1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。
この連載もいつの間にか18シーズン目に突入し、新たなショップでお届け。第143回目は、池尻大橋の「イフク(EFK)」の2巡目です。さて、店主の細川さんは、どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?
Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii
細川満佐裕 / EFK 店主
Vol.143_リークーパーのジップジャケット
―早速ですが、今回ご紹介いただくニュー・ヴィンテージは?
前回、ぼくの考えるニュー・ヴィンテージの定義として、“ニッチでまだ日の光があまり当たってないけれど、おもしろ味が感じられるモノ”とお伝えし、ニッチな謎のアメリカブランドとして〈ウェック・クロージング(WEK CLOTHING)〉を取り挙げたので、今回はユーロネタでいこうかなと。アイテムは、一部の古着好きには知られている〈リークーパー(Lee Cooper)〉のジップジャケットです。
リークーパーのジップジャケット ¥10,780(イフク)
ー前回に引き続き、あまり聞きなれないブランド名ですが…〈リークーパー〉とは?
実はぼく自身もこのアイテムを買い付けるまで、あまり知らなかったのでネットで調べてきました(笑)。名前にリーと入っていますが、皆さんご存知の〈リー(LEE)〉とは無関係。イギリスはロンドンで1908年に創業。120年近くの歴史を誇る、ヨーロッパ最古のデニムメーカーだとか。
ーへぇ。
元々はワークウェアの製造からスタートし、第一次・第二次世界大戦中に、イギリス軍へ軍服やオーバーオールを大量に供給し、国内最大の軍用サプライヤーへと成長。1950年~60年頃には音楽カルチャーと結びつきを強め、テディボーイ、ヒッピー、モッズ、ロッカーズ、パンクなどの若者たちから支持を集めるようになり、80年代頃から大衆向けのファッションアイテムに注力。ちなみにブランドはいまも継続中。世界88ヵ国に展開し、年間500万本のデニムを販売しているようで、知る人ぞ知るどころか、彼の地では“誰もが知っている”存在みたいです。
ーアメリカでいうところの〈カーハート(Carheart)〉みたいな立ち位置でしょうか?
そうですね。アパレルもカジュアルウェアとワークウェアでラインが分かれているし。その他にも時計やバッグ、サングラスなんかのコレクションもあったり、ザ・ローリングストーンズのツアーサポートや、ザ・ビートルズとのコラボなど、音楽カルチャーとの距離感も含めて近いイメージはあるかも。
ー日本ではどれくらいの知名度があるんですかね。
どうですかね? 一時期は日本にも直営店があったようなので、日本国内の古着市場にも一定数存在しているとは思うのですが、〈リークーパー〉というブランドを認知して積極的に仕入れているショップは…多分あまりなさそう。というか、そもそも〈カーハート〉を仕入れた方が、数も揃うし売れますし(笑)。
ーたしかに(笑)。今回紹介いただいたアイテムは、このサイジングがいまっぽいですよね。身幅たっぷり、アームホールも太くて、かつ着丈はほどよいボックスシルエット。生地の風合いも素敵ですし。
そこなんですが…実はどうもリサイズされているっぽいんです。ネットで調べると同じモデルと思わしき画像が発見できるのですが、元々は着丈長めでどちらかといえばカバーオールのノリだった模様。で、生地はコットン素材。サーマルのように凸凹のある編み立てで、その上からシャドウチェック的な柄がプリントされています。この絶妙な色合いは経年変化によるもので、恐らくカジュアルラインに属するかと。
ーフロントがジップということは、結構手の込んだリサイズ加工がなされているようですね。
ジップを一度取り外してからフロント身頃に合わせて短くカットし、再び戻したんでしょうね。これによってやや野暮っためシルエットのカバーオールから、いまっぽくライトオンスのジップジャケットに。ボディ内側のケアタグが紙っぽいし、 Sサイズでこのサイズ感ということも加味すると、年代は多分90年代。ただしデザイン全体の雰囲気はY2Kって感じで、当時のティーンなノリも多分に感じられます。
ージップの引き手やボタンもしっかりオリジナルですし、胸の赤いピスネームも洒落てます。〈リークーパー〉侮れませんね!
付属パーツは凝っているのに、ポケットの柄合わせなんかは適当でチープ。そのバランス具合がゆえ絶妙にダサイ、でもそこがイイ! とはいえ〈リクーパー〉も全部のアイテムが良いワケではないでしょうし、たまたまこのモデルが当たりのデザインだったという可能性も。そもそもリサイズもされているので、このブランドの真価を知るにはもっと数を見る必要があるのではないかなと。まぁ、その辺も含めて自由に楽しむのがニュー・ヴィンテージ。興味がある方は、ぜひディグってみてください。
細川満佐裕 / EFK 店主
1979年生まれ、大阪府出身。幼少期から服に興味を持ち出し、少年〜青年期はファッションにどっぷり浸かり、その後上京。紆余曲折を経て、2020年11月、東急田園都市線・池尻大橋駅のほど近くに自身のショップ「EFK」をオープン。90年代以降のグッドレギュラー古着を中心に、“なんかイイ感じ”のアイテムが並ぶ。
インスタグラム:@EFK.official

