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連載【で、NEW VINTAGEってなんなのさ?】Vol.27 “着こなすなら、取ってつけた感じで” 。サッカー視点から着こなすアンブロ。

そもそもニュー・ヴィンテージとは?

1990年代、誕生から100年経過している“アンティーク”に対し、その定義は満たしていないけど、価値のありそうな古着を打ち出す際に使われ出した言葉“ヴィンテージ”。いまではさらに“レギュラー”と呼ばれていた80年代以降の古着にも、“ニュー・ヴィンテージ”という新たな価値を見出す動きがあります。本企画ではこの古着の新たな楽しみ方を、スタイルの異なる4つの古着屋が提案。それぞれの感覚でその魅力を語ります。

ショップが入れ替わってリスタートした本連載。第27回目は新たに加わった「トゥーゴー(TOXGO)」の山上タツオさん。

Text_Tommy
Edit_Yosuke Ishii


山上タツオ / TOXGO オーナー
Vol.27_アンブロのナイロンジャケット&トラックジャケット&トラックパンツ

―山上さんにとっての、ニュー・ヴィンテージとは?

最近は90年代のヴィンテージ・ブームの頃と違って、ヴィンテージ=誰しもが価値を認めて欲しがるモノという図式が成り立たなくなっているように感じます。自分らの感性を信じてモノを選ぶ若い世代なんかは特に顕著で、個人的な思い入れといった、よりパーソナルな部分を重視しています。その上で、ぼく的なニュー・ヴィンテージの定義を挙げるとすれば“時代の空気感がまとっていて、かつそのアイテムを好きな人同士の間で共通言語として成り立つモノ”。何に価値を見出すかも人それぞれですし、だからこそ多様性があって面白い。それがニュー・ヴィンテージの良さなんじゃないでしょうか。

―なるほど。そこで今回、山上さんに紹介していただくニュー・ヴィンテージなアイテムとは?

「トゥーゴー」でもオープン当初から扱っており、個人的なノスタルジーというか趣味でもある 〈アンブロ(UMBRO)〉についてお話したいと思います。元々、学生時代にサッカーをやっていて、ちょうど熱心に海外サッカーを追っていたのが90年代。サッカー用品が異常に好きだった自分にとって、その頃に一部で盛り上がっていたサッカーブランドということで思い入れもひとしおです。

[右上から時計回りに]アンブロのナイロンジャケット ¥11,000 /トラックジャケット ¥ASK /トラックパンツ ¥ASK / トラックジャケット ¥9,900(すべてトゥーゴー)

―以前、この連載で「インスタント ブートレグ ストア(instant bootleg store)」の坂本さんも〈アンブロ〉を紹介していました(*で、NEW VINTAGEってなんなのさ? Vol.05参照)。

ですよね。カルチャーやファッション目線で紹介したハジメくんのアプローチも、モチロンありなんですが、やはり個人的に〈アンブロ〉を語るならサッカーを絡めずにはいられない。この記事を入口にサッカーにハマってくれる人もいるのかもしれないので、せっかくなら読者の皆さんにもそこを知ってもらいたいなと。

―思い入れが強いとのことですが、当時はどんなブランドとして認識していましたか?

1924年創業と本国イギリスでも歴史のあるブランドなんですが、やはり〈アディダス(adidas)〉と〈プーマ(PUMA)〉が当時のサッカー業界では二大巨塔。まだ〈ナイキ(NIKE)〉がサッカーの世界では無名で、そんな中〈アンブロ〉は、他ブランドよりもちょっと安かったんですよね。それが1992年頃から、ユニフォームに採用するチームが海外で増え、サッカー雑誌で選手が着用している姿を見かけるようになり、その名を広めていきます。斬新なデザインのモノが多くて個人的には好きでしたが、世間的にはマイナーブランドという位置づけにあったと覚えています。

―〈アンブロ〉は当たりが少ないという話も聞きますが、それについてはいかがでしょうか?

そもそもモノ自体が残ってない場合も多いんです。基本的にスポーツウェアなので、ボロボロに着込んで捨てちゃう。ただ90年代のアイテムは、時代的にもカラフルなデザインが多くって大体格好いいですよ。多分ここで言われている「当たりが少ない」というのは、1999年から生産されていた日本企画のモノを指しているんじゃないでしょうか。そちらは9割がダサイというか、まさに部活着感覚(笑)。なので、海外仕入れに限定するならば格好いいモノが多いという印象はありますね。

―その中でも、今回はオススメを持ってきていただきました。

まずはこちら。よく古着屋でも見かけるデザインで、探せば見つかるんじゃないですかね。ブランドのアイコンである“ダブルダイアモンド”がボディに大胆に配置されています。左胸に入った“NEW YORK 96”から分かるようにアメリカ古着でしょうね。右肩に入っているのは。多分イベントのロゴか何か。チームワッペンや背番号が入っているモノがちょこちょこ見つかって面白いんです。またこのシャリ感のある生地や、少し大きめのシルエットに、ドルマンスリーブのようなパターニングと当時の雰囲気が満載。なかなか凝った作りをしていますよね。

アンブロのトラックジャケット ¥9,900(トゥーゴー)

―〈アンブロ〉のアイテムって、マニア同士での呼び名とかはあるんですか?

周りに〈アンブロ〉をについて語り合える仲間もいなかったので、その辺はちょっと分からず…すみません(苦笑)。ぼくが取り扱い始めた2000年代初頭でも、古着屋ではあまり取り扱っているところがなく、商品としての価値が見出されていないという状況でしたからね。

―なるほど。で、こちらも随分凝った作りをしていますね。チームものでしょうか。

やはりイングランドのナショナル(代表)チーム物は外せないですよね。1番好きなのはどれかと問われたら、間違いなくコレ! ベース部分の透かし模様もそうですが、前立て仕様になったフロント部分にも“ダブルダイアモンド”をデザインとして取り込んでいたりと、随所にヨーロッパっぽさが感じられて面白いんです。いまだったらプリントで済ませるデザインを、わざわざ生地の切り替えで表現しているんですから、相当コストはかかっていますよね。胸に袖に背中にとエンブレムはすべて刺繍だし。ちなみに、スコットランド代表ver.もあったりします。

アンブロのトラックジャケット ¥ASK(トゥーゴー)

またジャケットのタグに“REPLI KIT”と記されています。おそらく選手が実際に着用していたモノのレプリカシリーズだったんでしょうね。これと同デザインのパンツもあり、セットアップで着用できます。

アンブロのトラックパンツ ¥ASK(トゥーゴー)

―最後はコチラ。また毛色が違う感じで、ベンチコート的なアイテムなんですかね?

マンチェスター・ユナイテッド FCモデルなんですが、中綿が入っているのでそのノリでしょうね。当時の監督だったアレックス・ファーガソンが、スーツの上に着用している写真も結構見つかりますし。で、その姿がまた格好よくて。ストライプ生地にポケットの形状、内側にも大きくロゴがあしらわれていたりと、細かな部分にまでこだわりが感じられる洒落た1着です。

アンブロのナイロンジャケット ¥11,000(トゥーゴー)

―これらは、どのように着こなすのがオススメですか?

もう本当に普通な感じで、スウェットにスラックス、その上にトラックジャケットを羽織ってみたいな。これからサッカー観戦に行くから着てみた的な“取ってつけた感”が好きです。ぼくら世代ですと、他アイテムとの配色やシューズを合わせたりして雰囲気を出したり、何かひとヒネリ加えなきゃなって思いがちですが、若い世代には変に意識せず、好きなように着てもらいたいですね。

山上タツオ / TOXGO オーナー
2008年に、友人とともに原宿に古着屋「キンセラ(KINSELLA)」を開業。2015年に池ノ上のセレクトショップ「ミンナノ(MIN-NANO)」の中津川吾郎氏との協業による「トゥーゴー(TOXGO)」を、KINSELLAの地下フロアにオープン。お互いの強みを生かしつつも、かなり偏ったラインナップは一度ハマれば病みつきに。
公式サイト:www.toxgo.jp
インスタグラム:@toxgo

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