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マルタン・マルジェラが語る、創造性と仕事術、そして人生のターニングポイント。ファッション界の異端児に迫ったドキュメンタリー映画が公開中です。

近代ファッションの常識を覆し、独自の方法論で服好きを魅了したデザイナー、マルタン・マルジェラ。唯一無二のものづくりに対するアプローチはもちろん、公の場に一切登場しない謎めいた部分も熱狂的なファンを増やす要因のひとつになりました。

そんな孤高のデザイナーに迫ったドキュメンタリー映画『マルジェラが語る “マルタン・マルジェラ”』が公開中です。本作の見どころは、マルジェラ本人が自らの口でこれまでのキャリアやクリエーションについて語っているところ。

ドレスメーカーだった祖母から影響、ジャン=ポール・ゴルチエのアシスタント時代、モデルの顔を覆ったランウェーショー、代表作のひとつタビブーツ、〈エルメス〉のデザイナー就任、「OTB」グループによる買収劇、2008年の引退など、人生のターニングポイントとなった出来事を振り返ります。さらに、デザインのスケッチやメモ、はじめて自分でつくった服、バービー人形のコレクションといったプライベートな品々も紹介。

マルジェラ自身によるドローイング

マルジェラのアトリエ

マルジェラによるデザイン画と布見本

子供の頃、初めてつくった服。「既にマルジェラっぽい」と本人

映画の所々に、ゴルチエ、カルラ・ソッツァーニ(「ディエチ・コルソコモ」創業者)、オリヴィエ・サイヤール(ファッション史研究家)など、彼と接点のあるファッション関係者のインタビューを織り交ぜながら、ベールに包まれたその人物像に迫ります。

メガホンを取ったのは、ライナー・ホルツェマー。ご存知ない方のために説明すると、2016年公開の映画『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』を手掛けた監督です。前作の成功を受けて企画された今回、マルジェラを題材にドキュメンタリーを撮るのはやはり簡単ではなかったと言います。

「候補リストのトップにマルタン・マルジェラの名前があったが、彼をカメラの前に引きずり出すことなど、どう考えても不可能だと思い込んでいた。だが、いくつかの理由と事情が重なり、不可能が可能になった。2018年2月、彼と初めてパリで会ってすぐ、この無謀な冒険に一緒に乗り出すことに決めた。当時、マルタン・マルジェラの回顧展(Margiela / Galliera 1989-2009)の準備中だったことが、我々の背中を押した」(プレスリリースより)

回顧展のキュレーターにメールを送ってから半年後、マルジェラ本人からついに返信があり、この映画は動き出します。最終的に撮影された映像は200時間に及んだそう。

振り返るとファッションデザイナーに焦点を当てたドキュメンタリーは、山本耀司を捉えたヴィム・ヴェンダースの『都市とモードのビデオノート』、ラフ・シモンズをフィーチャーした『ディオールと私』、アレキサンダー・マックイーンの生涯を描いた『マックイーン:モードの反逆児』などありますが、この作品も間違いなく後世に残る一本になるはずです。

モードの歴史を動かす90分間。マルジェラが残したアティチュードや強烈な個性は、現在のファッションの在り方を考える、ひとつのきっかけになるのかもしれません。

INFORMATION

『マルジェラが語る “マルタン・マルジェラ”』

監督・脚本・撮影:ライナー・ホルツェマー
出演:マルタン・マルジェラ(声のみ)、ジャン=ポール・ゴルチエ、カルラ・ソッツァーニ、オリヴィエ・サイヤールほか
配給・宣伝:アップリンク
オフィシャルサイト
© 2019 Reiner Holzemer Film – RTBF – Aminata Productions

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