〈コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME des GARÇONS HOMME PLUS)〉がとびきりスペシャルなコラボレーションを実現した。
その相手に選んだのはイギリスのシューデザイナー、ジョン・ムーア、そしてかの地を代表するシューファクトリーの〈ジョージコックス〉だ。
ベースモデルはジョンの顔ともいうべきトゥストラップブーツ。〈コム デ ギャルソン・オム プリュス〉はこれをローカット&厚底のVIソールで仕上げた。VIソールはテディボーイズが飛びつき、のちにポストパンクの足元を飾った〈ジョージコックス〉を世に知らしめたソールである。靴好きにはモデル名はコンバットブーツ、ソール名はクリーパーズといったほうが通りがいいかも知れない。遊び心が感じられる爪先のストラップ(こちらは “ベロ” と呼ばれて親しまれた)はスムースとグレインの2種。
トゥストラップブーツは反戦の思想をいち早くデザインに昇華したブーツだった。ミリタリーシューズをモチーフにしつつ、ドレスシューズにお馴染みのカーフレザーを採用することで戦闘能力を無力化したのだ。夭折したジョンとトゥストラップブーツは伝説になった。いまをときめくクリエイターのシュークローゼットを覗けばこのブーツがごろごろと転がっている。なかには10足を超えて所有するクリエイターもいる。
ジョンはロンドンの名門靴学校「コードウェイナーズ・カレッジ」を卒業すると、1987年にこれまた稀代のデザイナーであるクリストファー・ネメスと共に「ハウス・オブ・ビューティ・アンド・カルチャー」をオープンした。いわずと知れたポストパンクを牽引したショップである。有名無名問わずクリエイターが肩を抱いて夜ごと呑んだくれていた、そのころのロンドンに欠かせないショップだった。
ポストパンクのアイコンがひとつになったコラボレーション・モデルは閉塞感が漂う現代をサバイブする一足にもってこいだ。
Photo_Hiroyuki Takashima
Text_Kei Takegawa