日本における総合ライフスタイルショップの走りとして、15年以上にわたりシーンを牽引してきた「ビオトープ(BIOTOP)」。トレンドと適切な距離感を保ち、独自のセレクト、キュレーションを徹底することで、ショップはブランドとなり、多くのファンを惹きつけるに至っています。時間をかけて店舗数を増やしてきた「ビオトープ」が近年、出店ペースを加速させています。先日オープンした5店舗目となる札幌店にて、これからの「ビオトープ」について、クリエイティブディレクターの迫村さんに話を伺ってきました。
PROFILE
2001年「ジュン(JUN)」に入社。ショップスタッフを経て、「アダム エ ロペ(ADAM ET ROPE’))」と「ビオトープ」の責任者でありクリエイティブディレクターに。現在は「ビオトープ」のクリエイティブディレクター兼、「ジュン」の常務取締役。
5店舗目の「ビオトープ」。
ーこれまでの「ビオトープ」は、新しい店舗を作るのに4〜5年くらい間隔が空いていたと思うんですが、去年神戸がオープンして今年札幌という感じで、ペースが上がってますよね。
迫村:そうですね。今まで僕は「アダム エ ロぺ」も含めて見ていたんですけど、そっちはメンバーも育ってきたということで、今後はこっちにもう少し集中できるような環境になってきたんです。「ビオトープ」を単独の事業として捉えるようになったので、そうなると投資とか意思決定のスピードが上がりますし、お店が作りやすくなってきたところはあると思います。
ーなるほど。では今後も「ビオトープ」の新しいお店には期待できるわけですね。
迫村:本当は、去年神戸と札幌を出したかったんですけど、結果的にこのタイミングになりました。なので1年に1店舗くらいなのかなという感じはしています。
ー元々札幌で探していたんですか?
迫村:そうですね。5年くらい前からリサーチしていました。何回か見てきて、土地感がついてきて、ここはいい物件だなとわかってきたんです。雪が降ると札幌は(ビジネスが)キツいって聞いてたんですけど、目の前の円山公園は雪が降った日の方が人がいるんです。自国で雪が降らない外国人の方とか。なので雪の日でも、ある程度は集客できるだろうという読みもありました。
ーこれまで札幌という土地をどのように見ていましたか?
迫村:ビジネス的なポテンシャルは間違いなくあると思ってました。我々もグループとしては多くのデベロッパーさまに出店しているので、その数字を見たら大体わかるんです。なので、その辺の経済性も踏まえて見に来ていましたね。
ー地下鉄の駅も近いですしね。
迫村:はい。「円山公園駅」はすぐそこです。こっちの人って結構地下鉄で移動してるみたいなんです。あとはクルマですね。札幌駅からもタクシーで10分くらいで来れるので、意外と便利な場所だと思います。
ーこの辺りは住宅地としても、わりと裕福な方が多くお住まいのエリアなんだとか。
迫村:昔から文化度の高いエリアで、ギャラリーとか結構あったみたいです。3軒隣がアメリカ領事館なので、やっぱり品がいいというか。
ー先ほどお話にも出ましたけど、ここは円山公園に隣接しているというのがすごく大きいですね。
迫村:そうなんです。公園のなかにお店があるような感じに近いので。
ーお店からの眺め、借景がとてもいいですよね。
「ビオトープ」のオリジナル性について。
ーこの札幌店で5店舗目になりますが、改めて「ビオトープ」らしさについて教えてください。
迫村:とにかく、“遊びに行ける場所”であってほしいなと思っています。お洋服の並びももちろん重要なんですけど、レストランがあって、生活用品が買えて、ゆっくりできて、スタッフに会いに来れるというのを一番重要視しているんです。なので場所がすごく重要なんです。
ーというと?
迫村:遊びに行く場所って、たまたまじゃなくてわざわざじゃないですか。週末「ビオトープ」行きたいなとか、 晴れてるし「ビオトープ」行くかとか、そういう存在にどのお店もなってほしいんです。
ーなるほど。ゆっくり滞在してほしいとなると、やっぱり飲食も大事になってきますよね。
迫村:そうですね。洋服だけの勝負となると、いくらでも真似できるじゃないですか。なので何で違いを出すかとなると、場所の作り方で違いを出すということですよね。
ーセレクトショップに限りませんが、リテールはそういうところを磨かないと勝負できないフェーズに来ていますよね。どのブランド、ショップも、お店の開発にお金と時間をかけるようになっていると思います。そしてそうなると、ある程度の広さは必要になりますよね。
迫村:そうなんですけど、これまでのように色々なコンテンツがあるお店だけではなく、今後は小さい「ビオトープ」を作ってもいいのかなとは思っています。ただ小さいだけではなくて、何かしら違うコンテンツを盛り込んだお店というか。
ーちなみにお客さんの男女比ってどんな感じなんですか?
迫村:半々ぐらいですね。どちらにも来てほしいなと思っているので、それはある程度達成できていると思います。自分が男なので、男っぽくなりすぎたらダメだというのは、常に意識しています。
ーバイイングは基本迫村さんが担当されているんですか?
迫村:そうですね。ウィメンズは去年新しいスタッフが入って、そのスタッフにある程度任せています。ブランドを新しく始めるとか辞めるとか、そういうときには逐一確認していますが。
ー取り扱いのブランドが頻繁に入れ変わってるイメージはないです。
迫村:そうですね。付き合ったら結構長いタイプです。やっぱり今までのブランドを超えるようなものが出てこないと、なかなか変わってはいかないですよね。あとは、メンズに関しては自分が着るかどうかというのが基準になっているところがあります。
ーそれっていわゆる個店さんだったら当たり前だとは思うんですけど、「ジュン(JUN)」くらい大きい事業体のなかで、そのバイイングのやり方が成立しているのが素晴らしいことだと思います。
迫村:それをやらせてくれている会社には本当に感謝しています。でも、こういうのって少ないフィルターの方が、匂いが伝わるのかなと思うんですよね。
ー強く個人的な思いの方が、結果として多くの人に刺さるってやつですよね。確かにそういうところはあると思います。ちなみに「ビオトープ」でやらないと決めていることってありますか? ブランドって何をやるかと同じくらい、何をやらないかがすごく重要だと思うんです。
迫村:明確に言語化して伝えてはいないんですけど、商品の仕入れを僕が担当していて、自分が着ないものを置かないという時点で、やらないことはかなり多いですね。例えば自己主張が強い派手すぎるデザインや、ロゴがドーンとなってるものはないですし(笑)。
ー確かにギラっとしているものがあるイメージはないです。
迫村:そもそも、自分で取捨選択できるお客さんを相手にしたいと思っているんです。
ー何々が流行ってるから買う、じゃなくて。
迫村:そうです。流行ってるからこれを着ておけば安心という考え方もあると思うんですけど、あくまで自分で選んでいきたいという方に対して、我々スタッフがアドバイスしたりとか、そういう感じにはしていきたいですよね。ブランドごとに並べていないので、一見すると分かりづらいかもしれないですけど。
ーその分、探して発見する楽しさもありますよね。
迫村:服を一つづつ見ていって「いいな」と思って見たら、こういうブランドでこういう値段だった、というようなことを受け入れてもらえるのが一番嬉しいですね。「自分はインポートしか着ないんです」みたいな方って昔はいたと思うんですけど、最近はいないです。そういう感覚じゃない形で買い物を楽しんでもらえるような方たちに来ていただきたいので、ブランド切りの並べ方をあんまりしてないんだと思います。
ーわかります。すごく編集された売り場だと思います。
迫村:値段が高かろうか安かろうが、自分がいいなと思ったものを揃えているので、同じような感覚で、30万円のシャツの後ろに、5,000円のTシャツを置いていたりします。
ー「ブランドはお客さんを選べない」というのはよく聞く話ですが、お店に関して言えば、商品の選び方、置き方、スタッフさんの接客などで、こういう人に来てほしいというのを実現できるのかもしれないですね。
迫村:そう思います。なのでスタッフはとても大事ですし、お店を増やしたことで薄まらないようにはしたいなと思っています。
ーオリジナルに関しての考え方も聞かせてください。
迫村:純粋なオリジナルもたまに出しているんですが、それはわりとシンプルなものが多いですね、カットソーとか。将来的にはもう少し色々とやってもいいのかもしれませんが、やっぱり取り扱わせてもらってるブランドさんを超えるようなものをとなると、なかなか作り出せないので、何か視点を変えないといけないなと思っています。
ー今って、セレクトショップがすごく難しい時代になってきていると思うんです。差別化が本当にしづらいですし。そんな中で「ビオトープ」が今のような状態をキープしている、できているというのが本当に素晴らしいですよね。それがブランドということなんだと思いますが。
迫村:自社製品を作るメリットはもちろんわかるんですが、一方で抱える人数も増えると思うんです。生産、パタンナー、企画。それがメンズとレディースだったら倍の人数が必要ですし。うちには「ビオトープ」から派生した〈ヨー ビオトープ(ë BIOTOP)〉がありますが、やるとするなら、こんな感じでしっかりとブランド化していく方法になると思います。
ーたしかに〈ヨー ビオトープ〉は、いい意味でお店のオリジナルとは思われていない気がします。
迫村:単純に利益を目的としたオリジナルは、さっき言ったような取捨選択できるお客さんからすると本当に魅力的なのかなと。ただ、オリジナルが一番強いとも思うんですよね。海外に出張に行って自分で買い物するものって、ご当地にしかないアイテムだったりするわけで。そういう意味では、オリジナルって本来は嬉しい存在でないといけないんだと思います。
ーなるほど。
迫村:昔、ニューヨークの〈フリーマンズ スポーティング クラブ(FREEMANS SPORTING CLUB)〉に行ったとき、めちゃめちゃテンション上がりましたからね。まだ日本に入ってきてなかったので。
ー上がりますよね、そういうとき。出張ではアメリカにも行かれるんですか?
迫村:コロナの直前までは行ってたんですが、最近は行ってなくて。そろそろ行きたいとは思ってるんですけど、アパレルのリテールでいうと、あんまり新しいのはなさそうかなというイメージです。
ー僕もそう思ってたんですが、先日ニューヨークに行ったら、思ったよりありましたよ、面白い洋服屋さん。あとはどの飲食店もマーチャンダイズを作っていて、それがどれもこれもセンスが良くて。
迫村:そういうのも重要ですよね。
ー「ビオトープ」が作るスーベニア、気になります。
迫村:誰かやってくれませんかね(笑)。
リサーチ、インプットの重要性。
ー最近面白いと思った国とかエリアはありますか?
迫村:ここ数年、メインの出張はパリなんですけど、ついでに行ったことのないところに行くようにしていて。最近だとエディンバラ、その前はブタペストに行きました。なんでそんなところに行くんだって言われるんですけど、洋服屋っていうよりも飲食店を見たり、あとは雰囲気を体感しに行っているんです。そういう経験を経て、新しいお店を作るときには、自分的にはいろいろなエッセンスを入れているつもりです。
ーこのお店にもそうした影響はありますか?
迫村:このレストランは洋食がコンセプトなんですけど、これはブタペストで見た、日本で言うとファミレスのようなレストランがイメージにあります。観光地にもなっているような素敵なお店でした。あとは、自分が元々洋食が好きでいつかやりたかったというのもあり、そういうものと組み合わせて作ったような感じですね。
ーなるほど。「ビオトープ」が洋食というのが少し意外だなと思いましたが、意外な着想源でした。
迫村:お店の前には薪を置いていて、寒いときには薪をくべているんですけど、これはエディンバラにものすごくいい薫りのするレストランがあったんです。扉を開けたらパッと薫ってくるような。それがすごく良くて。こういうことって現地に行かないとわからないことだと思うんですよね。小さいことなんですけど。
ー大事だと思います。写真とか映像だけでは絶対に読み取ることのできない、手触りのようなものがありますもんね。
迫村:そういうことを代表の佐々木さんはわかってくれているんだと思います。
ー家具は「マルニ木工」さんにお願いしたと聞きました。
迫村:元々自宅で〈マルニ木工〉さんの椅子を使っていて、〈ノンネイティブ(nonnative)〉の藤井さんがお仕事しているのを見て、紹介していただきました。椅子とテーブル、あとは特注で天板も作ってもらいました。
ー独特の柔らかさと高級感があって素敵ですね。
迫村:2階席のテーブルの上にあるランプは、ヨーロッパの蚤の市で買いました。70年代のデンマークのものらしいです。
ーお店のディレクションって、責任も重大だとは思いますが、なんというか、、楽しそうですね。
迫村:そうですね。大阪店のときに初めて自分で全部やったんですけど、そのときは責任がのしかかりまくって、怖かったですね。場所の選択から中身のコンテンツまで、最終的には自分で責任を取るということでやらせてもらったんですけど。その後の福岡店のときからは楽しく進められていますね。
ー最後に、今後札幌店だからこそやりたいことがあれば教えてください。
迫村:やっぱり四季の移り変わりをものすごく感じられるお店なので、そういう部分を楽しんでもらえるような仕掛けを作っていきたいなと思っています。あとはやっぱり地元のアーティスト、作家さんたちと一緒に何かできたらいいですね。
ー北の「ビオトープ」、楽しみにしています。今日はありがとうございました。

