CASE 1:愛すひと 一緒になにかを成し遂げる相棒のような時計。

PROFILE
アパレルブランドでの要職を経て、2019年より「ハミルトンブティック 東京 キャットストリート」に勤務。〈ハミルトン〉の時計の素晴らしさを説きながら、日々接客に当たる。


ー「カーキ フィールド」コレクションの時計はいつ頃誕生したのでしょうか?
中神: 〈ハミルトン〉は軍用時計の開発と生産を請け負っていました。第一次世界大戦を皮切りに、アメリカ軍のミッションを遂行するためにより機能的な時計が必要だったんです。もともと〈ハミルトン〉といえば鉄道時計で有名ですが、当時の高い技術が安全な運行をサポートしていたことから、信頼が生まれたと思います。そこからときが経ち、現在の「カーキ フィールド」はベトナム戦争の時代のものを原型としています。


ー具体的にどんな機能が求められたんですか?
中神: 時を正確に刻む精度、そして耐久性です。ミッションを行うチームが同じ時間、同じペースで動かなければならないということで、ハッキング機能というものが備わっていたのも特徴です。
ーリューズを引いたときに秒針が止まる機能ですよね。
中神: そうです。いまではごく当たり前の機能なんですが、〈ハミルトン〉はその先駆者でもあります。現代に比べて当時の技術は拙劣でしたが、それでもあの時代においては先進的なものでした。
ー視認性の高さもポイントですか?
中神: 文字盤は光が当たって反射しないように黒ベースでデザインされ、数字は白抜きでコントラストを強くして時間が分かりやすく設計されました。光の反射によって敵兵に見つからないようにするための工夫です。
ー現在、「カーキ フィールド」にはたくさんの種類があります。

中神: 手巻きや自動巻き、クォーツなど、ムーブメントの形式にもバリエーションがありますし、素材もチタニウム、ステンレススチール、ブロンズなど、さまざまな種類があります。トータルで50種類以上あるので、お客さまが好きな一本を選ぶバリエーションは整っています。

ーその中でも「カーキ フィールド メカ」は手巻きで、デザインもオリジナルに近いものを感じます。
中神: そうですね。「カーキ フィールド メカ」はミリタリーウォッチの基本的なスペックが詰め込まれています。手巻きというのも現代ではポピュラーではない機能なのかもしれませんが、気づいたときにカリカリとゼンマイを巻き上げる作業を通して、時計に対する愛着がどんどん湧いてきます。巻くのを忘れて針の動きが止まっていると、どこか申し訳ない気持ちになったり(笑)。そしてこの機能美ともいえるデザインから、歴史に思いを馳せる方も多いんじゃないかと思います。
ー中神さんご自身も「カーキ フィールド メカ」を愛用されているんですか?
中神: もちろんです。私の周りでは80年代後半から90年代前半に「カーキ フィールド メカ」をつけることが当たり前でした。もともとアパレルの出身なのですが、当時先輩たちがつけていたりして、「その時計、どこのですか?」っていうところから入り、服だけではなくて時計の楽しさも教えてもらいながら、その魅力にどんどんハマっていきました。

ーこのお店へ「カーキ フィールド メカ」を求めにくるのは、どんな方たちですか?
中神: やっぱりこだわりを持つ方です。手巻きであることや、日差が前後15秒ほどあることを許容いただければ、めちゃくちゃおもしろい時計だと思います。ゼンマイを巻く作業を通して、一緒になにかを成し遂げられるような相棒的な感覚が生まれる。それをきっかけに時計の世界にズッポリとハマり、いろんな時計に手を出した結果、また「カーキ フィールド メカ」に戻って来られる方もいらっしゃるほどです。
ー長く使うことで生まれる愛着もすごそうです。
中神: そうですね。新品の状態ではピカピカしていますが、使ううちにケースに傷が付いたり、ダイヤルも焼けてフェードしてくる。その姿も愛おしくなります。「カーキ フィールド メカ」は基本的にステンレススチールのケースですが、ブロンズ製もご用意していて、そちらは経年変化がより出やすいです。

ーどのように変化していくんですか?
中神: 色がどんどん変化していきます。手巻きだとリューズを触る回数が多いので、そこから艶が出てきて、箇所によって色の差が生まれるんです。付属のベルトはカーフのヌバックなのですが、最初は起毛しているのが、これもどんどんツルツルとした質感に変わっていきます。ブロンズケースは他のブランドだと値段が一段と高くなるんですが、〈ハミルトン〉はその中でも控えめなプライスで出しています。なのでブロンズケースに憧れを持つ方々にも親しまれています。

ー中神さんが「カーキ フィールド メカ」を愛する理由はどんなところにありますか?
中神: 前職で長くアパレルの仕事をしていたこともあって、環境も含めて時計にもこだわりを持つひとが多かった。それに加えて世代的にもアメカジ全盛を経験していますから、こうした軍モノの時計というのは、無条件で惹かれてしまうところがあります。これまでにクォーツ時計を所有したこともありますが、勝手に動いてくれる時計に対して、なにか自分でアクションを起こさないと動かないという部分にも大きな魅力を感じます。私のように、手間をかけることに美徳を感じるひとにはすごく相性のいい時計だと思いますね。

ハミルトンブティック 東京 キャットストリート
住所:東京都渋谷区神宮前6-14-5
電話:03-3400-1181