日常から見つける、面白さのタネ。
ーお二人がこれまで作品をつくる中で影響を受けた作品や人物はいますか? 特に「この視点が面白いな」と感じた方がいれば知りたいです。
蓮見: どうなんでしょう…。コントを書こうと思ったきっかけになったひととか影響を受けたひとはたくさんいるんですが、作風に直結しているかというと、あまりいない気もします。でも、最近『ちびまる子ちゃん』を全巻読み返したんですよ。子どもの頃、姉が持っていたので読んでいたんですが、大人になってから改めて読むと、やっぱりめちゃくちゃ面白くて。たぶん、最初に「面白い」と思った作品のひとつだったんだろうなと感じました。知らず知らずのうちに、「面白さの基準」として持ち続けている気がします。
小原: 作品に影響があるかどうかはわからないんですけど…。もともとお笑いが好きで、ちょうど「ひと見知り芸人」が注目され始めた時期に直撃して、オードリーの若林さんや又吉さん、『たりないふたり』も観ていました。当時は学生だったんですが、「飲み会とかで大勢で騒いだり、帰りたくない雰囲気を出すのはダサいんだ」っていう価値観にすごく影響を受けましたね。自分が初対面のひとや大人数の場が苦手という、すごい内弁慶なんですけど、又吉さんや若林さんがひと見知りやコミュニケーションが得意じゃなくても、面白くてかっこいい存在だったから、自分のままでいてもいいんだと思えた気がします。だから、作品に影響しているかはわからないんですけど、人格形成にはかなり影響を受けました。


小原さんが蓮見さんの寝グセを写した1枚。やや緑がかったクラシカルなフィルム調を再現したフェーデッドグリーン(FG)というカラーエフェクトを選択した。
ーお二人とも、作品と日常が近しい関係にあると思いますが、どうやって面白いものを見つけているのかなって、気になっていて…。
蓮見: 正直、自分でもよくわかってないんですよね。よく聞かれません?
小原: よく聞かれますけど、わからないですね。
蓮見: どうやってるんだろう。でも、「これウケそうだな」っていう感覚はあるんですよね。ただ、なんでそう思うのかは説明できないというか。「これ、まだ誰もやってないだろう」ということをやるのは、気持ちいいけど、同時にめちゃくちゃ怖いんです。誰かがやったことのあるネタって、ある程度ウケる確証があるじゃないですか。でも、誰も言ったことがないセリフを舞台で初めて言うときは、本当に怖い。「これ、ただ自分が好きなだけで、全然面白くないんじゃないか?」って思うこともあるし、実際にウケないときもある(笑)。
ー(笑)。なるほど…。
蓮見: たとえば、「前に住んでた家を見に行くのって、なんか楽しいよね」というのをコントにしてみたんです。ほんとにただ“前の家を見に行く”だけの話。でも、「これ面白いのかな…?」って迷いながらも、「たぶんウケる」と思ってやってみたら、意外とウケたんですよね。でも変なウケ方というか、「こいつ、ずっと何を言ってるんだ?」という客席の雰囲気は感じました。


ーご自身の中でも「これは笑いなのか、ただ面白いだけなのか」っていう線引きが曖昧な部分もあるんですか?
蓮見: そうですね。でも、笑いは「エネルギーの総量」によるところも大きいと思っていて。すごく悲しかったり、すごく共感できたり、何かが溜まってる状態だと、そのエネルギーが笑いとして一気に解放されやすいんですよ。たとえば、めちゃくちゃ悲しくても、一撃でその溜まっている悲しさを笑わせる方に転化することはできるし、怒りもそうです。だからこそ、それ以外のエネルギーの溜め方をしている笑いは、めちゃくちゃかっこいいなと。そういう意味では、かが屋さんはかっこいいですね。
ーなるほど。笑いが生まれるメカニズムは、ご自身の中である程度見えてるんですね?
蓮見: うーん、そうかもしれないですね。でも、ななまがりさんとかと話してると、「なんでそんなことするんですか?」って思うことがよくあるんですが、彼らのほうが一回一回の笑いの爆発力は大きいんですよね。感覚だけでお笑いをやれちゃう天然物の最たるものが芸人で、僕はそれができないから、考えて、考えて、なんとかそのひとたちと同じことをしようとする養殖物だなと思います。
ー(笑)。小原さんは、日常のどんなところから着想しますか?
小原: そうですね、心が揺れたとき…かな?
蓮見: なんかそれ、わかる。
小原: それこそちゃんとまだ考えられてなくて。蓮見さんのように、こういうことをこういう視点で書いたら面白いんじゃないか、みたいな気持ちで書くというのは、おそらく蓄積していくとできるんだと思いますが、まだ書き始めて3年ぐらいなんです。直感的に見えているというよりも、なんとなくぼやっと「これつまらないな。なんでつまらないんだろう」と考えながら、これ抜いてみよう、入れてみよう、抜いてみようを繰り返した結果、これだ!と急に完成するんです。そのシステムがまだ自分でもわかっていなくて説明できないけど、好きな心の揺れや残っている部分があって、その前後を書くことで成り立たせている気がします。

周辺光量を抑え写真の中心部をフォーカスする「ビネットモード」も「instax mini 99™」の特長。スイッチで操作することで、物理的に羽根を出してレンズ開口部を狭めるというアナログ技術にこだわっている。