〈エルメス(HERMÈS)〉における歴史の転換点のひとつ、それは馬具の技術を応用してバッグや革小物をつくったこと。ことのはじまりは20世紀前半、パリでは女性の社会進出が進んでいた時代です。
これは新たなものに活路を見出すという、3代目エミール・エルメスの発案でした。
当時の〈エルメス〉にとって、それはある種の冒険でもあり、エミールの先見の明がなければ、ここに並ぶウォレットもカードケースもなかったはずです。
「カルヴィ」という名のウォレットは、一枚のレザーを折り紙のように畳んでつくられます。そのデュオ コンパクトは手のひらくらいの大きさでありながら、内側にカードやお札、小銭を入れる2つのポケットを備えます。
WALLET “CALVI” DUO COMPACT “COLLINES ITALIENNES”
¥148,500
内側にはカードポケットとスナップボタン付きのポケットを完備。
今季は、丘陵地の風景を描いた作品「コリーヌ・イタリエンヌ(イタリアの丘)」をまといました。これを外だけではなく、なかに続く、折り畳んだレザーの先までプリント。作品の全景を眺められるのは持ち主だけの特権です。
一方のカードケースは一つひとつのスラッシュポケットが波を打ち、そこには跳ねる一匹の魚が。
CARD CASE
¥178,200
実はこの魚、プリントではなく、裁断した小さなレザーのパーツを貼り合わせて表現。マルケトリという技法なのですが、間近で見ても継ぎ目が分からないくらい精巧にできているからすごい。その魚の目もパーツというから驚きで、レザーの扱いに長けた〈エルメス〉の技術力の高さが分かる一品です。
魚のプリントではなく、切り出したレザーをはめ込んだ。
旅や海といったモチーフが数多く登場する今季の〈エルメス〉。その背景を探ると見えてきたのが、今年の年間テーマ「冒険の呼び声」です。
創造することは、呼び声に対する私たちの応答ですーー。現在、メゾンを仕切るアーティスティック・ディレクター、ピエール=アレクシィ・デュマはそう語ります。
〈エルメス〉の歴史をたどると、大海原に乗り出すような冒険をするときもあったわけです。いま改めて、メゾンの原点を見つめる先にあるのは、来る新時代へ向けた航海なのかもしれません。
Photo_Hiroyuki Takashima

