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新しい10 アイヴァンから学ぶ、美しいデザインの在り方。
Making Elation by Design

新しい10 アイヴァンから学ぶ、美しいデザインの在り方。

“美しい道具”をコンセプトに、2017年に誕生した〈10 アイヴァン(10 eyevan)〉。シーズンごとにコレクションを発表するのではなく、あくまで納得のいくものが生まれたらアイテムをリリースするというストイックな姿勢を貫いています。そんなブランドから、約2年ぶりに新作のアナウンスが届きました。今回フィーチャーしたのは、シートメタル。クラシックな素材使いや製法を得意としてきた従来のクリエイションとは一線を画す、意外なアプローチ。そこにはデザイナーである中川浩孝さんの意識の流れのようなものが存在していました。このブランドのPRを担当するムロフィスの中室太輔さんと共に、中川さんのデザインに対するアイデアに触れていきます。

細かいところまでしっかりつくって、はじめて高揚感が生まれる。

ーもともとシートメタルを敬遠していたという話がありましたが、そもそもどうして今回扱おうと思ったんですか?

中川: これといったきっかけがあるわけではなく、本当に感覚的なものなんです。長いことメガネ業界にいて、自分自身、ずっと気になっていたんだと思います。手をつけていなかった素材だし、そろそろ着手してみようかなって思ったというか。

ー機が熟したというか、そんな感覚なんですね。

中川: 2000年代初頭につくられて、もう四半世紀経っていますからね。クラシックの仲間入りをしてもいいものだと思うんです。

中室: これは個人的な印象なんですけど、シートメタルのメガネを掛けている人って、好みがはっきりされている方が多いような気がしていて。クラシックよりもモダンなものをチョイスする人が多いイメージです。一方でクラシックなものが好きな方は、シートメタルのアイテムを選ばない。だけど今回のアイテムは、そうしたクラシック好きな方々にも好まれそうなデザインに仕上がってますよね。

ー中室さん、実際に掛けてもらってもいいですか?

中室: 全然違和感ないですよ。やっぱりモダンというよりは、クラシックな雰囲気がありますね。

中川: セルフレームとメタルフレームの中間みたいな感じですよね。中室さん、すごく似合ってますよ。

中室: ありがとうございます! いい意味で新鮮味がないというか(笑)、最初からすごくなじんでいる感覚が自分でもありますね。

ー掛け心地はどうですか?

中室: チタンだから軽いイメージがあったんですけど、心地よい重量感を感じますね。

中川: 顔にあたるところの面積が一般的なメタルのメガネよりも広いんですよ。線ではなくて平面で顔に当たるようにしているので、しっかりとした着用感があるんです。

中室: なるほど! この感じ、すごくいいですね。実際にできあがったアイテムを見て、中川さんの中でもともと頭で描いていたものとの差はありますか?

中川: 仕上がりがよくてビックリしましたよ(笑)。いつもだったら経験的にある程度は想像の範囲内のものが生まれるんですが、今回はどうなるんだろうっていう気持ちが少しだけあって。それぐらいおもしろいことをしたいっていう想いが最初からあったんですけどね。

中室: 想像を超えるものができるっていうのはいいですね。

ーデザインのプロセスの中で、工場との押し問答もあったんですか?

中川: それはもう毎回ですね…。工場の方々には本当に申し訳なくて、いつもわがままを言わせてもらってます。

中室: どんなところに中川さんのわがままが反映されているんですか?

中川: 基本的にデザインはさらっとシンプルにしているんですけど、実際はそうでもなくて、テンプルのところに銀色のパーツがついているの分かりますか? これは金属同士なので、一般的には蝋付けといって溶接みたいにくっつけてしまえばそれで終わりなんですが、〈10 アイヴァン〉の場合はリベットでかしめて銀色のパーツを固定しているんです。蝋付けすれば一瞬で終わる作業なんですけど、そうではなくて面倒なプロセスを踏んでいて…。

中室: 工場の職人さんたちには「蝋付けでいいじゃん」って思われているでしょうね。

中川: この銀色のパーツはサンプラチナっていう素材を使うのが一般的なんですが、これはシルバー925なんですよ。だからちょっと柔らかいんです。最終的に磨きの加工を施すんですが、パーツの周りをマスキングで覆わないといけなくて。その工程もすごく細かいんです。

中室: めちゃくちゃめんどくさいことしますね(笑)。

中川: マスキングをしないとテンプルも一緒に磨かれてしまうので…(苦笑)。

フレームの裏側には細かな柄が刻印され、表からは見えない部分にもしっかりとこだわりが表現されている。

ー蝋付けにしても、マスキングにしても、それをしなければならない理由が中川さんの中にあるということですよね。

中川: プロセスを簡易化して、高そうに見える工夫だけをする。そういうものづくりはしたくないんです。細かいところまでしっかりとつくって、それではじめて高揚感が生まれると思うので。

中室: 〈10 アイヴァン〉のメガネってすごくシンプルで、引き算によって生まれているじゃないですか。足し算をしながら高そうに見せるのは簡単だと思うんですけど、その真逆というか。引き算しているのに高く見えるのはそういうことなんですかね。

中川: どうなんでしょうね。

ブラックは素材の上からIPメッキによる表面処理を行なって表現。表面には実現が難しいとされていたヘアライン加工によって繊細な線を入れ、よりメタル感のある表情に仕上げている。

中室: 仮に〈10 アイヴァン〉っていうブランドネームがなかったとしても、メガネとしての魅力は変わらないし、そこに説得力を感じるんです。仕事で会う方々が〈10 アイヴァン〉を掛けていると、やっぱりなんか違うんですよ。明らかにいいメガネを掛けているのがわかるんです。

中川: 素材の良さと、パーツの妙みたいなものがあるのかもしれないですね。

中室: たとえばセルロイドって、深い色味が魅力だったりするじゃないですか。アセテートの黒とは全然違うのが分かります。そういう素材的な差別化で高そうに見えるのは分かるんですけど、それだけじゃない気がするんです。

中川: パーツにしても、やっぱり吟味しているんです。リム線をつかったアイテムでは、針金だけを40年以上扱ってきた職人さんにつくってもらっていて。ひとつひとつそうやっていいものを選ぶようにしていますね。

ーそうした職人さんたちの技術の積み重ねによるオーラの違いもありそうですね。

中川: それは確実にあると思います。その手仕事をぼくらが変に味付けを加えてダメにしちゃいけない。そう思ってますね。

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