純粋さを追求しつつ、そこにゆらぎを与える。
〈ジル サンダー(JIL SANDER)〉のクリエイティブ・ディレクターに就任したシモーネ・ベロッティの手腕は、目の肥えたフロントロウの面々を唸らせました。
ベロッティはアレッサンドロ・ミケーレの右腕として〈グッチ〉で活躍し、クリエイティブ・ディレクターに抜擢された〈バリー〉を瞬く間に立て直したミラネーゼです。
新生〈ジル サンダー〉らしい一着が、ルージュに染め抜かれたこちらのジャケット。
Jacket ¥544,500
落ち着いた色を基調としたコレクションにあって、ルージュの印象は鮮烈でした。そのコントラストはセレクティブカラーを思わせました。モノクロ写真に真っ赤な唇や傘を浮かび上がらせる、あの技法です。
大胆にあしらったオープンヨークは美しいドレープを描いており、造形もまた、服にゆらぎを生んでいます。
見逃せないのがテクニカル・クリスピー・ファイユと名づけられたファブリックです。創業者ジル・サンダーがかたちにした革新性を象徴するのがテクニカルファブリックでした。これをデザインに落とし込むことで、彼女が考えるミニマリズムは完成をみたのです。どこか乾いた手触りが残るテクニカル・クリスピー・ファイユからはルーツへのオマージュがひしひしと感じられます。
リラックスフィットで、主なスペックは収納フード付きスタンドカラー、ドローストリング、ウェルトポケット。
ロゴは袖口に小さくあしらいました。メゾンに通底する美意識ですが、ベロッティの慎ましいひととなりも少なからず影響しているはずです。
スタンドカラーのなかに隠されたフード。
左袖には小さくブランドロゴが。
Photo_Kazuma Yamamo
Text_Kei Takegawa

