1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。
この連載もいつの間にか18シーズン目に突入し、新たなショップでお届け。第139回目は、ファッション業界人にも支持される池尻大橋の「イフク(EFK)」。店主の細川さんは、どんなニュー・ヴィンテージを紹介してくれるのでしょうか!?
Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii
細川満佐裕 / EFK 店主
Vol.139_ウェック・クロージングのシャツ
ー本連載は“トゥルー・ヴィンテージのように記録や記憶に残っていくようなグッドレギュラーをいまの内に探す”のがテーマ。細川さんの考えるニュー・ヴィンテージの定義とは?
ニュー・ヴィンテージの定義自体、個々によって違うという前提ありきで、1990年代の第一次ヴィンテージブーム時に古着を買っていた世代としては“60年代以前に作られた大量生産品ではなくタマ数が少ないモノ”というイメージがあって。ただし、その感覚でヴィンテージという言葉をニュー(=現代)に当て込むならば、大量生産品を避けるのは難しいので、もっとシンプルに“ニッチでまだ日の光があまり当たってないけれど、おもしろ味が感じられるモノ”となるのかなと。
ーそれは「イフク」で扱っているアイテムも?
ぼく自身、1990年代の第一次ヴィンテージ・ブーム時から、当時はまだレギュラー扱いだった1970年代〜80年代の古着を好んで着ていたこともあって、いわゆるトゥルー・ヴィンテージではなく、90年代以降の比較的買いやすく、かつ古着ビギナーでも気軽に楽しめるグッドレギュラーを主に取り扱っています。
―早速、今回ご紹介いただくニュー・ヴィンテージを拝見したいと思います。
先ほどお話ししたようにニッチなところを攻めたいので、1巡目の今回は〈ウェック・クロージング(WEK CLOTHING)〉のシャツを取り挙げたいと思います。
ーなるほど。で、〈ウェック・クロージング〉とは?
当然そうなりますよね(笑)。ぼくもアイテムの背景が分からず「雰囲気がいいな」と仕入れてから調べて分かったのですが、1970年代からアメリカ製にこだわり、肉厚で高品質なヘビーウェイトのスウェットシャツなどを作り続けている〈ケルスポーツ(KELL SPORT)〉という老舗ウェアブランドがありまして、そこの別ラインとのこと。ちなみにブランドは現存しています。
ーへぇ。
オーセンティックなブランクボディメーカーという趣きの〈ケルスポーツ〉に対して、こちらは恐らく若者向けだったようで、現在は人気のモデルのみ数を絞って展開しています。で、今回紹介するのがシャツタイプの「ビッグイージー」というヤツです。
ウェック・クロージングのシャツ 9790円(イフク)
ウェック・クロージングのシャツ 9790円(イフク)
ウェック・クロージングのシャツ 9790円(イフク)
ーモデル名の通り、シルエットは大きめみたいですね。
ですね。身幅がすごく広いし、セットインスリーブの肩付け位置も外側に出ていてドロップショルダーみたいな感じで、アームホールも結構広め。オーバーサイズ気味のボックスシルエットで、ノリ的にはタックインから裾出しにシフトしていった90年代らしく、カバーオールに近いシャツジャケットといいますか。で、これがまた着用時シルエットもめちゃくちゃ可愛いくってオススメ。
ーボディの素材は?
素材はどれもコットンツイルで、裏側は若干起毛のふんわりソフトタッチ。紫と青はタグまで染まっているため製品染めが施されていることがわかります。だからか赤に比べてちょい柔らかめ。イージーをその名に冠するだけあって、ストレスのない肌触りと着心地の良さがポイントで、タグに記されているようにすべて“MADE IN USA”。この他にも襟付きプルオーバーのスウェットシャツなんかもあったりするようです。
ーどれも刺繍やプリントが施されていますが、なにかのコラボとかなんですか?
本来は無地なんですが、そこにブランドだかアーティストだかの別注なのかカスタムなのか分かりませんが、プリミティブで民族調なオリジナルデザインがあしらわれています。モチーフとタッチ的には、アフリカというよりも北米のネイティブアメリカンって感じですかね。もしかしたら特定の部族をモチーフにしたシリーズなのかもしれませんが、ぶっちゃけ詳細不明(苦笑)
また、個人的にこの“SNSで映えやすいカラーリング、デザイン、シルエット”というのがニュー・ヴィンテージとして残っていく条件の1つになるのではと考えていまして。
ーと言うのは?
写真映えってかなり重要で、発信した時に拾われやすさに関わってくるんですよね。フェード(褪色)が尊ばれる昨今の流れを考えると、質感なんかはまさに。その点こちらは、オリジナリティ溢れるアートワークだけでなく、配色・質感・シルエット・雰囲気といまの空気感にフィットするキーワードが揃っていて存在感もあるため、これ1着で雰囲気が出せる。ぼくの考えるニュー・ヴィンテージの定義である“ニッチでまだ日の光があまり当たってないけれど、おもしろ味が感じられるモノ”を探す際には、そこも意識すると良いかと。
ーこれまで出てこなかった新しい視点ですね。この記事を読んで「なんとなく見かけた覚えがあるし、いっちょ探してみっか!」って人もいるかと思います。実際のところ、エンカウント率はいかがでしょうか?
先ほども述べたように公式ECサイトが存在していますが、古着市場においては結構少ないと思います。〈ケルスポーツ〉は90年代の「ブラックドッグ」がボディに使っているので、知っている人もそこそこいるかと思いますが、こちらはもっとマイナー。なので、当時あまり売れなくて自ずと市場に出回る数も少ない。という可能性も。実際このアイテムについてもよく分からないですし…(苦笑)
ーそういえば、なんとなくスーベニアの可能性もあるなって。ネイティブ系の土産物屋で販売しているような雰囲気ですし。
たしかに。というワケで〈ウェック・クロージング〉について、ぼくよりも深く掘っている方がいましたら、ぜひ教えてください! 情報求む(笑)
細川満佐裕 / EFK 店主
1979年生まれ、大阪府出身。幼少期から服に興味を持ち出し、少年〜青年期はファッションにどっぷり浸かり、その後上京。紆余曲折を経て、2020年11月、東急田園都市線・池尻大橋駅のほど近くに自身のショップ「EFK」をオープン。90年代以降のグッドレギュラー古着を中心に、“なんかイイ感じ”のアイテムが並ぶ。
インスタグラム:@EFK.official

