1910年代、懐中時計の鎖をレザーストラップに変えた腕時計をきっかけに、〈エルメス(HERMÈS)〉の時計づくりの歴史ははじまった。旅行用の革ケース入り置き時計も話題を呼んだ〈エルメス〉が紡ぐ “時” の物語は奥深い。ルーツを重んじる男性諸氏にとって、〈エルメス〉の時計は候補に入れてしかるべき一本といえる。
ここで紹介する「アルソー 78」のルーツ、「アルソー」は1978年にアンリ・ドリニーがデザインした。アンリは〈エルメス〉と縁のあるデザイナーのひとりで、カレやネクタイでも数々の名作を残してきた。
馬具のあぶみに着想を得た上下の形状が異なるラグ(ベルト・ブレスを固定する部位)に、躍動する馬を思わせる斜体のインデックス。かつてない斬新なデザインで「アルソー」は瞬く間に〈エルメス〉を代表する時計のひとつになった。
40ミリ径のステンレススティール製ケース、アントラシト色を帯びたグレイン仕上げの文字盤にクリーム色のインデックス、そしてヴォー・バレニアのストラップ──装いも新たに2019年に登場した「アルソー 78」は、どこをとってもエレガントという形容以外思いつかない。
インデックスと針には蓄光顔料「スーパールミノバ」を塗布。カーフストラップはつけるごとに腕に馴染み、色がゆっくり濃くなっていく。
ベゼル部分はチタン仕上げで、ステンレススティールとのコントラストがモダン。
バックルの先端にはブランド名を刻印。
ケースの裏蓋にはメゾンのロゴを刻印している。
腕時計「アルソー 78」 ¥375,000+TAX
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa