
茨城県在住のアルパインクライマー。現在は、つくば市にあるクライミングジム「スポーレ」の店長を務める。2006年にカラコルム山脈K2(8,611m)南南東稜を世界最年少で登頂。また、2012年にはキャシャール南ピラー初登攀、2013年に第21回ピオレドール賞(仏)及び、アジアピオレドール賞を受賞するなど、日本有数のアルパインクライマーとして世界に名をはせる。
登山歴4年で8000m級のK2制覇。

ー登山は大学からとのことですが、それまでは何か運動をしていたんですか?
高校までサッカー部でした。ポジションはゴールキーパー。大学までは、登山には全く興味なくて、自然の中でやっていたことといえば、中学時代の虫取りくらいですね。クライミングにつながるかもと思うのは、ゴールキーパーの緊張感でしょうか。大学からは、違うことをやるつもりでした。『ナショナルジオグラフィック』の雑誌でロッククライミングの写真は見たことがあって、漠然とした憧れはありましたね。登山部の新入生勧誘のビラ配りにエベレストの写真が載っていて、登るのかな、なんて考えなら、結局山岳部に入ることになりました。
ー登山4年目でK2(8611m)に登頂されています。これはすごいことですよね。
僕が大学4年生の時に、大学60周年の記念で、希望すればK2に行けることはわかっていたんです。
それが頭にありつつ、その2年前にはウイグルにあるDolkn Muztag (6333m)を登ったりと経験は積んでいました。最終的には、K2に行ったのはチームで11人、山頂にアタックしたのは2人です。
ー8000m級といえば、簡単に人が命を落とすくらいです。恐怖心はないんですか?
その時はなかったですね。若気の至りというか、登ってやるぞっていうことにしか頭がいってなかった。今だと、先輩のアルパインクライマーが、40歳になって、今まで出来ていたことが出来なくなって、怖くなったという話は聞いたりしますね。

「足首をガチガチに固定するハイカットが多い中、こういう足首周りがソフトで、軽量なミドルカットは珍しい。でも、足首が動かしやすいので、僕のように、アイゼンを履いて、アイスクライミングやクライミングを伴う雪山を登るようなスタイルだと本当に役立ちます。僕にとっても目から鱗でした」(青木さん)
シューズ <Nordwand Light Mid GTX® Men ¥71,500 in TAX>
ー大学を卒業してからはクライミング一筋ですか?
実は、ちょっだけ就職をしていたんですが、平日働いて、週末に山という生活がきつくなって。それで仕事を辞めてからは、アルパインクライミングをやっていこうと決めました。

登りたい山は、佇まいの美しい山。
ー青木さんは、どういう山を登りたいと思うんですか?
山の造形がかっこいいもの、ですね。見た目のかっこよさ。山の佇まいは重要なんです。僕の周りのアルピニストもそう考える人は多いですね。急峻な山の方が綺麗に見えるし、登る斜面は垂直の方が見映えがいい。それを見て、どう登るかを考えます。自分の技術であれば、ここなら登れるかも、とか。


「ベースキャンプなどでもよく着ている、手首までカバーの付いたダウン。手首が暖かいだけで、全然違うんです。850フィルパワーで、冬キャンプでも寝られるくらい。実際に、冬山でビバークする時は、これで寝ました。6000m級の山をスピーディに登る時にテントなしで、オープンビバークという、雪を削って座れるスペースを確保してツェルトを被って寝たんですが、そこで使ってました。汗冷えしないように、ダウン100%ではなく、あえて化学繊維も背中側に入っています。また、針穴から冷えが入ってくる刺繍ではなく、圧着してダウンの各部屋が作られているというのも優れたディテールです」(青木さん)
ダウン <Eigerjoch Pro IN Hooded Jacket Men ¥86,900 in TAX>
ー山の高さとかそういった記録ではなく、山の佇まいというのはアーティスティックですね。
記録にこだわる人と、山をどうやって登るかにこだわるタイプに分かれると思います。例えば、記録の人は、8000m級の山々を制覇していくわけですが、ルートはすでに誰かが登ったルートを辿っていくわけです。僕みたいなタイプは、未踏のルートにこだわる人が多いです。その斜面を想像して、どのルートや装備で行くかを登る前に考えます。岩がメインか、氷か雪なのか。日が当たるか、日が当たらないか。寒い場合は、着る量を増やしたら、食事を切り詰めたり、とか。中には、荷物の量を、1g単位で切り詰める人もいます。

ークライミング界のアカデミー賞と言われるピオレドール賞を2013年に受賞しています。どういうことが評価されての受賞なんでしょうか?
前年2012年キャシャール峰(6770m)の南ピラー初登を評価してもらいました。初登で綺麗な登り方というものが評価されるんです。例えば、岩をドリルで穴を開けたりして、自然に負荷をかけて登るのはよくありません。受賞して単純に嬉しかったですね。それまでにも、日本人でこの賞を受賞している方もいて、日本人クライマーの凄さを僕自身が実感していたりしていて。実際に、キャシャール峰を登り終えた時は、ピオレドール賞を獲れるかもなんて冗談半分で仲間と話していました。

「暖かいだけでなく、格子状のシートが組み込まれていて、湿気が抜けやすいんです。ポーラテックアルファは、ミリタリー用として、寒いところでも暖かいところでも使えるように開発されました。着ていても、熱がこもらず、暑くなりすぎず、寒くなりすぎない、優れもの」(青木さん)
ジャケット <Eigerjoch IN Hybrid Jacket Men ¥42,900 in TAX>
ー受賞後は、モチベーションなどは変わりませんか?
登りたい山はいくらでも出てきます。自分の中でも、登りたい山のリストがあって、それをタイミングや予算、自分のコンディションや技術などを考慮して挑戦していきますね。

若い頃と経験を積んだ変わった登山への姿勢。
ー家族の理解も重要ですよね?
家族は、理解してくれていますね。ヨーロッパだと2週間くらいで済みますが、アジアの山だと2ヶ月とかかかっちゃうんです。それで登れなかったら、お金と時間だけかかって何も残りません。
ーそれは辛いですね。
若い頃は、山なんてどんどん挑戦して、落ちて失敗を経験してなんぼ、という考え方でしたね。挑戦してみてダメなら次、ということでしたけど、今は家族もいて、年もとり、一回一回の登山を濃くするようにシフトしましたね。計画から練習までちゃんと考えるようになりました。

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タイツ
<Aconcagua ML Tights long Men ¥16,500 in TAX>「家を出発する時から、アプローチ用にも使える、暖かいフリースパンツです。この一枚外にアウターとしてゴアテックスを着用して、冬山を登ることもできます。膝は立体裁断で歩きやすい名作パンツ」(青木さん)
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グローブ
<参考商品>「2ウェイのグローブ。中は、中綿の暖かい部屋と、岩の感触をダイレクトに感じたい部屋に分かれています。付け替えしなくていいのがメリット。登る前にこの手服をダウンの中に入れておくと、指を初めて入れた時も冷たくありません」(青木さん)
ー山で食べるもので、これぞというものはありますか?
山で食べる、カップヌードルが本当に美味しいんですよね。例えば高山病の時には、美味しくて食べたくなるものが重要なんです。だから、カップヌードルはいくつも持っていきますね。
ーマムートのギアですが、その優位性はどこにあると思いますか?
特筆すべきは、アイガーシリーズは、アスリートと2万時間も使って研究開発しているというところでしょうね。例えば、その結果生まれたギアがものすごく軽いから山をスピーディに登ることができるようになったり。僕も以前6000m級の山を登るときに、一泊二日で登ったこともあります。ギアがプロの新しい視点で開発されることで、山の登り方が変わる。そうやって、登山のスタイルと密接にリンクしているのが、マムートの面白さだと思います。
カラビナとスリング

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ヘルメット
<Wall Rider ¥16,500 in TAX>「ウォールライダーと呼ばれるヘルメットで、落ちてくる氷や岩から頭を守ります。後頭部部分が軽量化されているのは、クライミングの時は、上を向いて登るので、後頭部に岩が当たることはほとんどないから。岩がヘルメットに当たった時に、衝撃のポイントをずらしてくれる機能を初めてクライミングヘルメットにつけたのが、マムートだと聞いています」(青木さん)
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ハーネス
<参考商品>「アルパイン用で軽くて、耐久性が高いダイニーマを生地として使用しています。色々とハーネスにつけることが多い、プロ登山家用のもの。これこそマムートが作る意義がある、専門性が高いものです」(青木さん)
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カラビナ
<参考商品>スリング
<Contact Sling 8.0 ¥2,860 in TAX ※長さによって値段が異なります。>カラビナとスリングは自分の全体重をかける、つまり自分の命を支える大事なもの。岩の隙間にハーケンを打ち込んだりして、ロープをかけて、このカラビナにつなげます。スリングはダイニーマと言われる、ポリアミドという素材。登山用のしっかりした素材で、どちらも2トンまで荷重可能です」(青木さん)