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【FOCUS IT.】高感度で低価格。相反する要素を見事に結実させたエポックメイキングなブランド、アレリーに宿るものづくりの考え方とは?

サコッシュ、ウエストポーチ、パーソナルエフェクツバッグなど、ここ数年カバン界は、サイズが小さいアイテムに注目が集まることが多いのではないでしょうか。

旅行や出張などに使う大きいカバンは別として、デイリーで使うカバンはなるべく小さいものに、それがなんとなくの流れとなっています。

そんななか、またひとつ興味深いブランドがデビューします。〈ビューティ&ユース ユナイテッドアローズ(BEAUTY&YOUTH UNITED ARROWS)※以下BY〉と〈5525ギャラリー(5525gallery)〉を手がけるTITOさんがタッグを組んだ協業ブランド〈アレリー(allery)〉です。

ご覧の通り、リュクスなイメージでクラス感のあるアイテムなのですが、なんと4500円~という驚きの価格帯なのです。値段だけで物事を語るのは無粋なのですが、それにしても衝撃的なプライスです。

これらのプロダクトがどのように生まれたのか、制作にまつわるあれやこれやを、「ユナイテッドアローズ(UNITED ARROWS)※以下UA」のクリエイティブディレクターである松本真哉さんと、〈5525ギャラリー〉のTITOさんに伺ってきました。

左:松本真哉さん、右:TITOさん

ー〈アレリー〉はどんな経緯でスタートしたんですか?

TITO:最初に〈BY〉さんから、ご相談をいただいたんです。コロナ禍でお店が開けられらないという状況下だったので、オンラインで販売するものを何か作れませんか?というお話でした。松本さんにはもうかれこれ15年以上商品を見ていただいているということもあって、〈BY〉さんのチームでものづくりができるというのは、すごく安心感があるんです。信用度が高いというか。

松本:今回、僕のところにスタッフからすごく熱意のある企画が上がってきたわけなんですけど、僕はその熱意ってやつにはそんなに騙されないタイプでして(笑)。

ー熱意だけではダメだと。

松本:はい。ただ、今回はTITOさんと一緒のものづくり、しかも安価なコンテンツをお願いするというのは面白いなという感触はありました。ただ単に安いアイテムをオンラインで売るというだけではなくて、それにきちんと付加価値を付けられる組み合わせなのかなと。

TITOさんは、ご自身の〈5525ギャラリー〉を含め、ほかにいくつものブランドをやっていると思うのですが、今回の〈アレリー〉のような、“高感度で低価格帯”っていうのは結構新しいなと思いました。

バックパック ¥6,600+TAX

ショッパーバッグ ¥5,200+TAX

ベルトバッグ ¥4,500+TAX

ー初めから低価格帯のものを、という話だったんですか?

TITO:いや、そういうわけではないです。僕のなかでは、高いものと安いものとを、とくに区別はしていないので。

ー高いからやる、安いからやらない、というわけではないと。

TITO:はい。今回はカバンを作りたいというお話をいただいたわけですが、どんな方がこのカバンを持つのかな?と考えました。カバンを作るからといって、カバンのことだけを考えるわけではないんです。今日僕は〈クラークス〉の「ナタリー」を履いてきているんですが、このブランドで最初にイメージしたのはこれでした。「デザートブーツ」でもなく、「デザートトレック」でもなく「ナタリー」という感じなんです。

ーブランドを作るときには、その周辺まで考えるようにしているわけですね。

TITO:そうなんです。だから〈アレリー〉でシャツを作ろうとなったら、すぐにでも作れます。今回のプロジェクトは〈BY〉さんが持っている小売としての信用度とか規模感を、僕が普段やっているような小規模のものづくりとうまくマッチングさせていけば、面白くなるのかなと思いました。

ーこれが〈アレリー〉を作るときに用意したムードボードということですが。

松本:これを最初に見たときに、自分だなって。TITOさんと僕って好みが似てるんだと思います。

TITO:まずご提案したのは、“ルールのある自由”ということでした。「UA」さんってリテラシーが圧倒的に高い企業なので、ものづくりをするうえでは、ルールとか制約がちゃんとあったほうがいいと思ったんです。ルールを肯定的に捉えた感じでできないかなということですね。あとは品があるということも大切です。

ーこのムードボードに女性しか出てきてないのが印象的です。

松本:そう。それがすごくいいなって思います。今回の〈アレリー〉はほぼメンズ発信のプロダクトなんですが、機能ではなくて、ファッションから入っているんです。ジェンダーの話ではなくて、ファッションをやるのであれば、やっぱりウィメンズ的な視点というのは絶対大切なんです。僕が作るメンズ向けの資料にも、ほとんど女性しか出てこないですし。

TITO:メンズってウィメンズに比べると、どうしてもリアルじゃないですか。カバンをメンズで考えると、ビジネス寄りになってしまうこともありますし、究極かっこいい男は手ぶらでしょ、っていう議論になってしまうんですよね。

ーそれはありますね(笑)。

スクウェアショルダー ¥4,500+TAX

パスホルダー ¥5,700+TAX

ポーチ ¥4,500+TAX

松本:〈BY〉のコンセプトにも「心が自由な女性から得る美意識を」というお題目がありまして、ジェンダーとかその部分の話ではなくて、女性の美というものを、男性ものにも取り入れたいなって思うんです。というのも、ウィメンズのファッションを見ていないと、巾着型のポーチみたいな発想って出てこないですし、こういうふくよかなステッチングとかって生まれないと思うんです。

ーお二人の美意識が通底する部分が多いというのが、〈アレリー〉をつくるうえで大切な部分なんですね。

TITO:僕は今の空気感を見るのが好きで、〈BY〉さんは今のマーケットに対して、数値化できるような情報をたくさん持っている。それの合わせ込みがひとつのポイントでもありました。

ー松本さんは実際に出来上がったものを見てみていかがですか?

松本:高感度のものを低価格帯で、というのがしっかりと実現できていると思います。あとは価格以上に、シンプルなコミュニケーションがすごくいいなと思いました。誰が持ってもいいですよね。むしろ老若男女が使っている感じが、このブランドにとってコンディションがいい気がします。良識ある服に合う感じというか。安くても高感度というのを少し深堀りすると、こういうことなのかなと思いました。

TITO:例えばですけど、カシミアのセーターを着ている方が、これを持っていてもおかしくない感じというのはあるかもしれません。

松本:そうですね。カシミアセーターとこの合皮が合うっていうのが面白いし、新しいですね。

ーこの合皮がまたすごくいい出来映えだなと思いました。

TITO:最初からレザーという選択肢はありませんでした。そもそもこの価格帯のなかでレザーを使って、上質なものを作りきるのはなかなか難しいので。今を感じるキーワードって、サステナブルとかアニマルフリーとか色々ありますが、そんなに難しい話じゃなくて、日常のなかで気兼ねなく使ってもらうには、このぐらいがいいのかなっていうところに落とし込んでいった感じですね。あとは〈5525ギャラリー〉はシボ革のイメージがあるので、どこかには使いたいなと思っていて、ただ表にドンと使う感じでもないかなと思ったので、裏側に使っています。

松本:ローカロリーっていう感覚ですよね。このぐらいがいいのかな、っていう。

TITO:今回工場さんには、例えばファスナー、引き手はもっとこういうのがありますよとかって、たくさんご提案いただいたんですけど、僕は引き手は昔ながらのすごく普通なものも好きで。なので、引き手はこのくらいでいいかなっていうのは 自分のなかにあったかもしれません。

松本:〈アレリー〉の引き手には、奥ゆかしさを感じますね。これっていろいろある引き手のなかでも一、二を争うくらい普通のものなんですけど、こういうのを選ぶっていうセンスは、古着だったりいろんなものを見てきたTITOさんならではだし、個人的には信用がおけるなって思うんです。

TITO:抜きどころをどこに作るかという話ですよね。ただ当然、低価格帯だからこれくらいでいいでしょ?っていう作り方はしていません。毎回ものすごい量のサンプルを作って、色々見比べたうえで、見つけたのがこのバランスなんです。何事もプロセスを大事にしたいんです。それは昔からあんまり変わらないかもしれません。

ー工場も見に行くんですか?

TITO:昔は行ってたんですけど、今は見ないようにしています。というのは、工場を見てしまうと、作り手さんたちの気持ちになってしまうんですよね。その人たちが心地いいものはこういうものだよなっていう発想になってしまう。それよりも僕はいまだにひたすら買い物をするので、消費者としてこういうものがいいよねっていう気持ちを大事にするようにしています。

松本:すごくわかります。川上を見れば見るほど、弱気なものづくりというか、弱気なマーケットの切り取り方になってしまうんですよね。知らなければ知らないほうが自由な発想ができるとも思うんです。

ーいわゆる素人の強みというか。

松本:はい。新しい発想とかものづくりが、生まれづらくなってしまうような気がするんです。当然、知っておかなければいけないこともありますし、知っているひとに対しての信用もあるんですが。

ーそれにしても、このクオリティのものに対して、4500円~というのは、すごくインパクトがあります。

TITO:今回、値付けは松本さんにお願いしています。お客様をダイレクトに見ている方がやらないと、どこかズレていってしまうので。4500円ってとりあえず買ってみようかなと思える素敵な値段ですよね。

松本:値段もデザイン、という気持ちがあるんです。きちんとしたバッグとして持とうという気負いから離れて、例えばバッグインバッグで使ってもらってもいいわけですし。高感度のひとたちにもキャッチしてもらえるようなものにはなっていると思います。

TITO:今回の価格に関しては、数をたくさん作っているので、このような価格帯が実現できているわけなんですが、ただあくまでもファッションでありたいんですよね。

ーというと?

TITO:何をするにしても、ファッションの部分で考えたいということなんです。日用品ではなくて。すごく良くできていて、なおかつ安い値段のカシミアニットをコンビニで買いたいかというと、僕は買いたくないんです。あくまでファッションのリテラシーとかホスピタリティのなかで、ものを買いたい。そうなると、ひとつひとつのパッケージもきちんと成立させていかなければいけないんです。

ー今回の〈アレリー〉も、カバンを入れる保護袋がありますね。

TITO:ブランドをつくる際に、トータル(アイテム)で見せるときと、カバンだけで見せるときってちょっとやり方が違います。〈アレリー〉みたいにカバンだけで見せるときは最後に何かを足さなければいけないんです。これ、生地は違うんですが、〈5525ギャラリー〉の保護袋と作り方は一緒です。これに入っているだけで、ずいぶん違うものになると思いませんか?

松本:TITOさんは、こういうことをやってくれるのがいいんですよね。

TITO:この保護袋、大きい方がいいですよって松本さんに言われて面白いなって思いました。

松本:カバンと同じサイズだと、使うシーンもだいたい決まってくると思うんですが、大きさが違うだけでいろんなシーンで使えるかなと。ただそれだけなんですけど。

TITO:ガシガシに洗っていくと、こんな感じにシワが出るんですけど、こういうのがいいなって思ったり。

ーところで、この〈allery〉のフォントって〈5525gallery〉と同じですよね。

TITO:はい。galleryからのalleryなんです。そのまま抜き取ると文字間が少し変なので、微調整はしていますが。

松本:そのネーミングもいいですよね。これまたローカロリーで、レスな感じというか。もともとあるものから、一文字減らすだけっていう。

ーフォントのしつらえや雰囲気が、低価格帯のプロダクトにいい意味で似つかわしくないですよね。そして、低価格帯のものに高級感を付与するために選定したものではない、というところがいいですよね。

松本:そうなんですよね。高級そうに見えるように、あえてロゴを一から作って、安いものに誇らしげに置くとなると、ちょっと違うものになってしまうので。

ー松本さんがとくに気になった型はどれですか?

松本:僕は普段から荷物少ない派なので、やっぱりこの巾着ですかね。

TITO:僕も巾着と、あとデイパックですね。自分としてはどこかにアメリカもののエッセンスを入れたいというのがあって、デイパックってどこかでジーパンを作るのと似ている感じもあるので、やっぱり今回もラインナップには入っています。

松本:最近は、コロナと同時くらいにキャッシュレスの流れも来ましたし、バッグも売れるものが変わってきましたよね。

TITO:カバンって作っていると、どうしてもプロダクト化していくんですよね。ここにポケットがあったほうがいいなとか、PC入れるならクッション材がないとダメかなとか。

松本:僕はデイパックにクッション材が入った時点で、OFFの日には持ちたくないっていう気分になってしまうんです。どこか自由度が減っている感じがして。

ーカバンはそうしたファンクションと、ものに宿る色気みたいなものが、相性が良くないことが多いと思うので、その辺りはなかなか難しいところではありますよね。

TITO:僕も機能的なところとか、使い勝手を考えないわけではないんです。ただ、卓上でいろいろ考えるのではなくて、実際に自分で使ってみた上で、いろいろ改良していきたいんです。

ーまだ発売前なのに気が早いんですが、今後オンライン以外で販売する可能性もあるんですか?

松本:あります。勿体ぶることが目的ではないので。

ーそれはよかったです。多くの方に実際に手にとって見てもらいたいですよね。本当に驚くと思うので。

松本:そうですね。いろいろなバッグがありますが、それらのどれとも似て非なるものにはなっているのかなとは思います。

ー今後、〈アレリー〉でカバン以外のプロダクトが出てくるのも期待していますが、まずは今回の6型がどんな風にマーケットに受け止められるのか、楽しみです。

Photo_Masayuki Nakaya(expect item photo)

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