CLOSE
NEWS

ヴィヴィアンとマルコムの息子が語る、コム デ ギャルソン。ジョセフ・コーが “トレーディング ミュージアム” に捧げるスペシャルピースの全貌とは。

ジョセフ・コー

ジョセフ・コーというイギリス人デザイナーをご存知でしょうか。彼はヴィヴィアン・ウエストウッドとマルコム・マクラーレンを両親に持つ、ロンドン・パンクの申し子のような存在。2016年にはパンクを商業利用する体制側に抗議するため、「BURN PUNK LONDON」というスローガンのもと、自信が所有する500万ポンド(約8億円)のパンク関連のお宝をテムズ川の船上で燃やしたことでも有名です。

そんなアナーキーな一面を持つ彼が手掛けるのは〈ア チャイルド オブ ザ ジェイゴ(A CHILD OF THE JAGO)〉。2008年のスタート以来、パンク由来の「オリジナル・テロリスト・クロージング」というコンセプトを引っさげ、失われつつある古きよき英国文化をデザインソースに、時代を超越する服を提案しています。もちろんつくるものはすべてメイド・イン・イングランド。思想は強めでも服づくりは丁寧です。

ブランドのアイコンであるハサミ。

今回、この知るひとぞ知るブランドに声を掛けたのが、東京・表参道の「トレーディング ミュージアム・コム デ ギャルソン(TRADING MUSEUM COMME des GRAÇONS)」。あの川久保玲が認めた、メインストリームにはない硬派なデザイナーズブランドだけを扱うショップです。

商業施設「GYRE」の2階にある「トレーディング ミュージアム・コム デ ギャルソン」。

コーのもとに製作依頼があったのは、〈コム デ ギャルソン〉の担当者が何年も前に〈ア チャイルド オブ ザ ジェイゴ〉の店で見たというノーフォークジャケットでした。連絡を受けた時のことを彼はこう回想します。

「数年前、我々のアーカイブにある『Hベルトジャケット』のオーダーがきました。私は伝統的なノーフォークジャケットをもとにつくったこの一着に満足していなかったので、同じものはつくりたくないと思っていましたし、もっと上手くつくれないものかと考えました。それをきっかけに新しいバージョンをつくることにしたのです」


〈コム デ ギャルソン〉の担当者が2011年に撮影した〈ア チャイルド オブ ザ ジェイゴ〉のショップ。下の写真、右から二着目が一目惚れしたというノーフォークジャケット。

生まれたのは、手仕事ならではのこだわりが詰まったジャケットでした。この美しさの秘密は、Hの形を描くベルトが体の形を強調すること、そして縫い目の構造によって生地の柄が幾何学的になるからだとコーは説明します。新しいジャケットの名前は「Aitch」。これはアルファベットの “H” の発音から取られました。


今回のコレクションを着た〈ア チャイルド オブ ザ ジェイゴ〉のスタッフ。

ジャケットが纏うのはカラフルなタータンチェック。まさに歴史ある英国の男性服の象徴とも言える柄です。

「伝統的なタータンチェックのウール生地を使うのが好きです。パターンの色が地味でも、組み合わせで鮮やかになります。そして、それはスコットランドとイギリスの歴史との関連性から、反逆の象徴でもあります」

ラインナップはジャケットの他、ベスト、パンツ、スカート、そしてハット。ジャケットには「Specially for Trading Museum」を記された特別なタグが縫い付けられました。トータルで合わせたくなるコレクションの出来にコー自身も満足げです。彼がそこまで情熱を捧げた理由は「トレーディング ミュージアム・コム デ ギャルソン」に対する感謝の気持ちにありました。2016年、〈ア チャイルド オブ ザ ジェイゴ〉の店を再現する形で行われたポップアップストアは、稀有なブランドの世界観を上手く表現していたといいます。

「数年前から他のショップに卸すのをやめました。コレクションが適切に扱われてないことに対して不満だったからです。しかし、『トレーディング ミュージアム』はずっと〈ア チャイルド オブ ザ ジェイゴ〉をリスペクトし、上手く表現してくれていたので、この取り組みに対して非常に前向きでした。川久保玲は偉大であり、彼女のショップの企画に参加できて光栄です」



今回のコレクションが並ぶ「トレーディング ミュージアム・コム デ ギャルソン」の店内。〈ア チャイルド オブ ザ ジェイゴ〉のオリジナルTシャツも揃う。ジャケットの内側に付けられたタグはスペシャル仕様。

ブレクジットの直後、イギリスを襲った新型コロナ。ロンドンのチャーリング・クロス・ロードにあったコーの店はその影響をもろに受けて閉店したといいます。ブランドの運営がオンラインに変わるなか、いま〈ア チャイルド オブ ザ ジェイゴ〉の服が実際に手に取れるのは世界でも「トレーディング ミュージアム・コム デ ギャルソン」だけでしょう。

「昔は定期的に日本に旅行していましたが、もう長年行っていません。日本にはいい思い出がたくさんあって、その国民性と伝統を素晴らしく思います」

パンクと英国の伝統をこよなく愛し、ファストファッションに中指を立てるジョセフ・コー。複雑な時代だからこそ、彼の魂のこもった服はひときわ輝きを放つのかもしれません。




ジャケット 各¥134,200




ベスト 各¥62,700





パンツ 各¥62,700




スカート 各¥23,100



ボーラーハット 各¥35,200


ソフトハット ¥35,200


キャスケット 各¥20,900

INFORMATION

トレーディング ミュージアム・コム デ ギャルソン

営業:11:00〜20:00
住所:東京都渋谷区神宮前5-10-1 GYRE 2階
電話:03-3486-8590
Mail:tmc-cdg@comme-des-garcons.co.jp
Instagram:trading_museum

このエントリーをはてなブックマークに追加
TOP > NEWS

関連記事#COMME des GARÇONS

もっと見る