
PROFILE
機械工具業界にてキャリアをスタートし、のちにメガネ業界へ。はじめはショップにて経験を積み、その後自身のブランドの立ち上げを経験。3年ほどブランド運営をおこなったあと、株式会社アイヴァンに入社し、デザイナーとしてさまざまなレーベルの立ち上げに参画。この度、2021年秋より〈E5 eyevan〉を始動させる。
PROFILE
セレクトショップにてショップスタッフ、プレスを経験。その後、ファッションを中心としたさまざまなブランドのPRやブランディングをおこなう「ムロフィス」を設立。PRディレクターとして活躍する一方、自身がディレクションするバッグブランド〈モノリス(MONOLITH)〉を昨年スタート。〈アイヴァン〉のユーザーであり、PRも担当している。
機能性と芸術性の両立を目指した。
ー〈10 アイヴァン〉は“美しい道具”というコンセプトがありますが、こちらはどういったアイデアから生まれたものなんですか?

中川: 〈10 アイヴァン〉が誕生したのは2017年なんですが、それ以前からぼくは「美しい道具をつくりたい」と、いつも呪文のように心の中で唱えながらメガネをつくっていたんです。
中室: “美しい道具”って、なんか深みのある言葉ですよね。
中川: そうなんです。耳あたりの良い言葉ですが、よくよく考えると、すごい変な言葉なんですよね。 メガネってひとが日常を送る上での道具じゃないですか。だから道具に美しさって本来は必要ないと思うんです。使いやすくて、壊れにくければ、それで十分だと思うので。
ーたしかに、どこか矛盾した響きがあるかもしれないですね。
中川: だけど、その両方を同時に追い求められないかと思ったんです。美しさは芸術性で、道具は機能性ですよね。それを同軸に絡めながら、メガネというプロダクトに落とし込んだのが〈10 アイヴァン〉なんです。ぼくは〈10 アイヴァン〉をはじめる前から〈アイヴァン 7285〉でデザイナーを担当しているのですが、このブランドではシンプルにカッコ良さとか美しさという高揚感のあるデザインを目指していました。一方で〈10 アイヴァン〉では、機能の部分もないがしろにせずにつくりたいなと思ったんです。
ー道具としての本質の部分ということですか?
中川: そうですね。実際のところどっちも必要だと思うんですよ、デザイン性も機能性も。美しい器や古道具などに宿る「用の美」みたいなものをデザインしたいと思ったんです。 厳密にいうと〈10 アイヴァン〉は機能的なパーツの集合体で、そうしたパーツ類が組み合わさることで“美しい道具”としてのメガネが生まれるという考え方なんです。

中室: 星型のネジや、真珠貝でつくった鼻のパッドですよね。〈10 アイヴァン〉がローンチする際にヴィジュアルブックもつくったんですけど、写真家の瀧本幹也さんのアーカイブ作品とシンクロさせてつくったんですが、世界観がすごくマッチしていて。
中川: スタイリストの二村毅さんにディレクションしてもらったんですが、すごくいいものができましたね。
ー“美しい道具”という概念的なアイデアを実際に形にするのは決して簡単なことではないですよね。
中川: そうですね。機能っていう数値的に測れる要素と、美しさという数値化できない要素。その両方を満足のいくレベルで組み合わせるのは、なかなか難しい作業になります。デザインって、結局は最後の形がどうなっているかだと思うんです。ぼくの場合、それはいちから積み上げていくものだと思っていて、どこか建築と似たような考え方でいるんです。
ーどうゆうことですか?
中川: 建築って、ひとの安全性を確保した上でデザインが考えられますよね。メガネの場合もそうで、美しさを追い求めてフレームを薄く繊細に削ったとしても、簡単に折れてしまったら意味がない。そうなる前にぼくは、最低限必要な厚みは何ミリなのかを知ってからデザインしたいんです。それは素材がセルロイドなのか、メタルなのかでも変わります。あとはネジなどのパーツ類の強度のことも頭に入れながらつくりたい。要するに、デザインはその積み上げで成立するものだと思うんです。〈10 アイヴァン〉もそうした考え方でつくっていますね。

中室: 中川さんに商品の説明をしてもらうと「この素材のできる限りの薄さに仕上げているんです」って、よく仰ってますよね。それを聞くと「違う素材だったら、また別のデザインが生まれているんだろうな」って思うんです。
ー中室さんは実際に〈10 アイヴァン〉のユーザーでもあるんですよね。実際に掛けていていかがですか?
中室: もともと中川さんが手がけていた〈アイヴァン 7285〉のアイテムを掛けていたんですけど、同じデザイナーがつくったとは思えないほど全然違うんです。そもそも目指している方向性が異なるので、その違いがしっかりとプロダクトにも表れているというか。やっぱり、使い勝手や掛け心地のよさみたいなものを感じるんです。