アイデアが一本の川のように。

童心に帰ったようにキラキラとした目で服について話してくれる又吉さん。コントづくりや執筆活動とは違い、立体的なモノを生み出す服づくりにおいて、手こずることはなかったのだろうか。
「実際にやってみて、創作活動と服づくりは頭の使い方が似てるなと感じました。小説とか書くときも、書きながら無意識に出てきた言葉が、『なるほど、そういうことなんや」って自分の知らなかった人物像を浮かび上がらせて、それが気付きになって、次の文章が書けることがよくあって。アイデアが次から次へと繋がっていく感覚は共通する部分が多かったです。
寝屋川から始まり、寝る=パジャマになって、地元のことを思いながらつくるなら国産の材料でやろうかとか、 不眠症に悩まされた時期もあったので安眠を龍に守ってもらおうって思ったりして、一つのことがどんどん次に繋がっていくような感じでした。出来上がってみたら、最初からこういう形に成るべくして成ったのかなと思うんですけど、小さな積み重ねでしたね」

一つ一つの点のようなキーワードが線となり、一本の川のように繋がって出来上がったパジャマを見ていると、これまでの人生が詰め込まれているように感じます。しかし、服好きを公言するひとが畑違いのファッションの分野に足を踏み入れ、服づくりをすることに一種の怖さを感じなかったのだろうか。ゆっくりと考えたあと、しっかりと言葉を紡いでくれました。
「ファッションブランドのように年に2回、作品を量産するって考えたらめっちゃ怖いと思うんですけど、自分がいちばんこれを着て眠りたいっていう、あくまでも自分なりのパジャマをつくるっていうコンセプトだったので、あまり気負いはなかったですね。万人ウケしてほしいっていう思いでつくってたら、『俺はいらん』みたいな声も聞こえてくると思うんですけど、僕はもうそんな風に思わないかなって。小説もそうで、みんなに読んでもらいたいって思いかけた時期もあったんですけど、世の中に出版されてる小説を全部読むことは不可能だし、それぞれ好きな本があって当然。読んでくれたらもちろんうれしいですけど、いまはみんなそれぞれ好きなものに囲まれて楽しく過ごしましょうって思いが強いですね。
服の場合、年を重ねるごとに体型も変わるし、生活のスタイルも変わっていくから、ずっと同じ服じゃいられないと思いますし。僕はこのパジャマがすごく好きなので、気に入ってもらえたらぜひ使ってみてくださいってくらいです」
今回のパジャマは東京の下北沢、大阪の寝屋川でイベントを行い、販売されます。生まれ故郷でイベントを行える喜びをはつらつとした表情で話します。
「寝屋川でイベントするのも初めてですし、地元で何かできたらとずっと思ってたので、今回のパジャマをつくるきっかけをくれた寝屋川でイベントできるのは素直にうれしいです。どういうひとが来てくれるか予想できないところもまた楽しみです」
