「ミカエル」はミッシェルのラテン読みである。
自他ともに認める〈パラブーツ(Paraboot)〉のマスターピースはブランドの三代目、ミッシェル・リチャードが産声を上げたのを祝って1945年につくられた。
〈パラブーツ〉は東にモンブランを従える雪深い街、フランスのイゾーに居を構える。油分をたっぷり含んだ肉厚のワクシーレザー、ノルヴェイジャン製法、ラテックスソール──「ミカエル」はその地に根付くチロリアンシューズ由来のスペックを搭載しつつ、ソリッドに仕上げたモデルである。そのさじ加減は見事としかいいようがなく、これを裏打ちするように70余年にわたってパターンワークにメスを入れることはなかった。
定番中の定番を選ぶならフレンチシックを体現したようなノワール(黒)の一足だが、新たにラインナップされた二足も素通りできない。
ひとつは2017年に登場した「BBR」シリーズ。フランス国旗をモチーフにしたトリコロールのタグ、ボルドーのライニング、そしてカーフレザーのアッパーがこのシリーズの見どころだ。ご覧いただけば分かるように、こよなく瀟洒である。
もうひとつはファーシリーズ。アザラシやポニーが有名なこのシリーズにこの度、加わったのはムートンだ。それぞれに味わいがあったが、瀟洒っぷりならムートンに軍配があがる。いつまでも触っていたくなるような手触りもたまらない。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa