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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.18 “いまでは古着でも発見困難”となっているチャプト限定のステューシー。

そもそもニュー・ヴィンテージとは?

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに、当時“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

前回から、3ショップが入れ替わってリスタート。第18回目は新たに加わった「ペンギントリッパー(PENGUIN TRIPPER)」のアベヒロユキさん。

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


アベヒロユキ / PENGUIN TRIPPER 店長
Vol.18_ステューシーのTシャツ

―アベさんにとっての、ニュー・ヴィンテージとは?

当店の場合は最初から〈ステューシー(STUSSY)〉を軸としてやってきているのですが、〈ステューシー〉はまさに80年代に誕生したブランド。なのに10年前のモノでさえ出てこず、探している人がすごく多い。それでいえばニュー・ヴィンテージとトゥルーヴィンテージの境界線上にあるのでは? と感じています。単純に“良いモノは良い、だから価値がある”と楽しんでいただければなと思っています。

―〈ステューシー〉って、スケート&サーフの横ノリ系ジャンルの中では、90年代で既にマーケットができ上がっていましたが、近年のアイテムはどうなんでしょうか?

その辺りもマーケットが完全にできあがっています。ですが、ネットがここまで普及するギリ前って感じなので、2000年前半でも情報がすごく少ないというか。SNSが発達して「なんだコレ!?」って見かける機会はあると思うんですけど、それが具体的にどのタグが付いて何年代かって調べるとなかなか入手困難だったりで。

―では、今回紹介していただくニュー・ヴィンテージなアイテムは?

もちろん〈ステューシー〉なのですが、いわゆる“チャプト限定”と呼ばれるジャンルを紹介したいなと。要は店舗限定アイテムですね。元祖は1995年にリリースされたスタジャンと言われています。以降は新店舗オープンや周年やリニューアルなどの記念として恒例化。これまでに膨大な種類がリリースされてきました。

―チャプトって、要するに○○店ということですよね。原宿店なら原宿チャプトみたいな。

そうです。ウチでもお客様に訊かれた際に説明するんですが、いまは販売店舗限定はあっても、チャプト限定はまったくといっていいほどやらなくなってしまったので、若い世代の方々は存在自体を知らないことが多いですね。やはりデザインが凝っていて面白いモノも多いので、ぜひこの機会に知っていただきたいと思います。とはいえ数がメチャメチャ少ないモノもあって、ことチャプト限定となるとぼくでさえ未見のモノも多々。なのでこの連載で語られてきたニュー・ヴィンテージの定義と異なる部分も。ちなみに真偽のほどは定かではないのですが、3着しか店頭に並ばなかったTシャツなんて幻レベルの話もあったりして(苦笑)

―それ、普通に超レアモノですね(笑)。このジャンルって体系化されていないんですか?

意外とされていないんですよ……。いまは閉店してしまったチャプトも結構ありますし、シークレットリリースみたいなのも多いので完全にすべて把握できてる人はほとんどいないと思います。これもあくまで噂ですが、本国には報告せず勝手にやっていた時期もあったとか。そういう背景もすごく興味深いですよね。

―これらのアイテムって、店舗ごとにデザインしていたのでしょうか?

そうですね。デザインが完成→本国の了承を得られたらOKという感じだったようです。一応ロゴやフォントのレギュレーションも存在したようですが、わりかし好きに作っていた印象はあります。では、アイテムを見ていきましょうか。まずは〈チャンピオン(champion)〉ボディを使ったフォトTを3枚見ていただきます。

(左から順に)ステューシーのTシャツ ¥11,990 / ¥12,990 / ¥12,990(すべてペンギントリッパー

左は2005年にリリースされた、広島チャプトの10周年記念アイテムです。写真家はデイヴィッド・ドブソンさんという方で ステューシーの服を預けて、それを彼の旅の最中にキッズに着せて撮ってもらったみたいですね。数々のステューシーの広告の撮影をされている方です。

中央は、京都河原町チャプトの5周年記念でリリース。2003年ですね、このデザインは広告でも使われていましたし、オリジナルがあって有名なのでご存知の方も多いのでは?

こっちは2005年の鹿児島チャプト5周年記念。広告では存在したんですが、自分が知る限りTシャツとしてリリースされたのはこれが初めてなんじゃないかなと思います。そういう特別なものがあるのも魅力ですね。

―これらのシリーズって、呼び名はあるんですか?

通称“キッズフォト”と呼ばれています。左は元は広告用に撮り下ろした写真だと思われますが、あとの2枚は1940年代〜60年代の幼稚園の卒業アルバムの写真です。インラインでもフォトTは人気が高く、中でもこの“キッズフォト”はファンがすごく多い。またシンプルに〈チャンピオン〉ボディでチャプト限定というのも惹かれるポイント。復刻版とはいえ、むしろオリジナルを探すよりも大変なんじゃないかって思うときもあるくらいです。

―さすが〈ステューシー〉ナレッジが深い!

なので、海外のデザイナーから『インスタの写真を見てサンプリングして作ったよ』とかわざわざ連絡をいただいたりとかもありますね。それこそ、本国の〈ステューシー〉でもデザインチームの新入りは、まずぼくのアカウントをチェックしろって言われているみたいですし(笑)

―以前、スピンオフ回でも日本の古着屋に〈シュプリーム(SUPREME)〉のデザインチームがサンプルを探しに訪れるというエピソードに触れましたが、それと一緒ですね。

(左から順に)ステューシーのTシャツ ¥8,990 / ¥6,990 / ¥8,990(すべてペンギントリッパー

続いては、チャプト限定ならではの3枚をご紹介します。こちらも左から。2004年に5周年記念でリリースされた立川チャプト限定。当時はこのグラフィックを総柄にしたオリジナル迷彩も作られ、ミリタリージャケットやカーゴパンツも展開されていました。

で、こっちが2010年の京都チャプト限定ですね。ひらがなで“すてゅうしぃ”と描かれていて、その後ろにはSSリンク。書道の文字のようなアレンジも日本有数の観光地である京都ならでは。関西エリアはちょっと和っぽいデザインが多い印象はあります。

で、右が岡山チャプトで2007年にリリースされたもの。元ネタは全然分からないんですが(苦笑)、刷毛でドローイングしたイメージなんでしょうね、まぁ、こういうシンプルなものもアリですよね。

―たしかに名作の復刻や土地柄が分かるローカライズされたデザインなど、改めて見ると楽しいですね。

一般的に知られていませんが、チャプトってコンビニなんかと一緒でフランチャイズ形式なんですよね。なので、土地柄はもちろん、運営母体のカラーが色濃く反映されるんです。例えば、福岡チャプトが〈フューチュラ ラボラトリーズ(FUTURA LABORATORIES)〉とのコラボが多かったは運営会社が一緒だからとか。こういった裏事情を知ることで、さらに深く楽しめます。

―当時の裏原宿ムーブメントの洗礼を受けた30代後半〜40代の読者の中にも、クローゼットの奥底で眠っているなんて人が多そうです。

ですね。ゆえに発掘しづらくはあります。古着は手放す方がいなければ市場には出てこないので、当時からコレクションとして大事されていた方が多いワケですし、地元のチャプトに愛を持っているファンも多いです。先ほども話したようにフラッとお店に寄って買えちゃうモノじゃない分、当然思い入れも強いですからね。

ーとなると入手のハードルはかなり高そうな…。

最初に話したように、そもそも限定なので販売数自体が少ないですからね。ウチだって売れたら2度と入ってこないようなアイテムもザラにありますし。ですが逆に言えば、本当に好きな人しか興味のないジャンルなので、インライン扱いで売られているケースもあったりしてライバルは少ないという考え方もできます。単純にデザインが面白いモノも多いですし、どこかで見かけたら早めに押さえておくことをオススメします!

アベヒロユキ / PENGUIN TRIPPER 店長
〈ステューシー(STUSSY)〉のアーカイブを1,000点以上所有し、その物量と知識量から世界有数のコレクターとして海外でも名を馳せる男。原宿の「ペンギントリッパー(PENGUIN TRIPPER)」は、そんな彼が店長を務めるストリート特化型の古着屋である。また現在は、同じく原宿のとんちゃん通りに2号店「ペンギントリッパー B1(PENGUIN TRIPPER B1)」も営業中。
インスタグラム:@penguin_tripper@xxabehiroyukixx

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