ファッションは第二の皮膚のようなもの。
ー近年は〈ジルサンダー〉のキャンペーンに登場したり、〈ディオール〉のショーの音楽も担当されていました。そうしたファッションとの接近は意識的なものなのでしょうか?
いや、それはたまたま依頼が重なっただけですね(笑)。
ーご自身にとってファッションはどんな役割を担っていますか?
すごく重要なもの。ファッションは第二の皮膚というか、自分がコントロールできて選ぶことのできる肌であると思っています。着る服によって自分のキャラクターやパーソナリティを表現できるし、トレンドを通して世の中に対する距離感や理解度みたいなものも表現できます。
服が生まれるプロセスは、私が音楽をつくるプロセスと非常に似ています。アイデアが誕生し、そこからリサーチをして、成果としてさまざまな情報を獲得する。そこで得られたものをひとつの形に落とし込む。それは自分の音楽のつくり方でもあるんです。だから今回デザイナーと一緒にたくさんのコミュニケーションを取ることによって、多くのインスピレーションが得られました。それはすごく楽しい時間でもありましたね。
音楽や服というものは、コミュニケーションのツールでもあると私は思っています。服は実用的なものである一方、アイデアも含まれている。デザイナー自身の考えや、自分たちに向けられたメッセージがあり、それを受け取ったときに私たちは向かうべき方向を探ります。服を着るときに私はそうしたことを受け取ることが多くて、音楽との共通点を強く感じるんです。

ー最後に、今後も「THE TRIP」はプロジェクトとして継続されると思うのですが、これから先考えていることがあれば教えてください。
具体的に決まっていることは現時点ではありません。もちろん、なにか依頼があれば次のことを考えようと思っていますが。私自身は「CINE-MIX」やオーケストラとの共演、あとはジャズのプロジェクトも行なっているので、そうしたことを手がける上でオープンなスペースを残しておきながら、やりたいことをやれるときにやるのがベストだと思っています。時代によって受け入れられるものと、受け入れられないものも変わってきますよね。だから、その時々でベストなものをつくりたいと思っています。