じます。
破竹の勢いで成長する「yutori」のオフィスは、和気あいあいとしていて、居心地のよさを感じます。「寝転がれるほどリラックスできるスペースが欲しい」と片石さん。ありのままの自分で働ける環境は理想的ですね。