奥村太朗 / エレクトリック ブランドマネージャー
機能性とカルチャーを巧みに融合させたカリフォルニアのアイウェアブランド〈エレクトリック〉を日本で取り扱う、株式会社チャーリーの代表取締役を務める。少年期に父からバスフィッシングを教わり、サーフィン、スケートボードを経て、3年ほど前にバスフィッシングへ戻って来た。まだ見ぬサイズのバスを求めてほぼ毎週末、千葉県の亀山ダムへと通う。
真冬の釣りでは、防寒具は釣り道具よりも重要なギア!?
ーまずは釣りのルアーの大きさにびっくりしました。
ぼくらがやっているのは、バス釣りの中でもビッグベイトと呼ばれる、デカいルアーでデカい魚を釣るジャンルです。ここ数年通い続けている亀山湖のレコード(記録)を超えるサイズのバスだけを狙ってます。大型のバスは小さいのと違って、寒い冬でも動けるから、ビッグヘイターにとってはこれからの時期から2月くらいまでがベストシーズンになるんです。
ーとなると、相当寒いなかで竿を振るんですね。
だからこそ、このダウンは間違いなく大活躍するでしょうね。冬の湖畔は、ライン(釣り糸)が凍るくらいの氷点下になることもあります。そんな状況で、10時間とかボートの上にいるんです。一度体を冷やして岸に上がると、もう湖には戻れない(笑)。だからこれくらいの暖かさを保証してくれるスペックが必要だし、重ね着しても動きが邪魔されないのもいい。釣りは、どれだけいい技術や道具を持っていても、寒いと投げ続けられない。釣り具にこだわるのはもちろん大切ですが、サングラスや防寒着はもっと重要なギアだと思うんです。
ー話をお伺いしていると、冬の釣りはエクストリームスポーツのようですし、装備はかなり重要そうですね。
はい。特に冬は厚手のグローブをつけるので、ジップのスライダーが小さいものだと動かしずらい。その点、これはスライダーにコードが付いてるので開閉も楽です。それと、ポケットがフラップ仕様なのは、極寒地でも凍りにくいように、という考えなんでしょうね。さすがトップオブトップの登山家をサポートしているブランドだなと随所から感じます。
ー実際に竿を振ってみていかがでしたか?
一見スローに見えるバスフィッシングですが、ルアー交換などで立ったり座ったりを繰り返しますし、魚のコンディションなどをいろいろと想像しながら、500回くらいキャストするんですね。このダウンを着ながら振っていても、背中のつっぱりが全然気にならなかったので、肩周りの可動性がしっかり考慮されているなと。
それに、キャップやハットを被っても問題ないくらいフードが大きいし、首回りに高さがあるのでネックウォーマーをつける必要もないですね。これまでいろいろなダウンジャケットを試してきていますが、これほど軽くて暖かいのは珍しい。やっぱり重いものだと肩も凝るし疲れるんです。
ーサイズはLかXLかで迷われていましたね。
私服だったらLサイズをチョイスするんですが、着丈の長さを考えてXLにしました。というのも、釣りの時はボートに座るとお尻まわりが濡れることがあるんです。だからお尻まで隠れる長さにしました。それに天気予報が雨の時には必ず釣りに行くんで、やっぱり防水なのはありがたい。
ー雨は釣りにとって、いい条件なんですか?
そうですね。雨が降ると、酸素が増えて魚が活性化する場合があるんですよ。
チャンスを一ミリも逃したくない。
ーシティユースとしては、どうですか?
十二分に暖かいダウンですよね。でも、いまは至るところで暖房が効いているから、脱いだときは薄着でいいじゃないですか。普段使いで着るなら、この下はロンTくらいで十分でしょう。あと、スナップボタンが簡単に開閉できて使いやすいし、このピスみたいなボタンの面構えもかっこいい。
ーなるほど。今日はお伺いしていて、バス釣りとアウトドアウェアの共通点が色々と見えてきました。
関東では竿もラインもオーバースペックだと思われるくらいのものを使っているんですけど、やっぱり釣れるチャンスがあるときにそのタイミングを一ミリも逃したくないんです。だから、道具や装備すべてのクオリティに妥協しません。安いものじゃ誤魔化せないんです。例えば、今日かけている〈エレクトリック〉のサングラスだってそう。紫外線さえ防げればOKというサングラス業界の常識を超えて、太陽光のブルーライトまでカットしてくれる。偏向レンズなのはもちろんだし、夏場の強い日光にも対応するサングラスとして、アングラーにも人気なんです。
ー奥村さんがレコード破りのバスを釣るのが楽しみです。
ワンシーズン投げ切って、意中のサイズが一匹取れるかどうかの世界です。ここ数年で一番嬉しかったのは、去年の1月11日に亀山湖で釣り上げた、50センチアップの魚。実際にこれを釣り上げたら絶対にレコードが取れるというサイズのバスを、亀山湖で見たこともあるんで、ぜひ取りたいですね。
横瀬裕貴 / SUNDAYS BEST オーナー
下北沢の某有名スポーツショップの勤務を経て、10万円とパソコンを元手に友人とスケートショップの運営をスタート。2014年4月に独立し、アメリカを中心に日用雑貨やスケボー関連商品、オリジナルのアイテムを揃えた「SUNDAYS BEST」を中目黒にオープン。自転車のメンテナンスは、お隣の「25LAS BICYCLE WORKS」に依頼している。
お気に入りの色は、そのネーミングもいい。
ー「SUNDAYS BEST」っていい響きですよね。どういう意味なんですか?
日曜日のミサに行くための「よそ行きの服」という意味です。日曜日が最高、というわけではないけどなんかいいなと思って、同じ名前のカリフォルニアのバンドを知っていたから、使っていいかとメールしたら快諾してくれて。
ーよそ行きというより、逆に普段着や日用品が揃っている印象です。
アメリカの西部から中西部のニューメキシコあたりまで買い付けに行くんですけど、スリフトショップ(寄付で集めた古着や家具・家電などを販売するリサイクルショップ)が好きで好きで。特に、あの商品の置き方とか雰囲気とか。変なものがあったり、陳列もごちゃごちゃしている感じが堪らないんです。LAのダウンタウンの問屋とか、浮き輪からハシゴまで揃っているような店にも行きますが、天井までモノが積んであるんですよ。
ーなかなか狙ってはできない、雑多な陳列ですよね。
相当適当じゃないと難しいですね。やっぱり、どうしてもキレイに並べちゃうじゃないですか。うちの店もできるだけ適当にしようとは思ってるんですけどね(笑)。
ーお店までの通勤は自転車ですか?
そうです。30分かけて... がんばれば20分くらいですけど(笑)、春夏秋冬乗ってますね。フレームも年季が入っていて、一度折れたので溶接してもらって直しました。
ーこのシェルジャケットが、自転車スタイルにぴったりでした。
自転車に乗るとき、シェルは役立ちますね。風を通さないから、インナーが薄着でもいける。それに、ある程度乗ると暑くなってくるけど、このジャケットはゴアテックス生地なので蒸れないし、フロントのジップや脇下のベンチレーションで調整できる。カッパだと蒸れちゃうから、雨の日に着るアウターとしても最高。フードがあるので、雨よけにもなりますし。
あと、このジャケットは、ジッパーのコードがつまみやすくて、冬でも手袋をしながら開閉できるのがいいですね。ネックのジップを引っ張るだけで、フードの締まり具合が調整できるのも楽チンです。
ーこの「spicy」という色がかなりお気に入りのようですね。これはアメリカのブランドとは一味違う、ヨーロッパらしい“合間”のカラーです。
いい名前ですね、「spicy」。このオレンジとも言えるくらいの朱色っぽい赤がいいんですよね。赤色って他人が着こなしてるのを見るとかっこよく思えるじゃないですか。この赤なら、今日のような普通の格好でもなんでも合いそう。黒のパンツと合わせたら、モードぽくも着られそうです。
ーゆったりめのXLサイズを着用されていましたね。
中に着たスエットもそうですが、アームホールの太い服が多いので、個人的にはXLの方がいいですね。もちろん、登山する人たちはジャストサイズを着た方がいいのはわかっていますが、街着としてならぼくはXL一択。あと、自転車から下りるときにサドルに裾がひっかかることが多いので、こうやってドローコードでぎゅっと絞れるのはいいですね。丸っこいフォルムはもともと好きですし。
ーそのほかでお気に入りのポイントはありますか?
裾にマムートカラーのオレンジのピスネームのようなタグがあるのがいいなと。ロゴはなくて目立たずひっそりと入っている感じがポイントですね。フードの形もきれいだし襟のシルエットも良くて、特に襟を下ろした時にこそ、このかっこよさが映えるんじゃないかと。
現地で見たものがインスピレーションになる。
ー海外に買い付けに行く時には、どんなものを買うのか指針はあるんですか?
買いに行くというよりは、見に行く感覚なんですよね。オリジナルアイテムのデザインのアイデアを探したり、街ゆく人を眺めるだけでも楽しい。ファッション的に“映える”ものは日本に代理店があることが多いので、なんでもない大量生産品を狙います。買うのも3PパックTや洗剤などの日用品が多いです。
ー日用品のパッケージも見ていて面白いですよね。
パッケージとかダンボールは好きですね。オリジナルアイテムのグラフィックはそういうものや看板などをヒントに考えるんですけど、やっぱり実際に行って、見ないと思い浮かばない。うちのオリジナルの服は、“ウォルマートとかに売ってそうなストアブランド”という位置付けで、どれも安くしてあります。高くていいものはいくらでもありますが、安くていいものをつくるのはやっぱり大変なんです。
ーコロナでなかなか海外に気軽に行けない状況が続いていますが、今後のご予定は?
来年2月くらいにはアメリカに行きたいなと。行けたら博物館のお土産屋を目指します。博物館自体も好きなんですが、自分用も含めていろいろと買うのがやっぱり楽しいんです。
日高奨平 / CAPTAINS HELM ストアマネージャー&プレス
『CAPTAINS HELM』 TOKYOストアは、西海岸テイストと東京でのライフスタイルをミックスしたセレクトショップ。オリジナルアパレルや国内外のリアルブランドを多数展開するほか、感度が高いローカルの溜まり場となっている。日高さんはヘッドショップの顔となるストアマネージャー&プレスを務め、プライベートではキャンプ、サーフィン、ゴルフ、厳冬期のスノーサーフィンをこよなく愛するアウトドアフリーク。
このダウンだけは、キャンプでも使える。
ーキャンプ、サーフィン、ゴルフ、スノーサーフィンと外遊びのバリエーションが豊富ですね。肌もそれで焼けているんですか?
そうです。海から5分くらいのところに住んでいるので、サーフィンは波次第で週3回くらいします。「CAPTAINS HELM」周りでは釣りが流行っているんですが、ぼくがやっていないのは釣りくらいですかね。
ーキャンプにはどんな格好で行きますか?
レイヤードスタイルが多いです。キャンプは、一緒に行く人たち含めて家族連れが多く大所帯。そのなかで男はテントやタープを設営したりと準備が多いので、まずは動きやすさを第一に考えます。それにレイヤードを前提にしていると気候に合わせて寒ければ着ればいいし、暑かったら脱ぐこともできる。それが一番のメリットですね。とはいえ、キャンプだけならこのスタイルには行き着かなかったとは思いますが...
ーというと?
厳冬期のスノーサーフィンが理由ですね。雪山は高低差によって、10〜15℃くらい気温が変わるのでレイヤリングしなくちゃいけません。昼夜で気温がグッと変わるキャンプも同じだと気づいて、レイヤードを取り入れるようになりました。
ーダウンはどんな使い方をしますか?
大振りでかさばるようなダウンはあまり着ません。動きづらくなってしまうし、ナイロン地だとキャンプの時は火の粉で穴が空いてしまうので。でも、〈マムート〉のダウンは、ライトウェイトでかさばらないし、動きやすいんですよね。コンパクトだからインナーダウンのようにも使えて、この上に不燃性の焚き火用ポンチョを着れば問題ありません。
ーパッカブル仕様なので、持ち運びも楽です。
ゴルフでも使えますね。プレー以外の何もしていなくて寒い時に、パッと羽織れます。キャンプも、やることさえやってしまえば座っているだけのシーンもあるから、これくらい暖かいダウンは便利ですね。バックパックに入るので、雪山でも使えそうだなと。
ー腕周りなどの可動性はどうですか?
今日もキャンプ道具などの荷物を車の荷台に出し入れしましたが、腕も動かしやすいし、突っ張る感じはないですね。積み込みくらいの動きでもかなり温まってきたので、保温性も抜群です。
ーこのグリーンもキャンプシーンにハマりそうですね。
最近はキャンプが流行っていて、キャンプサイトでもダウンをよく見かけますが、このグリーンは、オリーブグリーンでもないし、よくあるグリーンとも違う色ですよね。落ち着いた色味だから、コーディネートは組みやすそうだし、キャンプサイトでも映えるカラーだと思います。ドローコードのストッパーがオレンジっていう色合わせも面白いですね。
ショップは、買い物だけするところではない。
ー「CAPTAINS HELM」は、サーフィンを始め、キャンプや釣りなどの大人の外遊びを提案しているお店ですよね。アイテムはどういうものが揃っているんですか?
8〜9割くらいはオリジナルのものです。デザインはキャンプ場でも都会でも使えるように、そのバランスを大事にしています。たとえばキャンプのみ、街使いのみだと、服の用途がひとつ無駄になってしまう気がする。実際、日本の冬は寒いから、アウトドアも街も同じスペックで着られます。だから見た目のデザインは、どちらのシーンでも使えるようにしてますね。
ーいまや珍しくない、カフェスペースのあるアパレルショップですが、このお店は先駆者的な存在ですよね。
ほかの同じようなショップもそうだと思いますが、服を買うだけの場所というより、コミュニティスペースであり、情報交換の場所を提供しているという感覚なんです。やはり遊びを楽しむ人たちって、情報交換が当たり前じゃないですか。どこどこの雪山が良かったとか、ここの波が良かったとか、アウトドアは特にそう。だから、買い物だけじゃなくて、人と繋がって、情報交換をする場所として居心地がいい空間をショップに併設しているんです。