「夏が来れば思い出す〜」でお馴染みの尾瀬にこの初秋、ひとつの変化が起きました。それが「星野リゾート」が運営する「LUCY尾瀬鳩待 by 星野リゾート」の誕生です。“心揺さぶる山ホテル”をコンセプトにした「LUCY(ルーシー)」初の宿泊施設はいったいどんな感じなの?ってことで、1泊2日でゆるり尾瀬ハイクへと向かいました。
Photo_Masashi Ura
山小屋ではなく山ホテル。
東京を出発して約3時間ほど。今回向かった先は、1890年に開山したハイカーの聖地・尾瀬。
4つの県にまたがる「尾瀬国立公園」の面積は約43,200ヘクタールと広大で、代表的な入口は3箇所あります。なかでも、もっとも有名なのが群馬県側に位置する鳩待峠。今年9月1日に、尾瀬の玄関口として知られるこの場所に「LUCY尾瀬鳩待」が開業しました。
老朽化により43年間の営業に幕を下ろした「鳩待山荘」に代わり誕生したこの施設は、「星野リゾート」の新業態「LUCY」初の宿泊施設。日本の観光が都市部や文化観光に集中していることに気づいた「星野リゾート」が、もっと気軽に不安や負担を少なく自然観光を楽しんでほしいという気持ちを込めた新ブランドです。
この「LUCY」では、一般的な山小屋とは異なる山ホテルという言葉を用いました。そして、”プライベートな寝室”“いつもの温水洗浄トイレ”“シャワー&パウダールーム”“肉・魚・卵の贅沢ごはん”“ホテル内にラストコンビニ”“充電・Wi-Fi無制限”という6つの機能をブランドプロミスとして掲げています。
たしかに内装や時間により調光されるライトなど、どこを取ってもホテルクオリティ。だからといって無機質な感じはなく、とても自然と調和した設えです。ハイキングや山登りというと通常は早朝出発となりますが、今回は昼過ぎ到着でゆっくりと備え、翌日にゆるく尾瀬ハイクにでかけることに。
建物は2階建てで、受付から左へ進むとラウンジ兼食堂と24時間営業の通称“ラストコンビニ”こと「Food & Drink Station」があります。
朝食にぴったりなオリジナルのいなり寿司やうどん、カップ麺、ドーナツ、スナック類などの食料が揃うほか、コーヒーやスポーツドリンク、オリジナルの飲むあんこに〈片品ブリューイング〉によるクラフトビールまでも豊富な飲料がスタンバイ。ここでしか手に入らないオリジナルのグッズなども多数並び、見ていて楽しいラインナップです。
客室は2階にあり、ツイン、フォース、ドミトリーの3タイプを用意。山小屋では、見知らぬ人と同室になり雑魚寝なんてこともありますが、「LUCY尾瀬鳩待」では各自がしっかりとプライベートな寝室を確保できます。
しかも、電源とWi-Fiを無制限で使用可能。宿泊したツインルームにはエアコンが完備され、ベッドサイドにコンセントが2口とUSB-Aポートが1口ありました。Wi-Fiは「星野リゾート」共通となっているので、どこかに泊まったことがあるひとなら着いた瞬間から使用可能という便利さです。
爽やかなカラーリングのトレイ、シャワー&パウダールームは共用です。どこもしっかりと広さがあり、いつも通りの温水洗浄ができ、シャワーも温かなお湯がしっかり出る。
石鹸などの使用ができない山小屋もありますが、ここでは「星野リゾート」オリジナルのトイレタリー用品が揃うシャワールームが3室あり、不満なく心地よい時間を過ごすことができました。
夕食はホテルの向かいにある「はとまちベース Cafe & Shop by 星野リゾート」で17時にスタート。ここは宿泊者以外も利用できる施設で、ひと足先の8月にオープンしました。15時30分までは蕎麦を、16時まではソフトクリームを頼むことができます。
それらは翌日の楽しみに残して店内を巡ると、飲食だけでなくオリジナルのスーベニアや地域のお土産もの、〈ザ・ノース・フェイス〉と〈モンベル〉のアイテムも。忘れ物がないかなんて確認しながら、明日持ち帰るお土産なんかを考えているとあっという間に時間が過ぎてしまいます。
17時スタートの夕食は「LUCY豚汁ご膳」。
夕食は宿泊者のみが食べられる「LUCY豚汁ご膳」を。豚汁を中心に、栄養バランスを考えた肉・魚・卵をしっかり取れるメニューです。
着席時間に合わせて温められた豚汁には、崩しながら食べるすくい豆腐や大きめにカットされた野菜がゴロゴロ入っていてボリューム満点。しかも、ごはんはおかわりも大盛りも自由ということで、豚汁で1杯、サバの焼き浸しで1杯、半熟卵の揚出しで1杯と、めちゃくちゃごはんが進みます。
大満足で食事を終えたら、夜は自由時間。ラウンジにある山にまつわる本を読むのも、テラスや部屋でお酒を飲むのも、Wi-Fiを使って仕事というのもあり。各々が好きな場所で好きなように過ごし、ゆったりとした時間が流れます。
おすすめは、パラコードと「LUCY」オリジナルの鈴を使った熊鈴づくり。好きな色のパラコードを選び、実際に自分で編み込むので、いい思い出づくりになります。難しそうに感じますが、説明書を読みながらつくってみると、意外と誰でも簡単にできるのです。
秋雨の尾瀬ハイクもあり!
この「LUCY尾瀬鳩待」のコンセプトは“最高の尾瀬ハイクがはじまるホテル”。つまり、あくまで尾瀬があってこそなのです。
しかし、山の天気は行ってみるまでわかりません。ハイキングに備えて早めに就寝したものの、朝を迎えるとあいにくの雨。“ラストコンビニ”で朝食を頬張り、悩んだ末にいざ尾瀬ハイクへ。
尾瀬はところどころに熊鈴を設置している。でも、熊鈴は忘れないように。
至仏山を経由するコースなどもありますが、今回は昨夜から降り続く雨を危惧して、日帰りハイクで一番オーソドックスな尾瀬ヶ原コースをピストンで。下りからスタートし、山ノ鼻を越えたのち、竜宮で折り返すルートです。
不要なモノをロッカーに預けられたり、シャトルバスの始発前に出発できたりするのも「LUCY尾瀬鳩待」をスタート地点にする利点のひとつ。身軽に動け、ひとに抜かれたりすれ違うことがほとんどなく、とても歩きやすい。ほどほどの雨は転倒さえ気をつければ、直射日光のツラさがなく、意外とラクに歩けます。
日帰りハイクの折り返し地点として挙げられる「龍宮小屋」。
雨でも変わらず歩荷(ぼっか)さんの姿が。70kg以上の食料などの物資を背負い、山小屋に運んでいる。
尾瀬の木道は登山のような起伏が少なく、遠足中の小学生にも遭遇するほど、誰もが楽しめる場所。青空が抜けているザ・尾瀬の風景もいいけれど、雨の尾瀬もまた幻想的で風情を感じられました。
最後の登りに苦労しつつも12時前には戻り、乾燥室で濡れた山道具を乾かしてもらいつつ、ひと息ついたら「はとまちベース」でランチへ。
「湯葉きのこのあんかけ蕎麦」に牛肉のしぐれ煮と温泉卵を追加トッピング。
尾瀬名物の「花豆ソフトクリーム」は、ザラッと感が少なくとてもミルキー。
ランチで提供しているのは、3種の合わせ出汁に2種の湯葉ときのこが入った「湯葉きのこのあんかけ蕎麦」。あたたかで味に深みのあるつゆと十割蕎麦の組み合わせは、疲れた身体にスーッと入っていきます。あっという間になくなってしまうのでご注意を。
そして、尾瀬に来たら尾瀬名物「花豆ソフトクリーム」も注文せずにはいられません。しょっぱみとミルキーな甘みに癒やされ、大満足で帰路へと着いたのでした。
山小屋にはない居心地のよさを感じられる“山ホテル”「LUCY尾瀬鳩待」は、今回のような尾瀬の始まりにも、歩き終わったあとの帰り際に泊まるのもあり。今年の予約はほぼ埋まってしまっているようですが、来年以降は毎年の営業期間を鳩待峠の開通日程が発表後に決定するようです。やっぱり、初夏〜夏の尾瀬の風景もまた最高なのです。
6月末の尾瀬の風景。
LUCY尾瀬鳩待 by 星野リゾート
営業期間:~2025年10月25日(土)、毎年春頃〜秋を予定(以降、鳩待峠の開通日程が発表後に決定)
住所:群馬県利根郡片品村大字戸倉字中原山898-14
アクセス:関越交通 乗合バス 鳩待峠駅下車 徒歩3分
電話:050-3134-8099(LUCY予約センター)
チェックイン/チェックアウト:14:00/10:00
客室数:25室
料金:¥11,550〜(1泊1名)
オフィシャルサイト